夏丸師匠の少数精鋭の独演会です。今回は平成最後の開催という事でしたが、Max20人くらいの会場が、やっとつばなれする位の入りでした。
そんな、やや寂しい入りでしたが、良く笑う素晴らしい少数精鋭が集まった「夏丸谷中慕情」、こんな内容でした。

・味噌蔵
お仲入り
・桂米丸作「宇宙戦争」


1.味噌蔵
マクラは、元号が変わる話題に絡めて、平成の寄席の歴史に触れて、新真打の披露興行の話をたっぷり語る夏丸師匠でした。
勿論、自身が所属する落語芸術協会の歴史が中心でしたが、落語協会の話題も少し入れながらの展開でした。
芸協の平成元年真打昇進は、三遊亭笑遊なんだそうです。一人で真打ちに成られていますが、本当は何人か、前座修業をした同期は居たけど、
二つ目までに、皆さん廃業したり亡くなったりして、結局、平成に元号が変わる年に、めでたく真打ちに成れたのは、笑遊師匠だけ。
女流の同期が居たと、夏丸さんは語っておられましたが、名前は忘れました。落協の歌る多師匠より前に、芸協には女流が居たんですね。
一方、落語協会では、新作落語の奇才・夢月亭清麿師匠、体操選手で身軽い林家鉄平師匠のお二人が、平成元年の真打です。

この後は、夏丸さんが入門した、平成15年・2003年当時の寄席の話題に。ちょうど、夏丸さんが入門したのは、平成のド真ん中くらいの頃。
十代目文治会長最後の年で、翌年から歌丸師匠に会長が変わる頃だったそうです。ちなみに、2003年は、芸協の真打は無く、
落協では、古今亭菊之丞師匠が、席亭推薦の抜擢で真打ちに昇進しています。
また、歌丸会長誕生後に、最初に真打に昇進したのは、桂米福師匠で、そこから夏丸・蘭のお二人までが、歌丸会長時代の真打に成ります。

更に今年、芸協の新真打、つまり、新年号に成って初めての真打は、鯉斗・双葉・吉幸の三人。その中で、新元号初の夜のトリを取るのが鯉斗さん。
夏丸師匠、心配していましたよ、二年後輩の鯉斗さんが、緊張せずにマクラが振れるのか?舞上がって変な事を口走らないか?と。
そうそう、夏丸さんが入門して直ぐの真打の披露目、米福師匠の時はよく覚えているそうで、
全員今も現役、紙切りは今丸師匠、喰付き後に東京ボーイズの菅六さんと仲八さん。そして、膝に登場したのが、ボンボンブラザースの勇二郎師匠と繁二郎師匠。
夏丸さん、前座仲間と当時、披露目後の打ち上げで話したそうです。俺たちが真打になる頃は、今日の色物の先生は、皆んな冥土に旅立たれてるよなぁと。
しかし、十五年後の夏丸・蘭の披露目の色物は、三十日間、今丸・東京ボーイズ、そしてボンボンブラザースの三組でした。
私が行った池袋では、ボンボン先生が膝で、繁二郎師匠と帽子の芸で、私自身が弄られたから、よーく覚えております。
あと、そうそう、繁二郎師匠って、堺正章さんの従兄弟なんですよね。なんとなく似ています。その話も夏丸師匠しました。マチャアキの隠し芸の先生が繁二郎師匠だった話を。

あとは、何んの話をしたかな?そうだ、夏丸さん、米丸師匠から、さっきの米福師匠までを、60人以上居たと思いましたが、
昔の尋常小学校の小学生が歴代天皇陛下のお名前をソラで言うみたいに、全部暗記していて、スラスラ全部言えるんですよ。
前座時代に、お茶を出す順番など、師匠方の序列が楽屋仕事で必要な場面があるからと、全部覚えたと言うのです。夏丸さんらしい。

そんな長い長い平成の思い出まくらから、鯉八さんが、「真打になります!」って、芸協の理事会や総会で、マスコミ向けに発表されていないのに、完全にフライングでSNSに書いてしまった件にも触れました。
多分、落語協会だと、こんな事したら師匠ともども、どえらく叱られて、下手すると昇進を一人だけ延期されるかもしれないと思います。
立川流の某一門とかだと、破門だ!と言われるかもしれない。少なくとも謹慎です。実際に似たような経緯で二つ目昇進に絡んで謹慎になった人も居ます。
何となくヌルい縛りで、仲良しこよしで芸人しているんでしょうね。
真打になると、自分が弟子を育てる立場なのに。残念な事件だと思いますし、私は今後二度と鯉八さんを観ないと心に決めました。

さて、最後に本編の『味噌蔵』。まだ、卸し立てなんでキャラクターが確立されていないと言うか、育っていない浅い感じでした。
特に、番頭さんと、一番年配の奉公人甚助の二人がもっと夏丸色に育ってくると、良い話になる予感がします。
あと、最後の奉公人が、吝な旦那の留守に、宴会をやる場面では、市馬師匠みたいに、夏丸さんにも、一節、歌って欲しいです。
一時間くらい仲入り前にやりましたが、楽しくで全く長くは感じない一席目でした。


2.宇宙戦争
今思い出したんですが、夏丸さん、高座でこの日、湯呑みを使っていたんですが、コレは瀬戸物屋で一発で気に入り、1,600円なら安い!と、買ったら、お代を払う段に、
「一万六千円です。」と店員さんに言われて、クラクラっと成りかけたそうです。『味噌蔵』の吝兵衛さんなら気絶していたでしょう。

さて、最後のネタは、米丸師匠が、星新一原作のSFショート「賢明な女性たち」を落語にした『宇宙戦争』と言う作品でした。
実にナンセンスな作品で、夏丸さんは前座の時に米丸師匠から習ったと言う12~13分のごく短いネタなんですが、
米丸師匠の持っているファンタジーみたいな部分が感じられて、この日は無理でしたが、鳴り物を入れて、ハメ事をすると、更に噺が立体的になり面白いと感じました。
寄席なんかでも、たまに、掛けてみられては?と、思いました。

そうだ!一つ忘れていた。Twitterで夏丸師匠が募集していた、松本優子さん、今月からは桂小すみと言う芸名になった色物さんと、
夏丸さんが新しいユニットを二人で組んだので、そのユニット名を広く募集しておられます。〆切は今日三月三十一日まで。
新元号と一緒に、この新ユニットの名前も公募の中から発表されて、見事、選ばれると、夏丸さんと小すみさんが、家に来て歌ってくれるらしい。
私は、『ゆうこときよひこ』『wigs』の二つを提案しました。夏丸さんのTwitterを見ると、他の候補名も出ています。