『婿入り』も、相当違いましたが、この『三五郎』の再会、殺しも全く異なるストーリーです。唯一の共通点は、三五郎が重四郎から、銭を無心し過ぎた為に殺された点だけ。
先ず、女房お文。此れが本では杉戸屋富右衛門の煙草入れの一件の時から、三五郎の女房とするのが本ですが、
松鯉先生の台本だと、その女房は三五郎が百両貰って北関東を旅している最中に死別しまして、先の婿入りで登場した、大黒屋(本は大津屋)の年季明けの遊女と言う設定で、
紀州飛脚殺しの返り血を、畔倉重四郎こと大黒屋十兵衛が井戸端で洗い落とす所を目撃します。
この遊女お文を、大黒屋十兵衛が三五郎の後妻に紹介すると言う展開になります。
そうそう、三五郎自身が、重四郎と再会するスチュエーションも松鯉台本の方が自然な展開で、本は幸手に戻った三五郎が、重四郎の噂を耳にして、大津屋へと押し掛けますが、
松鯉台本だと、三五郎は、妻と死別して乞食同然で流れ流れて北関東から川崎に来て、船人足に成っていて、人足仲間の博打でいかさまがバレて大黒屋の物置に逃げ込みます。
重四郎は、そのいかさま野郎が三五郎とは知らずに助けてやるんですが、助けた後に互いの顔と顔を見てビックリ!!な展開となります。
重四郎は、三五郎を腹違いの兄だと、女房には紹介して、女郎のお文を後妻に当てがい、小間物屋を神奈川に出させますが、三五郎は怠けて仕事をしません。
結局、毎月毎月、二十両、三十両とお文に大黒屋へ行って借りて来い!!と言うばかりです。此処で、三五郎が酔った勢いで、お文に穀屋殺しと鎌倉屋金兵衛殺しの話をします。
遂に、重四郎は三五郎を殺す事を決意して、品川に遊女屋を出させてやると騙して、雨ん中、橋の上で、三五郎を重四郎は殺害するのですが、
橋の上と、鈴ヶ森の違い、天候がまるで違うけど、料理屋で飲ませて殺す手口は一緒です。尚、松鯉台本では、目撃者が非人ではなく乞食と言う設定です。
松之丞改め六代伯山先生は、「三五!」「重四!」の会話を聞いた、乞食に「三五は十五、重四はニ七!!」と言うギャグを入れます。
あと、松鯉台本では、このお文が、あの城富と後に結婚する事で、大黒屋十兵衛の悪事が、大岡越前守忠相に知れる事になるんですが、
本の方は、三五郎からお文が直接聞いているから、何とも単純な展開になります。まだ、本は1/3か、2/5くらいの所なんですが、
松鯉台本だと、既に2/3か3/5は物語が進んでいます。果たして、本はどんな展開で、大岡越前守が活躍するのか?楽しみです。