三遊亭白鳥師匠のネタ卸しの会、『ヨチヨチSWANが、201712月以来の四年ぶりに開催されました。

今日になって、自作の怪談噺を造り、そのネタ卸しだと、Twitterの白鳥師匠の呟きで知りました。

そして、白鳥師匠の三番弟子、『ひがしむらやま』君の初高座と言うオマケ付き。こんな内容でした。




1.キッチン用品TV  ひがしむらやま

白鳥師匠のお弟子さんは、出身県の名前が付けられます。総領弟子が『あおもり改め青森』で、二番弟子は『ぐんま改め群馬』

此れは、白鳥師匠が、にいがたから新潟へと、前座、二つ目へと出世したのに因んだネーミング。

まぁ、青森さんの前に『あひる』と言う幻の一番弟子が、半年で辞めた影響もあり、この出身地名前が定着しております。


さて、三番弟子のひがしむらやま君。元々、よしもとクリエイティブ・エージェンシーで漫才をしていて、相方が辞めたので、白鳥師匠の門を叩いたと言うだけあり、舞台慣れしています。

しかし、既に白鳥師匠に入門して、一年七ヶ月が経過したのに、師匠と会ったのは、この日が三回目。

見習を一年七ヶ月やりながら、まだ、前座にも成れないのは、落語協会も、狭き門だと思います。

ネタ自身は、『ぐつぐつ』『冷蔵庫哀詩』『豆腐屋ジョニー』と同じ、擬人化ネタで、台所用品が喋り出し、テレビ番組をやると言うネタでした。

もう、落研では無かった青森さん、群馬さんの前座時代よりはかなり上のレベルには有りますが、果たして、寄席に入るとどうなるのか?!

白鳥師匠も、言ってましたが、寄席は、個性を殺す場ですから、上手く対処しないと飲み込まれてしまいます。



2.『鬼灯渦巻草子』〜次郎吉 因縁の扉〜

ネタバレになるから、詳しい粗筋は書きませんが、舞台は昭和三十年代の寄席です。

主人公は、喜楽家吉太郎と言う、御歳五十二歳の師匠の二番弟子の次郎吉。

特に、落語が好きだから、咄家になりたくて師匠へ入門した訳でなく、働くのが嫌いな遊び人が、何となく弾みで師匠への入門を思い付いて咄家になるのです。

そしてホウズキ・カナ(峰月加奈)と言う女性が、その次郎吉をファンとして陰で支える、糟糠の妻、そんな存在と成るのだが。。。

二つ目の次郎吉が、勉強会を始めると言う展開で、物語は進むのだが、この時代に『二つ目勉強会』何んてやれたのは、志ん朝師匠ぐらいだらうし、

其れに、女性ファンなど昭和三十年代の寄席の落語ファンは、まず、居なかった。小三治師匠が、緻密な落語をしていた時、意外と女性ファンの多い咄家だったが。。。

先のホウズキ・カナの恋仇として、ゼネコン令嬢の九条香織と言う女性が登場しますが、咄家に女性の追っ掛けが現れたのは、『ヨタロー』後の噺で、

かなり無理がある展開に感じたのは、私ぐらいかも知れません。

此の時代、つまり『ヨタロー』で志らくがアイドルの様に人気が出る前は、寄席に女性が一人で入る何んて事は有りませんでした。

女性の落語ファンの99.99%は、最初、必ず誰かに連れて行かれて落語を知った筈だと思います。

だから、此のホウズキ・カナと九条香織と言う二人が、喜楽家次郎吉と言う二つ目の咄家と、出逢う場面は、

カナと次郎吉の場合は、同じアパートで引越し蕎麦をカナが、次郎吉の部屋に持って行き知り合うとか、

香織の場合は、香織が誰か友人に、古今亭志ん朝の朝太時代の勉強会に連れて行かれて、其処で手伝いをしていた次郎吉と知り合う、みたいな展開でないと、かなり不自然に感じました。


今は、有象無象の二つ目が勉強会をやり、客の半分以上が女性だから、白鳥師匠の設定した出会いも、有りなんでしょうが、

あえて、舞台を昭和三十年代にしているのなら、志ん朝、小三治の二つ目時代の匂いがするストーリー展開にして欲しいと感じました。


あと、落語中の落語。今回は『厩火事』『目黒のさんま』『船徳』が登場しました。マクラと下げくらいしか演じなくて十分なので、

ちゃんと、誰か有名な咄家のヤツを、まんま覚えて演じて欲しいと思いました。『目黒のさんま』で、殿様は三太夫さんに「秋刀魚を持てぇ〜」とは言いません。


まぁ、永代橋と両国橋が違っていたりもしましたが、『鬼灯神社』のネタ振りからの伏線と、怪談噺らしい、

橋の上での殺害シーンの迫力と、殺されたホウズキ・カナが、化けて出る鏡のシーンは、流石、圓朝直系!其れを感じさせる、

スピードと、心理描写のディテールが、白鳥師匠ならではのストーリー展開で、演技、表現が素晴らしく、なかなか出来るもんじゃないと感じます。

通しで一席、一時間半の大熱演でしたが、二話四十分になる様に校正して、後々はやる様だと思います。


次は、巣鴨の『白鳥の巣』で、二回目をやるそうですが、更に洗練されて、ギャグを挟んでの笑いが生まれる様な、そんな作品に校正されると思います。

また、凄く続きが気になる講釈の様な切れ場で、この『発端』は終わるので、第二話、第三話の展開を期待します。

間違いなく、三遊亭白鳥の代表作となる『鬼灯渦巻草子』。還暦を迎える二年後まで、あと三話か四話の連続モノにして、

是非、還暦祝いの興行を、この『鬼灯渦巻草子』で、コロナ後には、全国ツアーして欲しいと思います。


尚、完成した『鬼灯渦巻草子』は、是非、柳家三三師匠にもやらせて欲しいです。