三遊亭わん丈さんののげシャーレでの落語会は、にぎわい座主催以外の自主公演は、既に始まっていますが、
ここ横浜にぎわい座が主催の落語会は、これが第一回目でした。そんな、わん丈ベイサイド、こんな内容でした。
1.母親への愚痴/わん丈
開口一番は、前座の出囃子で登場したわん丈さん。
「?」と、なりました。後からご本人から説明が有りましたが、それはこの会の初回だから、前座は出したくない、自分が開口一番を!と、出たんです。
そして、やった根多は、新作落語。わん丈さんの落語会に母親が観に来て、その母親のマナーを通して、客席に携帯電話の電源を切りましょうみたいな、
馬桜師匠の「携帯電話を切りましょう!」の歌みたいなヤツの落語版でした。それにしても、落語会で携帯電話を鳴らす奴、意外に親やその友達に多い。
2.紙切り/八楽
先代正楽が祖父で、二楽が父親という、紙切り界のサラブレッド、林家八楽さん。まだ、前座さんだから、仕方ないけどえらい切るのが遅い。
腕試しの「文金高島田の花嫁」を切るのに、二分半を要した。お題を取った「卒業式」と、「わん丈」を切るのに要した時間は、それぞれ7、8分掛かりました。
まだ、二十歳の八楽さん、これから腕を上げて欲しいです。二楽は抜ける!ガンバレー!
3.庭蟹からの花見小僧/わん丈
マクラでは、桜木町駅に、100インチのテレビくらい大きなわん丈さんの看板が、この会の翌日、三月十九日から2年間飾られるのです。
わん丈さんが、学校寄席で野毛の小学生に扇子を使って「蕎麦を食べる仕草」を教えている様子が、看板がになるらしいです。
私は、二十三日に再度、正太郎独演会で桜木町へ行くから、そん時にわん丈さんの看板をチェックしてみたいと思います。
そうそう、更に第二子出産に立ち会った話と、滋賀県から、ご両親を呼んで、お母さんが初めてビジネスホテルに泊まった話をされました。
なかなか、笑えるエポックでしたが、今後、わん丈さんの会に行くと、多分皆さん聞く事になるので、ネタバレしないよう、これ以上は書きません。
わん丈さん、沢山会をやっていますよね、赤坂の旧見番やらくごカフェ、そしてミュージックテイト、そしてココのげシャーレ。
さて、本編。『庭蟹』と『花見小僧』って滅茶滅茶ツク噺をなぜ?並べたのか?と、思ったら、根多出しするさいのうっかりらしい。
最初、季節根多で『おせつ徳三郎』の前半の『花見小僧』を出したら、にぎわい座から根多卸しも?!と、頼まれて、稽古したばかりの『庭蟹』をネタ出したんだそうです。
それでも、設定が丸々被った二席を上手く繋いで、『庭蟹』の主人と番頭をまんま引き継いで、『花見小僧』へと上手にバトンを渡しました。
『庭蟹』にも、極自然に定吉をだしておく演出など、わん丈さんは器用で芸が細かい。『花見小僧』の定吉も、可愛いさと、スレた感じのませた様子の加減が上手い。
主人の飴と鞭に、上手く乗せられて、婆やに口止めされていた、お嬢さんのおせつと、徳三郎の仲を話してしまいます。
あまり、極端なくすぐりを入れ事したりはしないタイプで、あくまでも、六代目圓生直系らしいギャグを使いますよね。
4.井戸の茶碗/わん丈
わん丈さん、出囃子が小鍛冶なんですね。右朝師匠がそうだったから、少しハッとしました。多分、『庭蟹』ん時も掛かってたろうに、
この仲入り後の登場で、私は気付いてしまいました。咄家増えて、出囃子決めるのも大変ですよね。
ディズニーとかは、版権五月蝿いしね。長唄はもうメジャーなのは出尽くした感じがするので、昭和歌謡とかが狙い目ですよ。
個人的には、霧島昇の「誰か故郷を思わざる」とか渋いと思います。
さて、高座に上り手拭いを忘れたと、八楽さんに手拭いを持って来て貰うわん丈さん。すると、八楽さんが手拭いだけでなく、草履も持って来る。
多分、これは私の勝手な想像ですが、手拭い忘れたも、わん丈さんの演出で、この草履自慢がやりたくて、八楽さんに持って来させたんだと思います。
だって、草履は畳表が茶色、そう!烏おもての仕上げになっていました。しかも、よく見る深い焦げ茶ではなく、やや淡い感じなんです。
職人が烏おもてに畳を仕上げていて、偶に、出ると言う通称「銀ねず」と呼ばれる名品なんだそうです。挿げられた鼻緒も、印傳でした。
一生モンだと、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買った草履だそうで、ココイチ用の履物だと、熱く草履について、蘊蓄を語るわん丈さんでした。
本編の『井戸の茶碗』。まだ、ペースが掴めない感じなのと、キャラクターが固まっていないのが、聴いていて辛かったです。
この噺、若手がやると、千代田卜斎が難しいんですよね。侍としてのキャリアの差を、細川の家来・高木作左衛門との対比で見せる必要があります。
年齢と、武士としての誇りを捨てていない、頑固さを若手は表現なかなかできません。これが決まらないと、噺に芯ができない感じで終わります。
高木は、みなさんできるんですよ。屑やの清兵衛さんも、何とか、わん丈さんも彼なりに正直さがよく表現されているけどね。
仲間の屑やたち、そして中元の亮介さん、そして千代田の娘など、脇の登場人物を的確に描いて、噺のアクセントにするのも、咄家の腕の見せ所です。
この日の『井戸の茶碗』が、三年先、五年先に、わん丈さんが、どんな風に進化させてくれるのか?楽しみにしたいと思います。
次回、わん丈ベイサイドは、9月26日の木曜日です。