是まで過去に聞いた『お富與三郎』では、前半の二話に相当する「発端」と「木更津」の大きく二幕をお送りしました。
如何でしたでしょうか?!まずは、此処までの登場人物からおさらいしてみましょう。
◇與三郎
横山町三丁目、鼈甲問屋『伊豆屋』の若旦那で、一話では二十歳、八話の時点で二十四歳になっています。
今業平と持て囃される色白の役者の様な美男子で、廓遊びやお酒も大好き!!あまりにもてもてだから父親の善兵衛が心配を致します。
ある日、茂吉と行った吉原ならの帰り道。使った船で事故が起きて、茂吉が亡くなり其れをネタに悪い船頭仙太郎から強請られますが、此の件は関良介に助けられます。
しかし、江戸には居辛くなって、両親の薦めで木更津の叔父の藍屋で暫く暮します。そこで、権現様のお祭で、横櫛お富と知り合い深い仲に。
その事が、無職渡世の亭主にバレて、寸刻みのナマス斬りにされ、三十四ヶ所もの刀傷を負う事になり、瀕死の淵から奇跡的に命は助かり、江戸へと戻る事と成ります。
◇伊豆屋善兵衛
與三郎の父親。江戸でも有数のお大尽!金持ちです。鼈甲問屋の主人。
◇茂吉
神田川の旅籠『下田屋』の倅。二十五歳。與三郎の幼なじみであり、悪友。與三郎の様な美男子でもなく、酒癖が悪い。
◇仙太郎
山谷堀の船頭。舟の上での、酔った茂吉の事故死をネタに、與三郎を強請る根っからの悪党。
欲を出し過ぎて、浪人関良介に斬り殺される。
◇関良介
元川越藩士で現在は浪人。夫婦で伊豆屋所有の家作に住んでいる。自宅にて素読の指南と道場で剣術指南をしている。
実に義に厚く、人情味に溢れる武士である。與三郎の為に、船頭の仙太郎を斬り殺している。
◇藍屋源右衛門
伊豆屋善兵衛の実弟。木更津にて藍屋を営んでいる與三郎贔屓の叔父。仙太郎との一件で、江戸を離れた與三郎を受け入れて面倒をみる。
◇江戸家金兵衛
江戸家猫八一門ではない。江戸をしくじり、木更津へ流れて来た髪結。江戸の粋を愛し、寄席や芝居好きなので、與三郎とウマが合い、與三郎が唯一、此処のおける友人。
◇横櫛お富
元は江戸で繁盛した豪商の娘だったが、九つで一家は離散し深川の芸者置屋へ売られてしまう。
其れから辰巳芸者となる横櫛お富!芸は売っても女は売らず、十年後に、数多居たご贔屓の中から、二千五百両を置屋に払った赤馬源左衛門に身請けされる。
源左衛門の妾と成った日陰の身だったお富だが、正妻が二年前に他界して、半年後、源左衛門がお富を正妻に直してくれて、現在は二十五歳の年増で粋な姐さんであった。
しかし、與三郎と出逢い一目惚れ!相思相愛の二人は、姦通(まおとこ)する仲となり、其れが見付かり、與三郎は三十四ヶ所の刀傷を受け、
お富の方は、逃げ出すも、海へ追い詰められて、岩場から満潮の冬の海へと身投げする。
◇赤馬源左衛門
木更津の貸元。無職渡世の番付では、常陸ノ皆次、銚子ノ五郎蔵には流石に遠く及びませんが、佐原ノ喜三郎、倉田屋文吉、笹川ノ重蔵よりは少し劣り、
飯岡ノ助五郎、勢力富五郎、夏目ノ新介、清瀧ノ佐吉には、敵いません。まぁ、成田ノ勘蔵や芝山ノ仁三郎と、ほぼ同格の存在です。
そんな赤馬源左衛門は、江戸の花会で一年勝ちに勝ち!手にした銭はざっと五千両!!その銭でお富を身請けし、船を四叟買います。
やがて、押しも押されもせぬ木更津の貸元へと上り詰めますが、お富と與三郎の姦通に腹を立てて、與三郎を寸刻みのナマス斬りにし、付けた傷は三十四ヶ所!!
渡世の面子は保った赤馬源左衛門ですが、是が元で、木更津には居られなくなり、奥州仙台の鈴木忠助親分の元へ草鞋を脱ぐ事に。
◇海松杭ノ松蔵
赤馬源左衛門の一の子分。お富と與三郎の仲を最初に怪しみ、その証拠を掴んで親分に注進します。常に源左衛門の脇に居て補佐します。
◇お熊
元船橋芸者で、お富と與三郎の逢い引きを手伝う恋のキューピットですが、やや業つくな性格で、結局、金に目が眩み赤馬源左衛門に協力しますが、海松杭ノ松蔵に匕首で刺し殺されます。
◇柳寛斎
漢方・蘭方の二刀流医師で、佐貫藩のお抱え医師でもある。瀕死の重傷の與三郎の命を救う、ブラックジャックの様な名医。
是までの主な登場人物をピックアップしましたざ、皆さんは誰が気に入りましたか?一番人気は、関良介か?江戸金でしょうか?
私は、海松杭ノ松蔵も、なかやか忠義に厚く、少しポンコツの臭いがする赤馬源左衛門を、よく補佐していると思います。
次に、この本、櫻家遊山師匠の演出の特徴は、やや硬めの本からの引用な特徴です。まず、木更津の地名を説明する為に、日本書紀。
次に、お富が赤馬源左衛門に対して、偽の悋気を見せた場面では、浄瑠璃の『太閤記』の十段目が引用されました。
なかなか硬派な演出で、私は個人的に気に入っております。先代馬生一門の『お富與三郎』は勿論、小満ん師匠や談春師匠の演出にもありません。
最後に、私が自身尺稼ぎや、洒落でハメてみたギャグや道中付けで、本人お気に入りベスト3は。
第三位 第二話「牛ヶ淵の血煙」で、細かい例えツッコミを多用。上田敏とベルレーヌはお気に入り
第二位 第六話「姦通(まおとこ)見付けた!!」のラスト!山、川 豊、鳥羽一郎です。ナンセンス度合い満点。
第一位 第五話「君子の一失」 冒頭の『歌舞伎型』と『映画型』の恋愛について。
次点 第七話「嬲り殺し」 三十四ヶ所斬りの完全再現!!
さて、いよいよ次回は、春日八郎の大ヒット曲『お富さん』の歌詞にも登場する玄冶店の再会シーンへと物語は、展開致します。