もう限界が来ているズボンの修理 | 洋服直し屋の日常

洋服直し屋の日常

服の直しや仕立ての仕事をしています。
日常で出会ったおもしろいこと、服の製図や
自分でできる修理方法など書いています。


                     もう限界が来ているズボンの修理

かなり古いこの作業ズボン、過去に3度も
継ぎ当て(破れた部分に、生地を当てて補修すること) をしてきた。

                       

まだまだ丈夫なズボンを、どっかに引っかけて
破れたのとはワケがちがう。

これは、15年以上もはき続けて
経年劣化ですり切れた。

本人は「表から何でもいいから、丈夫な布を貼ってください」と言われる。


今回で4回目だ。過去に裏から2回、表からも1回。
もうすでに、破れの周囲は生地が薄くスダレ状態だ。


『継ぎ当て布』を支えきれなくなっている。








このズボンならホームセンターに行けば、新品が1,200円で買える。
その瞬間から頻繁にはき続けてもまた10年は持つ。

そう言ったのだが、
「今回で最後です」 毎回おなじことのくり返しである。

このかたは(40才半ば)ケチではない、性格は温厚でいたって素直。
ただIQが少し低め。
「修理した作業服を着ている」ことに自己満足的な傾向がみられる。

幼少のころ、お母さんがズボンの修理を、とてもていねいに
してくださっていた思い出でもあるんだろうか。

作業ズボン以外でも、かなりひどいボロボロ服でも、
「修理してあると安心だ~!」と、胸張って入店してこられる

ある日他のお客さんと接客中に、このかたが入店してこられた。
先客を無視して横入(はいり)し、同じズボンの修理を頼まれたことがあった。

先客はそのズボンを横で見ていらした。
本人が帰られたあと、

「あんなひどい状態のズボンでも直せるのですか?」

「はい、直せますが、普通は2度が限界です。
4度目になると、もうまわりの生地が継ぎ当て布を
支えきれなくなり、たぶん1ヶ月後にまた破れると思います。

「ああ、その後にボツにされるんですね」
「いいえ、たぶんあと2~3回はおなじ場所の修理を頼みに来られると思います」

 

「どうやって修理するんですか?」

 

「①膝の上をカットして、前後を逆にする。破れるのは前だけですから。

 ②他にも似たようなズボンをお持ちですので、

   2本のズボンの良いとこ取りをして1本のズボンに仕立てる」の

   2つの方法があります」

  

「???買ったほうが安いと思いますが・・・・・・」
 

「新品を買うより、修理済みのほうが落ち着くのだそうです。
ときどき洗濯も頼まれます。そのときは100円のチップをくださいます」

お客 「????・・・・・・????」

今回の修理代金は800円

もうすでに、膝の当て布だけで4回の3,200円
その他ポッケの破れ 裾のすり切れ、前チャックの取りかえ
など、合計7,000円くらいの修理代をこのズボン1本に払い済みだ。

古いズボンだから、あっちこっち破れてトーゼンとは言え。

私の「ぜひ新品をお買い求め下さいませ。
かなりの節約になります」の祈りが届かない。

 

                                                                                  にほんブログ村 ファッションブログ リフォーム・お直し(服)へ
                                                                                  にほんブログ村