昼から居残りで、夜の部にも参加させて頂きました。昼の部とは打って変わって、夜の部のネタは華やかと言うか、メジャーで笑い満載・人情満載の三席になりました。

宗助・吉坊 二人会、夜の部は、こんな内容でした!!


・トーク
・一文笛…宗助
・くしゃみ講釈…吉坊
お仲入り
・らくだ…宗助
下座…恩田えり


1.トーク
トークのお題をオーディエンスに問うお二人。出たお題は、吉朝師匠の思い出話。まず、弟子でもある吉坊さんから、何でも器用にできる印象の吉朝師匠だが、実は苦手なネタがある、と言う。
それは、『鴻池の犬』若い頃にはやっていたが、ほぼ同期の千朝さんが十八番にしていたのもあり、俺には合わん!と、やらなかったらしい。
談志師匠の『愛宕山』みたいな感じなんでしょうね。ライバルの十八番は、なんか比べられるのすらプライドが許さないんだと思います。
また、子供・丁稚が活躍するネタも、ニンに無い感じでやらなかったそうです。『蔵丁稚』とかやらなかったと仰っていました。

そんな咄家には、誰しも合う合わない・得意不得意があると言う流れで、宗助さんが仰ったのは、米朝師匠にも苦手があり、
あんなに麺大好きの麺喰いなのに、うどんを啜る仕草が主眼となるような噺、『時うどん』『風邪うどん』みたいな噺は、まずやらないそうです。
更に、吉坊さんが先代春團治は、 酔っ払いの登場する噺はしなかったと言ってました。

話の展開を、吉朝さんに戻して、兎に角、イタズラ好きな師匠だったと、鹿芝居で、化粧や衣装、仕草や踊りで相手役を笑わせた話や、
出囃子の助っ人で入っている笛を吹いている後輩の笛に指を挿そうとしたり、太鼓部屋に在った銅鑼を頭に乗せて、キョンシーの真似で笛を吹けなくしたりしたそうです。

そんな吉朝師匠のエピソードを聞いて思い出したのが、CDにもマクラとして収録されていますが、癌の手術で最初に入院した時。
あまりに退屈で、夜中に見廻りに来る看護師さんをいろんな事をして、驚かせようとしていた話を知っていたから、然もありなん!と、思いました。


2.一文笛/宗助
泥棒のマクラから、本編の『一文笛』へ。いやはや、気味が悪いくらいに喋る調子が米朝師匠に似ている宗助さんです。
特に噺の最初、スリの秀が、煙草入れを買いたいと茶店にカモを連れ込んで、事情を説明する場面。説明が終わり商談が成立するまでは、
物凄くゆっくりした調子で、はんなりした時が流れます。それが、茶店から秀が居ぬ際になると、相手が財布をスられたと気付く前に出たいから、
突然、全ての仕草に巻きが掛かります。ことに、茶店の婆に代金払う時のいい回しは、米朝師匠にそっくりです。
秀の元兄貴分が、一文笛の一件で、子供が危篤になっている話をして、秀が改心する場面から、畳み掛けるように、ラストのサゲへと向かう感じも良かった。
「わい、ぎっちょやねん!」のサゲが、米朝師匠の芸らしく、スマートに決まりました。


3.くしゃみ講釈/吉坊
吉坊さんの『くしゃみ講釈』は、これで3回目でした。江戸落語でも、私は圓窓師匠で聴いた事がありますが、やっぱり、覗きカラクリが登場する上方版の方が楽しいです。
吉坊さんの覗きカラクリも、実に陽気でいいです。最後に、難波戦記の大坂の陣!これで唐辛子の煙を吸ってクシャミが止まらなくなる、講釈師・後藤一山も良かった。


4.らくだ/宗助
上方落語の『らくだ』は、かなり久しぶりでした。前半かなり丁寧に演じて、45分が経過してしまい、おんぼ、焼き場のサゲまでは行かずに、残念!終わりとなりました。

まず、落語には妙な二つ名の登場人物が出てくると言って、有名なところで、胴乱の幸助、算段の平兵衛、変チキの源助の三人を紹介します。
続いて、二つ名の人物がぎょうさん登場する噺として、『お玉牛』を紹介して、これに登場する名前を挙て行く宗助さん。

・アババの茂兵衛
・小突きの源太
・半鐘のチャン吉
・オタオタの多助
・釣鐘のイボイボ

そして、最後に「そんなら宗助」と言う人物も出てきたりすると、宗助繋がりで紹介し、『らくだ』に登場する通称・らくだも二つ名のファーストネームで、
らくだの卯之助と言うのが、上方落語のらくださんの通り名です。これは江戸落語の『らくだ』とは違いますね、江戸は、らくだのウマと呼ばれています。
また、このらくだの兄貴分が『らくだ』には重要な人物として登場しますが、江戸はだいたいが、丁の目の半次です。
しかし、上方落語では、米朝一門が概ね脳天の熊五郎で、松鶴一門は弥猛(ヤタケタ)の熊五郎ですね。

また、この熊五郎がらくださんの家に入っていきなり、倒れている姿を観て言う科白が、「このガキ!ドブさってけつかりやがる!」ですからね。
更に、声掛けても起きないらくだの体を触って言うのが、「冷た!コッチコチやなぁ、ゴネとる!」ですからね。迫力がいきなり有ります。

屑やさんと熊五郎が、大家の家にらくだの死体を連れて、カンカン踊りをさせる場面、江戸は屑やさんは歌うだけですが、
上方のは、屑やは下半身をいごかす役もやりながら歌います。また、熊五郎が、らくだの手を伸ばして、大家の頬を撫ぜたりもします。
あと、酒を上等にしろ!悪い酒は頭にビンビン来て明日の仕事に障るからと言うのは、東西同じですが、上方は煮しめの味にも注文を付けます。砂糖をケチケチせんと、利かせぇよ!と、釘をさす。

あとは、屑やの豹変を宗助さん上手く演じました。酒の飲み方が、また美味そうでね。特に屑やが徐々に味わいながら、飲むようになるのがいいですよね。
ただ、米朝師匠は、屑やが酔うと箸を使わずに、煮しめを素手で食べ始めていましたが、宗助さんは、箸は使うけど、最初は挟んで食べていたのが、芋に箸を突き通して食べるようになります。
これも、酔って気が大きくなって行く感じが見えていいなぁ、と思いました。上方の『らくだ』は、あんまり、屑やがらくだの悪口を言わないのも、私好みかな?
最後に湯灌するところで終わりましたが、完全に屑やと熊五郎の立場が逆転していて面白かったです。


・次回は、九月だと思います。