高円寺演芸祭の最終日、一番の目的は田辺銀冶先生に、真打昇進祝い用に拵えた、青磁の陶芸家の先生作のピストルの帯留と、弾丸の簪をプレゼントする事で、
又、奈々福さんの曲師が沢村豊子師匠だったので、そのバチ捌きを見たくて、高円寺に三年ぶり位に足を運びました。
お客様は制限無しで、恐らく二百人くらい入っていて、65%ぐらいの入り方で、出演者は、講釈師は貞寿さん、銀冶ちゃん、
浪曲師は、太福さんと奈々福さん、曲師には、みね子師匠と豊子師匠で.演目はこんな内容でした。
1.五条の橋/伊織
もう、六年前座をしている伊織さん。やっと、秋に二つ目なんだとか。講談協会のお家の事情で長い前座生活になりましたね。
さて、ネタは平家物語の弁慶と義経が出会う『五条の橋』のお噺です。伊織さんらしく元気な高座で、好感が持てました。
2.『男はつらいよ!』 「寅次郎、頑張れ!」/太福・みね子
新宿末廣亭での、『笑点』レギュラー後初主任を務める桂宮治師の芝居の話題から、太福さんも顔付されているが、
六代神田伯山との交代で五日間出演しているそうですが、相変わらず、伯山人気は凄まじく前売りで二階席まで完売らしい。
旧成金メンバーも、交代で全員出ているそうで、連日大入りで、大盛況らしいです。さて、本編は「寅次郎、頑張れ!」。
山田洋次監督公認の『寅さん浪曲シリーズ』の二十作品目らしいです。
寅さん、さくら、ひろし、タコ社長、などなどは科白廻しなどかなりやり慣れている感じがする太福さん。
中村雅俊と大竹しのぶと言うゲストの科白も、完全に再現されていて、強い笑いが巻き起こっていました。
3.夢二黒船屋/銀冶
夢二の此の絵に纏わる物語を語る田辺銀冶先生。彼女らしい耽美な大正ロマンの時代が、広がる様な講談でした。
そして、早速、ピストルの帯留と弾丸の簪をプレゼントしましたら、早速、付けておどけて下さいます、銀冶さん。
今度、『爆裂お玉』を演じる際は、このピストルと弾丸を付けて、演じて呉れる事でありましょう。
4.鎌倉星月夜/貞寿
今から八百五十年以上前の鎌倉時代の話。三代将軍の鎌倉右大臣・実朝卿は風流なことが好きで、歌道にも明るい御方である。
毎月、殿中ではお歌の会が開かれる。奥女中取締役の松島は十九歳で沈魚落雁閉月羞花、大変美しい女性であった。
当月のお歌の会ではこの松島が優れた歌を詠みあげる。そこに居合わせた時の執権・北条相模守義時の次男、名越次郎朝時はこの賢くも美しい女性に一目惚れする。
老女の賎機を使って松島に恋文を送る。これは艶書(恋文)に違いないと思った松島は、朝時を怒らせてはならないと思い、封も切らずにそのままにして於く。
朝時はもう一度手紙を送るがやはり松島は返事を寄こさない。三通目が届き、松島は手紙を朝時に突き戻すよう賎機に告げる。
賤機から手紙を受け取り、松島からの返書だと思い喜んだ朝時だが、自分の出した手紙が突き返されただけだと分かるとひどく落胆する。
想いが叶わなかった朝時だがどうにも諦められない。
翌月の夜、お歌の会で座敷から松島が出てきたところで、衝立の陰に隠れていた朝時は後ろから彼女に襲いかかる。
松島は騒ぎもせず「貴方様を嫌いなわけではないが、私とでは身分が違い過ぎます」と逃れようとするが、それでも朝時はその手を止めようとしない。
想いを遂げようと松島を押し倒す。ここで始めて松島は「あれっー」と悲鳴を上げる。
そこを通りかかったのが所司代別当職・和田左衛門尉義盛の三男、朝比奈三郎義秀である。
女性の悲鳴を聞きつけ、夜闇の中、怪力無双の朝比奈は誰とも分からず、ムンズと朝時を吊り上げ放り出してしまう。
これがきっかけで今度は松島が朝比奈に惚れてしまった。
松島は賤機を使って恋文を送る。「張りつめし胸の氷の苦しさを朝日にとける折を松島」という歌を添え、何気なく恋心を打ち明けるが、鷹揚な性格である朝比奈は返事も出さず手紙をそのままにして於く。
ますます恋心が燃え上がる松島は二度・三度と恋文を送る。
三通目の手紙を受取りさすがの朝比奈も心を動かされた。妻とするのに松島は非の打ち所が無い女性ではないか。
朝比奈は兄の朝盛に相談をしその話が父親の和田義盛に伝わり、これが縁で御台様・政子の媒酌で朝比奈義秀と松島は結ばれることになった。吉日を選んで二人は婚礼を挙げる。
一方で朝時は松島と朝比奈への憎しみを募らせる。
政子はかわいい甥・朝時のためにと朝比奈と松島の仲を引き裂き、朝時と松島を無理矢理結ばせようとするが、思い悩んだ松島は自害してしまう。
これが元で和田一族と北条家の争いへと発展するのだが、その話はまたいつの日か?!と、切れ場となります。
中々、鎌倉時代を描いた講談は、非常に王業な科白廻しで御座いまして、それを宜しい塩梅の解説を加えて呉れる貞寿先生でした。
5.掛川の宿/奈々福・豊子
マクラでは、セキセイインコを拾った噺から、飼う事になるのだが、地方へ旅にでる奈々福さんは、結局、友人にインコを預けて旅へ出る事に。
そんなインコのマクラから、演目は、ちょうど菖蒲園さん、はじめさんのblogで噺をしていた、左甚五郎の噺で、『掛川の宿』でした。
あやぁ〜、奈々福さんの唸り声と、豊子師匠の三味線が、座・高円寺の舞台に轟き渡り、その迫力に圧倒されました。
浪曲らしいプロ、玄人の芸の掛け合いが、素晴らしくて、左甚五郎の職人芸が、見えるようで、あぁ〜、トリに相応しい芸でした。
いやぁ〜、3,500円の木戸線が安いと思える会でした。豊子師匠の三味線と奈々福さんの唸りは、みね子師匠と太福さんとは、又、一味違う本寸法の芸でした。
そして、帰りに久しぶりに、『やよい軒』で夕食を食べました。
まずまず、満足の味ですが、焼鯖定食の830円と迷いましたが、𩸽で正解でした。
やや小さい𩸽でしたが、実に脂がノリノリの𩸽で美味しかったです。