日曜日、爽やかな快晴の昼間の会でした。改めて、日本橋に三井タワーホテルが完成している姿を見て、
コロナ禍でも、人がそれなりに出ていて、賑わう街の活気を感じながら、永谷さんのお江戸日本橋へと向かいました。
そして、甚語楼師匠の独演会!こんな内容で御座いました。
・狸札 … 左ん坊
・本膳
・酢豆腐
お仲入り
・妾馬
1.狸札 … 左ん坊
左ん坊さんという左龍師匠のお弟子さんです。
代々は、さん喬師匠のお弟子さんが、さん坊だったんですけどね。
さて、この左ん坊さん。誰かに似てませんか?そうです。若かりし日の市馬師匠にそっくりなんです。
見れば見る程、本とうに小幸時代の市馬師匠によく似ています。
さて、狸の恩返しのお噺、『狸札』ですが、狸を助け、助けた狸が八五郎の家へやって来る。
そして、八五郎が言いますよね。「お前、あん時の狸!!」と。
この科白が、どうも「あん時の猪木!!」に聞こえて、私はツボでした。
2.本膳
マクラは、ちょっと書けないシークレットな噺。
さて、『本膳』ですが、この噺をここまで笑いに変えられるのは甚語楼師匠だけだと思います。
村一番の物知りの先生に対して、如何にも純朴な村人がその知識に頼るという構図の噺なのですが、
この村人が明らかに、知らないが由えの傍若無人さが出ていて、これが笑いになるのですが、
前回先生は『ニュートリノの質量を教えて呉れました』というのが、
村人の傍若無人のレベルを表していて、なかなか素晴らしいボケというか、くすぐりで。。。
この噺と同じパターンでは、お茶の作法を真似る『荒茶』『茶の湯』などがありますが、
この『本膳』は、田舎者の怖さが滲み出ていて、甚語楼師匠の魅力が、十二分に出ていて、最高でした。
3.酢豆腐
以前は、一門を中心に二つ目をゲストとして使っていたのを、あえて止めて、甚語楼師匠が三席やる構成に変わりました。
何とも得した気分でした。さて、『酢豆腐』。この噺は、『寄合酒』とか『運廻し』などの様な展開から、酒の肴が欲しいと思いながら、
糠床に手を突っ込むのを、江戸っ子は、皆がみんな大嫌いだッて、そんな辺りの料簡から、落語にどっぷり漬からないと、
つまり、カグヤの香々の元になるキュウリを素手で掴みたくないッて、そんな心持ちが理解できないと、この噺は詰まらないんでしょう。
甚語楼師匠の『酢豆腐』は、初めて聞いたけど、江戸っ子!ッて料簡が堪らない。
4.妾馬
冒頭で、甚語楼師匠自身、他人様から『ちゃん』付けされた事が殆どないと、やや不満そうに語る。
特に、同業者からは皆無だと言う。それはフォルムが『ちゃん』付けが、ニンに無いからなのかと、思ったりすると言う。
何んと言っても、権太楼夫人、女将さんが、弟弟子の我太楼師匠には、ちゃん付けするのに、自分対しては『さん』なのが不満だと言う。
そうそう、一門の弟弟子からは、『甚様』と影で呼ばれているらしい。
恐らく、文蔵師匠を『文様』と呼ぶのと同じ感覚なんだろう。
さて、そんなマクラから『妾馬』へと入り、このちゃん付け、しっかり、田中三太夫さんを、三ちゃんと呼び、繋がって来ます。
八五郎のキャラクターが、素晴らしい。落語の世界のボケに満ち溢れている。
赤井御門守の屋敷の門番から、八五郎が、「どなたを訪ねて参った?!」と訊かれて、
「田中三太夫とか言う野郎!」と、答えると、門番から「野郎と言う奴があるかぁ?!」と、注意されますが、之には八五郎、
「エッ!野郎じゃないのぉ?!女?、三太夫って女?!」は、笑いました。
殿様と、三太夫と、八五郎の会話が、あくまでも笑いに満ちていて、人情噺にはしないのと、殿様、三太夫、八五郎と言う、それぞれの役回りが、キャラが立ち過ぎないのが良いと思いました。
是又、甚語楼師匠では、初めての『妾馬』でしたが、いやぁ〜たっぷり笑わせて貰いました。
次回、柳家甚語楼独演会は、十月三十日の土曜日の又お昼です。