横浜にぎわい座で、よくご一緒する落語仲間のHさんから、イイノホールの月例に行けなくなったと、7/18のチケットを譲り受けた。

その前に、中野の雲助・馬石親子会のチケットを手に入れていたのだが、悩んだ末に、イイノホールを選んだ私でした。

先の小満んの会の時に、並んだ知り合いに行って頂けて、中野小劇場の五街道親子会のチケットも無事に有効利用して頂けた。


そんな、今年は初めて参加した、霞ヶ関に近いイイノホールでの柳家三三師匠の独演会!月例三三。こんな内容でした。




1.湯屋番/三三

出囃子が、また、「花咲か爺さん」でした。カープファンの三三師匠らしい選曲です。ここイイノホールと横浜にぎわい座は、出囃子に遊び心が加わる三三師匠です。

さて、マクラでは、二、三度聞いた事のある、雨に関する思い出マクラ。長崎での「三三・二代木久蔵二人会」事件の話をしました。

同じ長崎県内、空港のある大村での「米團治・花緑二人会」は、早々に中止になったのに、長崎市内で開催された三三・木久蔵は強行されました。

三三師匠は、前日福岡泊まりだったから台風で大荒れの長崎へは、特急「かもめ」で余裕の到着。主催者も、木久蔵さんが万一ダメでも、三三独演会にすれば、客は納得するハズ!との思惑があり、

東京から来る木久蔵師匠には、「朝一番の飛行機で、長崎or博多に飛ぶ便があれば、来て下さい。」と連絡しておいたらしいが、運良く福岡便で唯一、その日飛んだ飛行機のチケットが取れて木久蔵師匠は、朝博多に着く。

鉄道は、雨に弱いので、高速バスでの移動を薦められた木久蔵さん、バスに乗ったはいいが、高速道路が寸断されて、一部、下を走った為、大幅に到着が遅れて、開演の7分前にやっとの思いで着く。

そんな木久蔵師匠に、鬼のような主催が、「木久蔵さん!早く着替えて下さい。定時にスタートします。まずは、二人でオープニングトークからです。」と、命じたらしい。

すると、木久蔵師匠、この日、事ある毎に、「ちゃんとした落語会の、まともな主催者なら中止にします!現に米團治・花緑の二人会は前日夜に中止になっています!ちゃんとした落語会なら中止ですよ!」と、愚痴を言い続けたそうです。


そんなマクラから、二代木久蔵師匠も若旦那と言えば、若旦那気質だと、木久蔵師匠の日本語を知らないエピソード。仙台の桜並木をタクシーの車窓から見て、桜が全開!と言った話を振って、『湯屋番』へ。


もう、7〜8年同じパターンの居候の川柳から本編へと入り、三三師匠は、柳家なのに「さくら湯」で演じる。

だからか?小三治師匠とは、全く違うテーストの演出です。そうそう、同じ柳家で、さくら湯と言えば、当代小せん師匠もです。

結構、番台で妄想する若旦那のアクションが大きくオーバーなのと、三三師匠には、珍しくこの若旦那が鼻歌を歌います。



2.鹿政談/寿伴

「ことぶき・寿を伴う」と書いて「じゅばん」と読ませる!実に、縁起のいい名前の二つ目さんです。ただ、三三師匠も言っていましたが、若々しくありません。

さて、ネタは上方の『鹿政談』です。東の師匠に習っていますね、多分。奈良の名物だけを紹介して、本編へ。そつないんだが、若手がやる噺じゃないよなぁ。

特に、私は米朝師匠のイメージが強くてねぇ。仲入り前の大ネタを聞いて、最後に軽く『鹿政談』というパターンを何度も経験した。



3.夏の医者/三三

『鹿政談』『夏の医者』と、続くとなんとなく米朝枝雀の黄金リレーのように感じます。私だけかな?

三三師匠の演技が悪い訳ではないが、この噺や『馬の田楽』みたいな、夏の峠道が登場する噺は、その長閑な情景が、どんだけ頭に広がるか?に掛かっている。

小三治さんの『馬の田楽』を百とすると、三三師匠の『夏の医者』は65くらいか?何んか俯瞰と言うかぁ、映画の引きの様な場面がありません。

全部、近いイメージがして、ウワバミの住む山の全貌がイメージできない感じなんですよね。あの山が、もっとイメージできると、

裾野を通る往路と、山をまっすぐ駆け上る復路の違いが、更にリアルな展開になるように思います。

ウワバミの腹の中の様子や、そこから山を駆け下る様子が好いだけに、惜しいと思いました。



4.お化け長屋/三三

ここ三年くらいは、この演出に固まりつつありますね。杢兵衛さんの怪談部分が、より本息であるからこそ、

最初の臆病な客の驚きが笑いになるし、また、全く同じ本息で、二番目の職人の江戸っ子が恐がらずに混ぜっ返すのも笑いになりますよね。

マクラで、貞水先生の立体講談の話を振る三三師匠でしたが、この噺の前に、短い怪談噺をやるのも一考ですね。

この滑稽噺には、勿体ないぐらいの本息の怪談口調が、より笑いを、この『お化け長屋』には必要ですね。

ここが、『野ざらし』とは違うところですね。恐がるパターン一回きりなんでね。重くしない配慮が要るから、より高度だと思います。

そしてこの『お化け長屋』は、小三治師匠と同じ方向に向かう感じがします。