三回目になる、横浜での若手新作落語の会です。「しぶらく」だと〝しゃべっちゃいなよ!〟が既に定着していますが、
こちらは、彦いち師匠だけでなく、白鳥師匠も加わりより旧SWAの香りを漂わせつつ、横浜にぎわい座と言う会場の趣も相まって、独特の新作らしい会になっています。
決して、400人のにぎわい座・芸能ホールが満員にはならないんです。だいたい半分から1/3くらいの入り。つまり、150〜200人なんだけど、笑いが大きいんです。
多分、のげシャーレだったら、完売・立見なんです。でも、地下でやると、特に新作はDEEPな地下らしいネタにドンドン向かう傾向になるんです。
圓丈師匠・小ゑん師匠の新作の会に行くと分かります。演者が張り切れば張り切る程に、バラエティに富むと言うよりも、
マニアックでDEEPな世界にテーマがシフトして行き、演者は誰にも真似できない「未踏領域だ!」と、prayer's highになるんですが、
お客さんはドンドン付いて行けない世界が広がり、ドン引きする。実験落語・応用落語は、それを繰り返して終わり、落語ジャンクションも次第にマニアの集いになりました。
その点、この会は芸能ホールでやっているから、ある種の秩序を感じます。また、ゆる〜いコンテスト形式の程でやっていますしね。
今回がCブロックで、三回目のコンテスト予選と白鳥・彦いちのお二人は言いますが、呼ばれた若手は、会場に来て初めてコンテストだと知らされます。
ちなみに、Aブロックは、二代志ん五/鯉栄/志ら乃。Bブロックは、駒治/昇々/花いち。いまだに、誰が勝ち上がったのか?不明です。
それどころか?予選が、何ブロックまであるのか?すら公表されていないし、優勝者への特典も謎のまんまです。
そんな、ゆる〜いコンテスト形式の新作落語の会、新作ハイカラ通り、今回はこんなメンバーで、こんな内容でした。
1.オープニングトーク
いきなり、彦いち師匠が落語協会の理事に就任した事を弄る白鳥師匠。元小圓歌の二代橘之助先生から、「白鳥くんは、理事に成れないのは人望?」と言われたそうです。
さらに、全く知らなかったのですが、白鳥師匠は、二つ目に成った時に、「にいがた」から「新潟」に成ったとばかり思っていたら、「新型」と書いて「にいがた」と読ませた時期が、半年有ったとか。
誰も「新型」を見て「にいがた」とは読んではくれなかったので、名付けた圓丈師匠が怒って「新潟」にしたんだそうです。
そうそう、この新型時代に名前の悩みを、雲助師匠に相談したら、「アンちゃん、俺も雲助だろう?資生堂のCMが決まりかけてたのに。。。雲助はイメージが悪いってボツに成ったんだよ。」
と、逆に名前の悩みを告白されて。。。この話は有名で、白酒師匠も時々、『抜け雀』のマクラなどで、雲助と言う名前を出して話します。
そんな話をしていたら、初めて聞いたのが、彦いち師匠が、「雲助師匠といえば、長野ローカルのテレビCMに出ている!」と言うんです。
今は流れていないかも知れないが、20年前に長野県のホテルで、彦いち師匠が見て衝撃を受けたCM、それは。。。
タクシーのCM
五街道雲助を使うタクシー会社は、アッパレなのか?無知なのか?雲助の響きに不採用にした資生堂とは真逆です。
そんなトークから、寄席でも新作を掛け続ける意義を熱く語る白鳥・彦いちのお二人。保守本流の古典原理主義者に、迫害を受けても、継続は力だと言っておられました。
2.老人前座・爺太郎/白鳥
来年真打が決まった弟弟子たん丈さんへのオマージュ?から作った作品です。
白鳥師匠も、仰っていましたが、たん丈さんは真打に成ってどうなるんだろう?披露目がピークで消えて無くなるのか?
3.西郷どんと蕎麦彦/青森
二つ目に成り立ての青森さんが、この会に登場すると言うのは、白鳥師匠の総領弟子だからもありつつ、実力での大抜擢です。
さて、マクラでは、季節柄、夏の高校野球県予選の話題を振り、自身も高校球児だったこと。あの讀賣のショート坂本選手は、二年先輩!!とは、言っても同じ高校の野球部ではない。
如何に自身が、ポンコツ球児だったかを、自虐的に語る青森さんですが、東北の青年ありがちな暗い一面は微塵も無い。そこが良いと思います。
同じ東北でも、秋田県男鹿市出身のたん丈さんだと暗く悲壮感が漂います。
また、本編は「うどん」と「蕎麦」のオリジナルヒーローを企画する話だったのですが、バカバカしさの加減が良くて、落語らしい仕上がりでした。
やっぱり、白鳥師匠の勉強会・ヨチヨチSWANでの二年半の修業と、前座最後の半年前から続けている自身の勉強会の成果で、表現力が身に付いたのが大きいと思います。
構成やギャグのキレは、まだまだ甘いけど、客席に気持ちを伝える技術は、ここ二年くらいで、物凄くよくなりました。更なる成長を期待します。
4.にきび/鯉八
若き天才だそうです。しかし、私は協会が発表する前に、自身の真打昇進をSNSで世間に公表するのは、どうかと思います。
このネタも、鯉八さんらしい作品で、無茶苦茶受けていました。ニキビを潰す行為に、ここまで深く意味を持たせた作品は、他に無いと思います。
そして、何より祖母と孫の会話が、一歩間違えたら客がドン引きしかねない設定なのに、鯉八流の話芸で、笑いに変える!ここが天才と呼ばれる所以です。
ただ、たまに、年に二、三回聴く分には飽きは来ないけど、この落語を月一とかで聴きたいか?と、言われると、それさ否!!に、私はなります。
5.夏の顔色/粋歌
季節の旬な噺だから、掛け捲っていると、本人も仰っていましたが、先月、のげシャーレに続いてこの噺でした。
故郷へ帰省する三人家族と、それを迎える旦那さんの両親の、今風なあるあるネタです。粋歌さんらしい噺で、特に老夫婦のご両親の会話の間が素晴らしいと思いました。
半月に、二回くらいでは、またか!?とは思わせないクオリティがあると思います。
6.と言う/彦いち
寄席では、『夏の顔色』とモロ付くからやらない構成ですが、ホール落語らしい展開です。もし、彦いち師匠が先に『と言う』を掛けていたら、粋歌さんはネタを変えていたと思います。
さて、『と言う』。初めて聴きました。下げがカッコいい!シュールに〆る彦いち師匠でした。
たった今、白鳥師匠のTwitterで知りましたが、次回は三月十三日、決勝戦が開催されます。
しかし、ABC各ブログ、誰が勝ち上がったのか?謎のまんまです。