今から二百年程前、依田和泉守政次殿が北町奉行としてその手腕を振った、徳川家(とくせんけ)が未だ隆盛在りし頃のお噺で御座います。

そして是は、その和泉守殿のお白洲にて、裁かれた與三郎の『傳』で御座います。


頃は宝暦元年、江戸日本橋は横山町三丁目に、伊豆屋喜兵衛と申します、大した身代の鼈甲問屋が御座いました。

この喜兵衛には一人息子、総領の與三郎と申します男子があり、この時、與三郎は二十歳。既に、放蕩者のドラ息子に育って居りました。

と、申しますのもこの與三郎、無類の美男子で御座いまして伊豆屋のご近所、日本橋界隈は勿論!!江戸市中で『横山町の今業平』と渾名され持て囃される存在で、娘達が與三郎を放って置きません。

この事が災いし、年頃になりますと、女出入りは激しく、其れを取っ替え引っ替えでして、料簡の定まらぬドラ息子が出来上がります。

更に、まずいのは両親が、砂糖をまぶして蜜を掛ける様な甘やかし様。金子も大枚自由に成りますから、素人だけでは飽き足らず、玄人相手に放蕩三昧致します。


春には吉原の櫻を愛でて、夏には隅田川の花火に芸者衆と興じ、秋になると品川の海に戯れ浮かぶ月を詠め(ながめ)、そして、冬は洲崎の竹林に舞う雪を観て酒(ささ)を喰らうので御座いました。


そんな與三郎、宝暦二年の三月四日。この日は夜櫻を楽しもうと、フラッカ!フラッカ!向島へと出掛けまして、

途中出会った悪友で幼なじみの兄貴分、四つ年嵩の茂吉と言う、神田川での旅籠屋渡世、下田屋の倅と一緒に柳橋の料理茶屋へと参りました。

柳橋で芸者を挙げて一頻り騒いでから、二人は猪牙船(チョキぶね)で吉原へと送り込まれますが、しかし、この三月四日は、『春の夜櫻』と言う、所謂、紋日で御座います。

玉代は平時の二倍以上取られるし、馴染みの茶屋へ行くと、此処ぞとばかりに、仲の芸者・幇間が、地獄の餓鬼の如く押し寄せて来る。

そこで二人は、茶屋は馴染みの店を避けて、一見の店にして、其処からまだ裏を返した事が無い『中萬字屋』へと上がりました。

二階へ上がり引付で遣手との粘り強い交渉の末、相場の丁度二倍で與三郎は『右隅一番の九重花魁』を、そして茂吉は『二番の雲井花魁』を其々買う事に成功致します。


然るに、與三郎は美男子でありまして『傾城殺し、芸者泣かせ!』と異名を取る位の好男子ですから、付いた九重はたちまちのぼせ上がり、雲の上を歩く様子と成ります。

一方、茂吉の方はと見てやれば、容姿は中の下なのに、気位ばかり高く気障(キザ)で傲慢!常に上からの態度で、加えて酒癖が悪い!!

おまけに、吝嗇で金離れは悪く、生意気で助平と来ております。

そんな調子ですから、付いた雲井は、『行水(生理の隠語)』と偽り、雲井なだけに、早々に何処かへ「雲隠れ」致します。


こうして、見事に振られてしまった茂吉。当時の江戸の川柳に、『傾城に 振られて帰る 果報者』と言う皮肉な句が御座います。

確かに道理では御座いましょうがぁ、命の次に大切な金子を大枚使い、挙句に振られてしまうのは、勿論気持ちの良いモノでは御座いません。

また、『女郎屋は 振られた奴が 起こし番』とも申しますが、怒り心頭の茂吉の起こし番は、些か、刻が早く七ツの鐘が聞こえる前、まだ、真っ暗な内に為されます。


茂吉「さぁ!さぁ!伊豆屋さん!與三郎さん!起きた!起きた!何時まで寝てなさるんだぁ?!

さぁ、早く勘定を済ませて、出掛けよう!出掛けよう!折角、裏を返してやったのに。。。客をゾンザイに扱う、こんな店に居ても仕方ない!!さぁ!さぁ!出掛けようぜぇ!!」

與三郎「茂吉さん!未だ烏も鳴いてねぇ〜日の出前だぁ。まだ早いじゃないかぁ?!もう少し、ゆっくりして帰ろうじゃねぇ〜かぁ?!」

寝惚け目(まなこ)で與三郎が、そう言うと、相方の九重花魁も、其処へ口を挟みます。

九重「是は雲井さんのお客さんじゃ、御座いませんかぁ?!まだ、本んに早う御座いますよぉ。夜が明けてからお帰んなまし。お前ハン!恋知らずだよぉ〜!!」

茂吉は是を聞いて、一層ムッと致しまして、

茂吉「恋知らずで、悪かったなぁ!!花魁。俺や、其処に居る與三郎は、商家の倅だ!、遊ぶ時は遊ぶが、商いも同じくらい大切な身体だ!!

桃源郷のお姫様の様な、花魁には分からんだろうがぁ、商人には、ケジメ!人生のメリハリが不可欠だ!!

だから、帰る時は帰る時。その刻限を守って家に帰らなければ、老いて歳を重ねる両親に、すまねぇ〜。分かるか?!花魁、せめてもの礼儀だ。

さぁ〜、與三さん!!いい加減、遊び(あすび)は、此処ら辺りで切り上げて、オヤジやお袋の待つ、互いの店へ戻ろう!!」

茂吉に正論を吐かれた與三郎、流石に、ドン突きの仕舞まで言われちゃぁ〜、帰らない訳にも行かず、渋々、布団を出て嗽(ウガイ)しながら楊枝で歯を磨き、顔をゆっくり二回!三回!と洗って、九重花魁への暇乞いを致します。


ほととぎす 東雲時の乱声に

湖水は白き波立つらしも


と、詠われた東雲の薄く白々と明ける頃、茶屋の若い衆が迎えに来てくれて、二人が中萬字屋を出ようと致しますと、

九重は実に名残惜しそうに、與三郎が見えなくなるまで手を振り淋し気な笑顔を返しておりますが、

一方の雲井は、キツい荷物を下ろした行商の婆さんが如く、目だけは笑わない創り笑顔で、二度と来るなぁ!!と、睨み返しております。

同じ『返す花魁』なのに、こうも景色が違うものかわ?!そんな思いを胸に秘め、與三郎は、茂吉と二人、日本堤を山谷の方へと歩いて参ります。

茂吉は、自棄(ヤケ)で呑んだ、昨夜(ゆんべ)の酒が抜けませんから、のべつ雲井花魁と中萬字屋の愚痴を與三郎へ浴びせて参ります。

しかし、與三郎の方はと見てやれば、温厚そのもので、下手に触ると火傷すると思いますから、此処は風に柳の受け流し!上手く交わして御座います。


そんなこんなとする内に、二人は馴染みの山谷堀の船宿『澤瀉屋(おもだかや)』の前を通り掛かります。

丁度その頃、澤瀉屋の女将が雨戸を払って、店を開けようと致しておりまして、二人を見咎めて声を掛けて参ります。

女将「オゃぁ!どなたかと存じましたら、下田屋の若旦那と、此方は伊豆屋の若旦那!!お早いお越しで。。。昨晩は紋日の夜桜!!吉原でお楽しみですか?

一番客に成って、お家に帰ろうなんざぁ〜、流石!江戸っ子!!にいく、にくい!このぉ〜。屋根船、猪牙船、屋形船!!どれに致しましょうかぁ?!」

與三郎「女将!いつから幇間に成ったんだい?!こんな朝っパラから廓帰りの野郎二人が、屋形船や屋根船は要らないよ!小舟、猪牙で結構!!」

女将「ハイ!畏まりました。おーい、仙太郎!?仙さんは居ますか?」

と、女将がハシゴの下から呼ぶと、船頭の仙太郎が二階から「ハーイ!!」と、返事を致します。

女将「仙さん!仕事だよ、猪牙で、此処から神田川を馬喰町方面へやってくれ!神田川の船着場でお二人は降りなさる。」

仙太郎「ヘイ!がってん!!」

客前ですから、そうは申しますが、仙太郎は眠い目を擦り擦りしながら、ハシゴを降りて参ります。

仙太郎「是は是はお客さん、お早いお着きで有難う御座んす。大層、お早いお着きでゲスねぇ〜。」

女将「仙太郎!うちのお得意様だからねぇ!呉々も、間違いの無い様に!!」

そう言われた仙太郎は、直ぐに河岸へ行って猪牙を整備(あつらえ)て、又直ぐに戻って参りまして、更に座布団を二枚と焙火(あぶりび)を持って参ります。

仙太郎「さぁ、お客さん!用意が出来ました。船へお願いします。」


與三郎と茂吉は船に乗り、後から船頭の仙太郎も乗って参ります。そして此処でお約束、澤瀉屋の女将は、何の為(たすけ)にも成りませんが、船のみよしを押して「ご機嫌宜う!!」と言って、舟を送り出します。

さて山谷堀を離れて、名にし負う隅田の流れに出て、其れは此の程の大雨で、大川は余程、水嵩が増しておると見え、珍しく波が高こう御座います。

ですから、竿を櫓に変えた仙太郎は、二人に向かって一言モノ申します。

仙太郎「すみませんが、旦那方に申し上げます。ご覧の通り、先立てからの大雨で大川は増水し、危のう御座います。よって!呉々も、お戯れはご勘弁願いとう存じます。

其の上、今朝は霧が出ており、先が全く見えない様な塩梅です。どうぞ、神妙に乗ってやってお呉れんなんせぇ〜やし!」

しかし、是に、まだ昨夜の酒が残っている茂吉が、カチン!と来て、悪態を見せるのです。

茂吉「何を吐し(ぬかし)やがる!この唐変木!!コチとら芋を齧っている田舎者とは訳が違うんでぇ〜!ベラ棒めぇ〜。神田川を生湯に使う先祖代々八代続く、生粋の江戸っ子なんだ!!

お前さんみたいな、田舎者の馬の骨とは謂れの違うオア兄ぃさんだ!!コチとらぁ、チャキチャキの江戸っ子でぇ!黙って『船頭唄』でも唄いながら、大人しく船を漕いでやがれ!!」

與三郎「まぁ〜!茂吉さん、そんな事は言いなさんなぁ。此処は船の上だ、板子一枚!其の下は地獄と言うじゃぁ〜ねぇ〜かぁ。此処は船頭さんに、気分宜く漕いで貰いましょうやぁ!」

茂吉「チェッ!!與三さん、お前さんは中萬字屋で、大そうおモテに成ったから、そんな太平楽が言えるんだ!!

たとえ、板子一枚下が地獄で在っても、この船頭の生意気を許しちゃいけねぇ〜ぜぇ。」

しかし、是を聞いた船頭の仙太郎も、黙って我慢をする様な輩ではない。

仙太郎「旦那方は、確かにお客様だが、この船の上では、船を動かす(いごかす)のも、停めるのも、船頭のアッシの裁量で御座んす。

其れに、何か有って船がひっくり返ったなら、其れは即ちアッシの責任で、また、たった一人の悪巫山戯(わるふざけ)が、三人共々名前が『土左衛門』と変わる様な事になり、魚の餌に成らんとも限らねぇ〜!其れだから、アッシは申しておるんです。」

與三郎「そうですよ、茂吉さん。船頭さんの言う通りでゲス。静かに船に乗りましょう。」

茂吉「ヤイ!與三郎。貴様は、この船頭の身内か?!俺と船頭!!どっちの味方だ!!」


そう言うと、茂吉はいきなり立ち上がり、拳を握り締めて、船を漕ぐ仙太郎の方へと進もうとする。

與三郎が、そんな茂吉に「猪牙の上だぜ、茂吉さん。船頭殴ってへそ曲げられたら、困るのは私たちですよ!!」と声を掛けて、茂吉は一旦は自制します。

そんな一触即発な船も、大川を進み吾妻橋を過ぎて、彼是、左に見えるは多田の薬師。そして、右に見えたのがお初徳兵衛浮名桟橋でも有名な首尾の松です。

そして船が此の七、八間手前に差し掛かった時、又、茂吉が船の上で、必死で逆流に耐えて前に船を進める仙太郎の、邪魔をするかの様に、舳先を揺らして船が真っ直ぐ進まぬ様に致します。

仙太郎「旦那!いい加減にしてくんねぇ〜、そんな事をされたら、船は漕げねぇ!!お前さん、今さっき『俺は田舎者じゃねぇ〜!チャキチャキの江戸っ子だ!!』と、啖呵を切り擦ったが、其れは嘘かい?!

だってそうだろう。猪牙の乗り方すら、知らないなんて生粋の江戸っ子なんて、何処にも居やぁ〜しませんぜぇ?!」


この田舎者呼ばわりの仙太郎の発言に、茂吉は遂に堪忍袋の緒が切れて、立ち上がると拳を振りかざして、猪牙の上で、猪の如く(ように)猪突猛進!!仙太郎に殴り掛かります。

しかし、仙太郎は難無く、茂吉が繰り出す拳を交わし、肩透かしに遭った茂吉は、身体のバランスを崩して、大川に落ちてしまいます。

増水して濁流の中に消えた茂吉は、一度も浮かび上がる事無く、その濁流の中に飲み込まれ、流されてしまいます。

流石に、是には船頭の仙太郎も驚き、着物を脱いで、ふんどし一丁に成り大川へと潜りまして、入水して消息の分からなく成った茂吉を必死に探します。


しかし!!


其れから半刻ほど、首尾の松に猪牙を舫って、船頭の仙太郎が何度潜ってみても、茂吉の姿は見付かりません。

與三郎「船頭さん!知れたかい?!」

仙太郎「いいぇ、知れませんぜ!お連れさん。もうすぐ、大きな船の航行する刻限だから、もう、諦めて猪牙を、神田川に進めましょう。」

與三郎「船頭さん!!そうは言うけど。。。茂吉さんは竹馬の友で、大家の旅籠『下田屋』の跡取なんだ。船から落ちたとなると。。。俺とお前さんは、罪人にされるに違い無い。」

仙太郎「馬鹿を言いなさんなぁ。お前さん、最初(ハナ)から見てらして、悪いのはアッシですかい?!それとも、お前さんですかい?

あんな酒癖の悪い野郎は、遅かれ早かれ、酒の上の間違いで、死ぬ運命の輩です。

そんな輩に巻き込まれて、アッシは罪人に成るのは御免こうむりヤス!!あんさんは、どうなんですかぁ?!あの野郎と一緒の猪牙に乗った不幸で、佃島送りを受けるお積りですか?

アッシは御免だ!!此のアッシと旦那が口裏さえ合わせて居れば、バレる憂いは有りませんッてぇ!!番屋か奉行所へ、お恐れながらと自訴なさいますか?」


言われた與三郎の方も考えた。明らかに悪いのは茂吉で、昨夜の雲井花魁に振られてから、自業自得で、勝手に死に急いだダケである。

そんな茂吉の為に、親に心配を与えてまで、馬鹿正直を通す義理は無いと、與三郎も、次第に考える様になった。其処で。。。

仙太郎が描いた『絵』に與三郎も乗る事にした。一緒に山谷堀で、茂吉と猪牙には乗ったが、昨夜の酒が残る茂吉は、両国で上がって、一人でフラッカ!フラッカ!歩いて、何処かへ行った事にした。

その後、與三郎は神田川を通り馬喰町に近い船着場まで、仙太郎の猪牙で行き、其処から徒歩で横山町の家まで帰った事にした。

仙太郎「こうなりゃぁ、一蓮托生だ。お前さんは伊豆屋の若旦那だ!何が在っても、連れは両国で降りた。自分は横山町に近い神田川の船着場まで、アッシと二人帰って来た。是を通して下さいよ!!」

與三郎「分かった、そうします。それより船頭さん!是は少ないが、口止め料と酒手だ。」

與三郎は、そう言って仙太郎に、五両の金子を紙入れから出して、裸のまんま渡した。「どうも!有難う御座んす!!」と、嬉しそうに受け取る仙太郎。

しかし、此処で五両を渡した事が、この後の二人の人生を大きく変えてしまうとは?!與三郎も、仙太郎も、この時は微塵も思わなかった。


其れから三、四日が過ぎた頃、神田川の下田屋から、茂吉の両親と番頭が、茂吉が家に帰らないと、與三郎に面会を求めて三人がやって来る。

流石、大店の旅籠を営むだけ在って、茂吉が最後に別れた朋友が、與三郎である!と、番頭が突き止めて、態々、伊豆屋まで三人で押し掛けて来たのである。

しかし、與三郎は仙太郎の指図通り茂吉とは、両国で別れてしまったと、曖昧に語り、三人を煙に巻いて、仙太郎との約束を律儀に守る與三郎でした。

ところが!!仙太郎の方はと見てやれば、宜い金蔓を見付けた!ぐらいにしか思わず、五両を渡し分かれてから、十日もすると、金の無心に伊豆屋までやって来る様になります。


最初(ハナ)のうちは、一両、二両と小遣い銭程度の無心でしたから、與三郎は気軽に渡していましたが、三ヶ月もすると、五両、十両に額が増え、

そして半年が過ぎた、九月になると、二十両と纏った金子を要求する。明らかな強請へと要求が変わり、断るなら自分の身はどう成っても構わない!!

お前に頼まれて下田屋の倅・茂吉を殺したと、町奉行所へ、恐れながらと訴えて出る!!とまで言って、破滅型の強請を掛けて参ります。


さて、伊豆屋では此処半年、突然色街・廓へ遊びに出なく成った與三郎に対し、番頭の善右衛門が、不思議に思い、どんな子細が在るのやら?と、直接尋ねて参ります。

善右衛門「若旦那、近頃、廓(さと)の方へはめっきりお出掛けにならない様子?!何んぞ御座いましたか?」

與三郎「番頭さん!どうしました?!突然、そんな事を聞く、お前さんの方こそ、何んぞ御座いましたか?」

善右衛門「いえねぇ、半年前。神田川の下田屋さんの茂吉さん。あの人が、神隠しに遭ったかの如く消えた、その直後、若旦那が突然、この廓遊びを絶たれたんで、何やら子細があるのかと、そう思いまして、お尋ね申しました。」

與三郎「。。。」

善右衛門「どうしました?若旦那、顔色が良く在りませんよ。」


そう番頭に突っ込まれて與三郎、仙太郎に、船から落ちて茂吉を死なせた事をネタに、半年間、強請られていたと、吐露致します。

是を聞いた番頭の善右衛門、ひとまず、與三郎には両親には内緒にして、其のうちに、仙太郎には然るべき仲裁人を立てて、二度と悪さをしない様に、書付け、現在の誓約書を取る算段を始めます。

とは言え、與三郎が普段通りに、外出されると仙太郎の方が接触して参りますから、其れは宜しく在りません。

其処で、與三郎一人の外出を極端に制限して、正に現代の新型コロナウイルス対策が如く、基本的に、伊豆屋から與三郎を出さない様に致します。


ところが、伊豆屋には家風呂が御座いますが、或る日、與三郎が風邪を引いてしまって、薬研堀の角に御座います、薬湯へとフラッと出掛けたくなります。

『非常事態宣言』の様に、家から極力出なく成っていた與三郎が、病を治す為とは言え毎日外出しますと、『横山町の今業平』ですから噂に成ります。

是を知った仙太郎が、どの様な行動に出るのか?!其れは次回のお楽しみで御座いまして、今回の所は『廓帰り』の一席!では、また次回をお楽しみに!!



つづく