疑問だった軍用金の件は、遂に、一味から脱落者が出てくれたので、さもありなん!と、思いました。
京都の三条・和泉屋金兵衛に逗留する加藤市右衛門と熊谷三郎兵衛は、暇を持て余して居た。最初(ハナ)は、京は物珍しく、寺社仏閣を見たり、御所・二条城の下見、遠くは、鞍馬口から比叡山にも一度は登った。
大坂勢が、有馬に引っ込んでから、二人のタガが緩み始め、なかなか正雪が駿府に来ない事もあり、誠やる事が無いのが本音だった。
そうこうしているうちに、無駄に銭と暇があるから、祇園の色街、島原に嵌る。
さて島原では、加藤は浅香太夫、熊谷は九重太夫に入れ上げた。一ヶ月あまりで、既に二人で三千両は軍用金に穴を空けている。しかし、二人の散財は止まらない。
特に加藤の腑抜けぶりは酷い。朝から酔っていて女々しく直ぐに泣きが入る。同僚の熊谷が見ていても、これが二条城、御所を制圧する大将か?と、不安になるくらいの腑抜けぶりだ。
熊谷三郎兵衛、流石に、この泥舟に乗っていてはまずい!と思い始めていた。そんな中、軍用金が遂に半分を使い切る。
いよいよやばい!!軍用金これより二百両を擦り取り、熊谷が加藤に申し出る。
「拙者、得意の韋駄天で京から江戸へ一旦戻り、正雪様に会って直接、今後の新しい策を授かって参る。私の足なら十日で京に戻ります。」と。
呑気な腑抜け、加藤市右衛門は、ご苦労だがそうしてくれと、軍用金から五十両更に出して、泥棒に追い銭でこの熊谷を送り出す。
勿論、熊谷はこのまま逐電。
この後、悪事は露見し仲間の情報を、腑抜けな加藤は公儀にベラベラみんな喋るから、熊谷三郎兵衛にも厳しい追及、追手は掛かるが、熊谷はとうとう捕まる事は無かった。
元々、一藝山賊の首領だった熊谷。また、何処かの地で、山賊をやっているのかもしれません。
つづく