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「お疲れ様、ラルファロ諸島に到着だよ」


リタは、船長の声で目を覚ました。


つまり、彼女は残り三十キロで諸島に到着するという時に、うとうとと寝ていたのだ。


「爆睡してたよ。全く、あんたは寝坊助なんだから」


「まあまあ、ヨゼフ。リタだって、奴隷として何日も何日も《闇の大蜘蛛》と戦う生活を送ってたんだから、疲れて爆睡するのも無理ないよ」


「疲れが溜まってるのは、僕達だって一緒だろう?」


「まあ、それはそうだけど……。“特にリタの場合は、疲労困憊と言っても過言ではない程疲れてるってことよ」


ヨゼフとナンシーは、まるで他人事のように話していた。


船旅の時間はほとんど寝ていたというのに、リタはまだ猛烈な眠気と、日々の戦闘による疲労に襲われている。


「リタ、今日はゆっくり休みなよ」


ヨゼフは苦笑いして言った。それを無視して、リタは何度も何度も目を擦る。


彼女は格安ホテルに入ってから、就寝するまでの過程を、ナンシーに質問した。


「ナンシー、今日はどうするの?」


「えーと……。まず、部屋の鍵を借りるでしょ? で、その部屋のことなんだけど……」


ナンシーは、フロントで鍵を借りる所まで説明しかけて、急に口を閉じた。


「どうしたの、ナンシー」


「あ……あそこに、何かいる……」


リタ達は、海や砂浜で遊んでいる魔族達がいる方向を見た。


そこには妙な配色の鮫が、他の宿泊客を一人残らず食べようとする姿があった。


「何だろう? あの変な配色の鮫は」


「キアの下僕の魔道師が、操ってるの?」


「まさか! あいつの下僕の中に、鮫か海豚を操れる《水系魔道師》がいるとも思えないよ」


「とにかく、砂浜まで行って、大人達の話を聞こう」


「そうね。ここでうだうだ言ってても、何も始まらない」


「流石ナンシー、良いこと言うね」


リタは、ヨゼフやナンシーと一緒にホテルの外に出た。


すると、ナンシーが鮫の上に乗っている男性を見つけた。


「お……お前は、キアの下僕か?」


「そうさ。俺は偉大なるキア様の下僕、水系魔道師リゲリオンだ」


リゲリオンという水系魔道師が闇のように黒く妙な配色の鮫を操り、砂浜にいる大人達や子供達を襲う。


彼の目的はおそらく、レザンドニウム領国の秘密をリタ達の口から直接漏れないようにするために、妨害もしくはリタ達を殺害することだろう。


そうだとすると、鮫に襲われている大人達や子供達は人質にとられ、リタ達も無事では済まないだろう。


(こんな時は、どうすれば良いんだろう? このままじゃ、周囲の魔族全員を戦いに巻き込むことになる。でも、下手に攻撃すれば、おそらくリゲリオンは、彼らのうちの一人を盾に取るだろう。どうすれば……何か……何か良い方法はないの?)


三人は武器を構えたものの、まだリゲリオンと戦った方が良いか、戦わない方が良いか迷っていた。