いやはや、本の最後三十頁くらいが、大岡政談の紹介付録で、畔倉重四郎は四十九頁で終わり驚きました。


此の大団円も、松鯉先生の台本の方が、何倍も面白く素晴らしいと感じます。


松鯉台本だと、牢屋に入れられた畔倉重四郎が、持込んだ『ツル』と度胸と犯罪歴で、牢名主的な存在、『角の隠居』と呼ばれる様になります。

そして、その牢屋に奇妙院と言う、奇妙な偽坊主が入牢して来て、その奇妙院を利用して、畔倉重四郎は、牢抜けを企てます。


その方法が、『赤猫』


つまり、放火で火事を起こして、牢屋から解き放ちになり、そのまんま江戸から逃げ去る作戦を立てるのです。

畔倉は、奇妙院に「千両娑婆に隠してある」と、言葉巧みに誘いを掛けて、冬の風の強い日に放火させて、解き放ちには成りますが、

大岡越前守も、そんな事は折り込み済みで、町火消しの先頭に自ら立って、畔倉重四郎狩を行いまして、定水桶の影に隠れていた畔倉を捕まえて、品川たまりに病気の罪人と一緒に留置します。

この時、城富もおふみと二人で、畔倉重四郎を探して火事の江戸の街を彷徨います。


そして、最後のお白洲で、重四郎と城富が対峙して、城富から穀屋平兵衛殺しの真犯人が分かると、杉戸屋富右衛門が無実と分かり、越前守の首を城富に差し出す約束があると、畔倉重四郎が知ります。

そして、どうせ斬首にされるならと、穀屋平兵衛殺しを重四郎が認めて、越前守を道連れにしようとしますが、杉戸屋富右衛門は実は生きて居たと分かり、

最後は、富右衛門と城富が涙の対面となり、大団円!!となります。ねぇ、此方の方が、何倍も素晴らしいでしょう。



次回は、六代目一龍斎貞山先生の『天保六花撰』をお届けする予定です。「河内山と直侍」と言うサブタイトルが付いているやつです。