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マーロールのブログ

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(私が父上に手紙を送り、パーティの開催を勧めたのは、明日からヨゼフ達と共に旅に出ることを国民達に知らせるためだ。そう、これは運命なのだ。将来、この城を継いで女王になることも、《セイント・ウェポン》を砂龍神から授かり、戦士になることも。これらは全て、運命が決めたことなのだ。今更後戻りはできない)


リタは兵士達の列の間を通りながら、ずっとそのようなことを考えていた。前方で向かい合わせに立っている二人の近衛兵が、リタの顔を包んでいるベールを外した。その裏にはキアの呪術による仮の顔ではなく、色白で美しく、ざらついているのがほとんど目立たない龍の顔があった。


先程ランディー王達が驚いていたのは、彼女にかけられていた呪いが解け、元の姿に戻っていたからに違いない。


セルセインはリタの耳元で囁いた。


『殿下、挨拶が終わりましたら、一緒に化粧室に参りましょう』


『い……いきなりどうした、セルセイン?』


『お気づきになりませんか? 足元をご覧下さい』


『はぁ、足元?』


セルセインに促され、リタは足元をを見た。青色のドレスの下から、龍の足の爪が覗いていることに気がついたリタは、首を縦に振り、セルセインに答える。


彼女はそのまま大きな扉を開け、国民達の前に出た。そして、マイクを握った。その時に見えた龍の手に、またしても彼女は驚かされた。


(こ、これはどうしたことか。手足が元に戻ってる。もしかして、亡き母上や砂龍神デュラックが助けてくれたおかげなのか?)


リタは呆然としていて、声も出なかった。が、同一族の大人達が「リタ殿下、しっかりして下さい!」と、一斉に叫びだした時、彼女は我に返る。彼女は一礼をして、自ら決意したことを述べる。


「この度、私が水龍と火龍を連れてこの砂漠に戻ったのは、皆様方に申し上げたいことがあるからです。私達三人は九年間、レザンドニウム領国の領主キアの奴隷として働かされていました。彼は今、とても恐ろしい呪術を身につけていて、正直言いますと、私も怖いです。が、いつまでも怯えていては何も始まりません。今こそ、魔道族と戦わなければならない時なのです。明日、私は客人の水龍や火龍と共に、キア達と戦うための修行の旅に出ます。以上」


リタが抱負を述べた後、周囲から割れるような拍手が送られた。


「リタ姫様、最高!」


「リタ殿下、格好いい!」


「ランディー陛下、万歳!」


「リタ殿下、万歳!」


「フィブラス王国万歳!」


周囲の大人達が口々に叫ぶ。ヨゼフやナンシーも、負けないくらいの声で叫ぶ。


(ヨゼフ、ナンシー……。それに一族のみんな……。ありがとう。本当に、ありがとう)


リタは一族の民や他龍族民の声援を受け、涙を流した。


(リタ……。九年間の奴隷生活を経て、逞しく成長したな。これもヨゼフ達のおかげだろう。天界のレイア王妃も、お前のことを頼もしげに見守ってくれることだろう)


城の天井の方を見ながらランディー王は、娘を見守ってほしいと、亡き后に祈る。



リタによる旅立ち宣言が終わり、食事の時間が来た。ヨゼフやナンシーは、奴隷部屋にいた時よりもたくさん食べられると思ったのか、大好物の海藻や肉を、ここぞとばかりに食べる。


「久しぶりに、故郷の産物である海藻を食べれて、幸せだよ」


「この肉、私の故郷スクルド町産ね。懐かしいわ」


二人が食べ物を頬張っている間、リタはセルセインに連れられて、女性兵士専用の化粧室の鏡を見ていた。その鏡に映っているのは、父親似のダークブルーの鬣とまっすぐに伸びた角、五歳の頃よりも細長い顔、そして四枚の翼と青いリボンを巻いた尾が揃った姿だった。


「凄い。本当に元通りの砂龍の姿だ」


「おそらく殿下がデュラックから授かったセイント・ウェポンに込められている、聖なる力の効用ではないでしょうか?」


(そうか! 地下神殿であの爪を手にした時、癒されるようなオーラを感じたのも、そのためだったのか!)


リタは近衛兵が立てた仮説を間に受けると、化粧室を出て、自分の部屋に戻る。自分が幼い頃に部屋で読んだ、《龍神とセイント・ウェポン》という題名の本を探すためだ。彼女は部屋に入ると、早速その本を探し始める。


本棚には辞書や古い地図帳、この魔界の歴史等について解説した本など、様々な種類の本が四段に分かれて入っている。


「殿下何をしているのですか?」


「確かこの本棚に、セイント・ウェポンについて解説した本があるはずだ」


リタはひたすら古文書を探した。その中から、赤色の表紙で厚みのある本を見つけた。ただそれは、大量の埃をかぶっているうえに、ページの所々に染みができている。おそらくその染みは、前の襲撃の時に起きた火災が原因でできたものだろう。が、見方次第では珈琲が零れているかのようにも思えた。年数が経っているので、無理もないだろう。


それでもリタは諦めなかった。彼女はまず埃を払い落とし、題名を確認する。表紙には《龍神とセイント・ウェポン》と書かれている。


「これだ! 早速、調べてみよう」


リタは机に古文書を置き、幾つかページをめくった。事実、五十ページから後はまだ誰も読んでいない、いわば未知の情報だった。


《神々の聖なる力を秘めた武器、これを“セイント・ウェポン”と言うなり。これらの武器を得し者達、つまり神々に選ばれし龍戦士達は、如何な願い事も必ず叶うと言われている》


古文書に記されている事柄は、幾分横道に逸れている、とリタは思った。が、確かにその通りかもしれないとも思った。というのも、仮に砂龍神が願い事を叶える力を持っていなかったとすれば、自分自身の姿が元に戻ることはまずなかっただろう、と考えてのことである。


答えが見つかり、ほっとしたリタは古文書を本棚に戻し、セルセインと一緒に城外に出た。