昨日はだらけた1日を過ごすと思っていたが
去年、定年退職をした上司から電話があってな
俺にとってこの方は恩師であり、カメラの師匠でもある
気難しい性格の上、無口で取っつきにくい人物
しかし、カメラに収める写真は実に優しくてな
人は見掛けじゃないし、尚の事性格でもないのさ
俺も普段は言葉が悪いと指摘されることがある
勿論、ちゃんとした言葉使いが出来ない訳じゃないぜ
ただな、俺は昔からこういうコミュニケーションをしてきた
相手とフレンドリーに付き合うのが目的だったが
いつしかこれが普通になっちまったぜ。
話を戻そうか。
そんな上司と俺は付き合ううちに上司の撮る写真に惹かれていった
仕事でも最高の1枚をリリースして大きな仕事も何度もしてきた
去年、会社の上層部は引き留めを何度も打診したが
彼は、「もう決めたこと」と退職していった。
俺もまだ仕事で恩返し出来てないし引き留めたが
「人間、華のあるうちに引かせろや、な?」だとさ
人間くさい男だぜ
何度も彼には助けられ、励まされ、今の俺があるのは
彼がいたからだな。
そんな彼から電話があって、無口だから3分で終わったが
「暇なら付き合えや」と一言。解説すると
暇してるなら写真でも撮りに行こうと認識。
断る理由などない。逆に写真の勉強させてもらいたいからな
支度をして上司を迎えに行くと彼の姿がない、、、
玄関前にいるといってたのだが。そこで閃く
もう、写真撮ってるなと。
車降りて付近を探すとカメラを鉄橋に合わせているのを発見
ああ、今は声かけても無理だと悟り見ていた
列車の通過と共にシャッター音が響く。相変わらずセンス良い
その後、声掛けたら「何時からいたんだ?」と
「そうすね、30分前ぐらいかな」と言うと
悪いと笑ってたわ。いつもの事だから気にしてないし
俺だってカメラ構えれば周りの音など聞こえないからな
それが風景の切り取りだろうな。
車に乗り2人で自然の中に入る。お互い何を話す訳はなく
思うがままにシャッターを切っていく
そこには時間の経過など存在しないように感じる
自然の風を受け自然を受け入れ溶け込むように
ゆっくりと1枚、また1枚と
お互い生き方は違えど、カメラを持ったら皆も同じ
上手く撮ろうなんて思わなくていい
下手だって関係ない、その一瞬を撮れるのは君達なのだから
我々は自然の息吹きをカメラに収めるだけだ
レフだろうがコンデジだろうかiPhoneだろうが関係ない。
その一瞬は君達のものだからだ
どれだけの時間が流れただろう。気がつくともう、夕方
二人で腕時計見合って笑ったっけ。
これが撮るって事、これが時空を切り取るって事
帰りの車内で俺の撮った写真を見ていた師匠
険しい顔して、あんたに追いつく為頑張った時期もあった
だが、追いつくとかそういう次元じゃないんだよな
師匠にしか撮れない物、俺にしか撮れない物
そしてこれを見ている君達にしか撮れない物があるんだよ
「おい、腕あげたじゃねえか」
滅多に人の写真を誉めない師匠なのにな
なんかそんな事言われて目頭が熱くなったぜ
俺は、この人についていく。
だから長生きしろよな。酒飲み過ぎんなよ
これを見て1人でもカメラに興味をもってくれたら嬉しく思う。
じゃあまた明日な。
