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マーロールのブログ

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別名《魔界の花園》とも呼ばれている華龍族の町、マライテスの荒廃を阻止したリタ、ヨゼフ、ナンシーの三人は、新たな目的地が二つある《グロッディオス島》に向かっている。だが、この島はファナンディス島よりもかなり南にあるため、一日を船の中で過ごさなければならない。


リタ達は想像している以上に長い旅になるだろうと思い、昼寝をしていた。夢の中でリタは、ヨゼフやナンシー、そしてその他の龍戦士達を纏めていた。


(何だろう? この緊迫感は……。私に、戦士達のリーダーを務めろとでも言うのか?)


リタは目を瞑りながら浮かんでくる情景に、違和感と不安を覚える。


(以前は父上が砂龍王を引退し、私が新たな砂龍族の王になる夢だった。私は、二つの役目を背負ってるだけに過ぎないのだろうか? 一つ目の顔は、フィブラス王女。いずれはあのポラテルド公子か国内の執務大臣の次男、それとも親友のヨゼフを婿にし、フィブラス国王である父の跡を継ぐ。これには、フィブラスの運命が架かってる。父上は私に、「お前が一番好きな魔族と結婚すれば、必ずうまくいく」といつも言ってる。もう一つの顔は、砂龍神デュラックの力を受け継ぐ砂龍戦士。やはり、これにもフィブラスの運命が架かってる。また、この魔界の運命も、私達の手に委ねられてる)


リタは深刻に考えれば考えるほど、眠りが浅くなり、次第に目を覚ます。


(やはり、あれは夢なのか……。そうだよね、私なんかに龍戦士のリーダーや砂龍女王なんて務まりはしないし)


リタは苦笑する。辛い過去を乗り越え、ここまで来れた。でも、それは将来の出来事とは全く関係のないことだ。リタはそう思っていた。


彼女が起きたのを合図にするように、他の二人も目を覚ます。


「全く……。ナンシーのいびきのせいで、目が覚めたよ。あんたも一応女なんだからさ、いびきをかくのやめたら? 周囲にも迷惑だし」


注意しているのか、それとも単にナンシーに皮肉を言っているのかわからない口調で、ヨゼフは言った。それを更にリタが注意する。


「ヨゼフ、そうやって過剰に年上の魔族に注意を促すもんじゃないよ。口調次第では、生意気にもとれるよ」


リタの言葉には忠実に従い、ヨゼフは反省した。


三人はおやつを食べながら、次の目的地である《ゲルデナ》という街の位置を確認した。ゲルデナの街には、主に《雷龍族(らいりゅうぞく)》という種族が住み、千五百年前の鎖鎌使いと呼ばれた《雷龍戦士ハンス》の生まれ変わりの存在を信じて暮らしている。


この魔界には、雷龍族の民のように神々の後世の存在を信じている種族がほとんどである。それゆえ、北の領国《レザンドニウム》の領主キアからは、リタ達を含め龍戦士全員が目の敵にされている。


(龍戦士狩りは、キアが本音でやってることじゃないのか? もし彼の本音からでないとすると、誰の差し金だろう?)


リタは以前、メアリーが氷龍城の地下神殿で話してくれたことを再度思い返している。


(おかしい。何かが矛盾してる。伝説では、闇龍アルエスは後に神に転生した龍戦士達の活躍により、封印されたはず。せめて、アルエスが封印された場所だけでも確実に突き止められれば良いんだけど)


リタの心に、ほんの少しだけ迷いが生まれる。フィブラスだけでなく、この魔界を悪から救うのも、私達龍戦士の役目だ、とさえ彼女は思っている。


眉間に皺を寄せるリタを心配してか、ナンシーが話しかける。


「リタ、ひょっとして、まだメアリーが言ったことを鵜呑みにしてるの?」


ナンシーは訪ねた。図星を突かれたと思ったのか、リタは首を横に振って誤魔化す。だが、ナンシーにはわかっていた。リタは今の状況を打開する策はないのか、と必死に考えている状態にある。それを支えるのが、私とヨゼフの役目だ、とナンシーは思った。


(そうよ。リタは自分で何もかも処理できるように見えて、本当は溜め込みやすい性格なのよ。だからこそ、ランディー陛下はリタをよろしく頼むと言ったのよ)


ナンシーはこれまで自分達がやってきたことについて、少し誤解があったことに気づく。リタを頼むといってもそれは、身分を隠して旅をしろという意味ではない。あれはリタの友人として、彼女のことを理解してあげてほしいということだったのね。


そう思うとナンシーは、顔を赤らめる。自分達が勘違いしていたことを、恥じているのだ。その様子を見て、ヨゼフが訪ねる。


「どうしたの? 顔が真っ赤だよ」


「え? あ、何でもないわ。心配かけてごめんね」


「なら良いけど」


自分から訪ねてきたヨゼフだが、彼はそっぽを向く。まるではなからナンシーのことなど、心配していなかったかのように。


(なによ、ヨゼフったら。まあ、いつものことだから、仕方ないわね)


ナンシーはいつものヨゼフの態度を見ているせいか、嫌気がさしている。


だが、友人とはこういうものなのだ、とナンシーは悟る。内心では気遣っていても、大して気にしていないように振る舞う。こうすることで、自分の個性を見せる。この仕種が珍しくない、とナンシーは思った。


リタは船の甲板から、ファナンディス島がだんだんと遠くなっていくのを、目の当たりにした。一方で彼女の中には、ようやく龍戦士捜しの旅が終わりに近づいてきているという安心感もある。


(父上……。元気にしてるかな? 無理して、腰を痛めてなければ良いけど。父上は毎日、腰痛を気にしてるってツーリアン大臣が言ってた。国王がそれで良いのかな?)


父王の情けなさを感じながら、リタは甲板から見える景色を眺めている。三人が次の島のことを考えているうちに、日が暮れた。暗黒の龍がガルドラを支配しようとしているかのように、夜はとても暗い。


グロッディオス島への到着に備え、三人は夕食を軽く済ませ、早めに就寝した。