抽選方式になって四年目くらいだと思いますが、初めて良い席/前から三列目の下手通路側が当選しました。

そして、談春さんの会でもやや、その傾向は有りましたが、小三治師匠の会になると、より顕著なのが、客層が普段のにぎわい座のお客さんと違う点です。

どこで、それが分かるか?と言うと、それは桟敷席の座り方を見ていると分かります。にぎわい座のお客様は、必ずと言ってよいぐらい壁に背を付けて、よっかかりながら見ていますが、

一見のお客さんは、壁に背を付けず、にぎわい座がセットした座布団の位置で腰掛けます。そして、流石に仲入りで疲れた人が、壁に背中を付けるようになる。

観察していると、なかなか面白いと感じます。さて、そんな一見さんが凄く多かった小三治独演会、こんな内容でした。




1.棒鱈/三之助

私は、三之助をめったに見ないのですが、寄席以外だと、非常に多く『棒鱈』に当たります。特に田舎侍が上手いから許すけど。。。『棒鱈』と『試し酒』をよく聞く印象の三之助師匠です。



2.千早ふる/小三治

マクラからハイテンションぎみの小三治師匠。横浜ハイに掛かっていました。これが一席目でエネルギーを使い果たす原因になるのです。

まず、横浜グランドホテルの話から入り、このホテルは、マッカーサーも泊まったホテルだ!!と、紹介し、小三治師匠自身もマッカーサーが宿泊した部屋に泊まった経験があると言う。

ホテル側から、マッカーサーが宿泊した部屋が空いているから、ちょっとお高いけど、泊まりませんか?的な誘いがあったそうです。

「ちょっとお高い」って、横浜グランドホテルはマッカーサーの部屋以外だってちょっとお高い!!それよりお高い部屋は、ちょっとじゃない!!と、小三治節が炸裂する。


そして、話題は鞍馬天狗の原作者・大佛次郎が、横浜グランドホテルを愛して、執筆の定宿にしていたと紹介する小三治師匠。

大の鞍馬天狗ファンだから、更に更にハイテンションになる小三治師。鞍馬天狗の映画に、サブタイトルが、「鞍馬天狗、横浜に現る!」って回があったと熱弁。

横浜なんて、神奈川宿と戸塚宿に挟まれた田舎中の田舎だったのに、ペリーが開国させたお陰で今の繁栄がある!と、言うのだ。少しだけハマっ子を敵に回す。


色んな話題を振るんだが、長くなると止まらなくなるのを小三治師本人がわきまえているから、途中で「この話は止めましょう!」と中止しました。

そんな中、参議院選の最中なのもあり少しだけ政治家への皮肉も込めて、落語『千早ふる』のテーマでもある「知ったかぶり」は良くない!と、語り始める。


まず、悪いのは「知ったかぶり」。それに輪を掛けて悪いのは、「知っているのに、知らないフリ」。悪い奴は「記憶に御座いません!」と嘘を付く。

更に更に、一番悪い奴。それは「知らないのに、知らないフリをする奴」。これが一番たちが悪い!!と、言って笑いにしました。


これを聞いて私が思い出したのは、マリー・ローランサンの『鎮静剤』


http://marieantoinette.himegimi.jp/booktinsei.htm



さて本編の『千早ふる』。金公がご隠居に、業平の歌の意味を尋ねに行く、古典中古典で、寄席でもよく掛かるネタだが、

今回の『千早ふる』は、やや趣きが違った。多くの場合、ご隠居が上から金公を押さえ付けて「これで、いいのだ!」感を出す展開だが、

この日の隠居は、かなり金公の勢いに押されて、強引さが弱い感じだった。だから、長くなる要素にもなってしまった。フワフワした感じで楽しいんだけどね。

マクラも入れて一時間オーバーの高座だったから、足が痺れて直ぐには立てない小三治師匠でした。あいびき使っていても立てませんでした。



3.小言念仏/小三治

一席目でエネルギーを使い果たした感じでした。それでもマクラを振りながら、客席と対話する小三治師匠。

横浜は、小三治師匠をハイにさせる何かが有ります。そして、1212日に小三治・三三親子会が関内ホールで開催されます。

なかなか、『千早ふる』と『小言念仏』で客を満足させて帰すのは、国宝と呼ばれる所以だと思いました。