八月十五日「終戦記念日」

本日紹介したい作品は、直接的な戦争映画と言う訳ではありませんが、戦争による傷跡の深さを思い知らされる、あるテーマが含まれています。。

逆に考えてみると、
当時の映画(現代劇)で、戦争に全く関連しない様な映画なんてあったのでしょうか……? 

きっと皆無に等しいのでは。。?
と、ふと思いつつ。。

…………………

数ある【松本 清張】氏の作品の中でも、、恐らく『砂の器』『点と線』等に並ぶ傑作として有名なのではないでしょうか☝

この作品の後に、
多くのサスペンスドラマで使われる様になった、十八番(オハコ)と言われる名シーンが、本作からインスパイアされ派生して行ったモノ!

この作品が、王道サスペンスドラマの、
(ゼロ)出発点だったのですね👌

『ゼロの焦点』

[ZERO FOCUS]
◇ 1961年作品(松竹)
監督 : 野村 芳太郎
原作 : 松本 清張
脚本 : 橋本 忍、山田洋次
音楽 : 芥川 也寸志
出演 : 久我 美子、高千穂 ひづる、有馬 稲子、南原 宏治、加藤 嘉、西村 晃、沢村 貞子、穂積 隆信


〈簡単なあらすじ〉


広告会社の金沢支社に勤める鵜原憲一(南原 宏治)は、禎子(久我 美子)との結婚を機に東京本社勤務となったが、新婚生活僅か七日後に後任との引き継ぎの為、再び金沢へ出張に出た。
しかし、予定の日数が過ぎても憲一は帰京して来なかった。
完全に音信不通となり、遂に本社から同僚が現地へ事情調査に派遣される事になり、禎子もそれに同行して金沢へ向かった。


調査を進めると、憲一が在任中暮らしていた筈の下宿には数ヶ月しか住んでおらず、、その後の下宿先については会社側も知らなかった。。


また、憲一とは仕事以外でも懇意にしていると言う地元煉瓦会社の室田社長(加藤 嘉)と妻・佐知子(高千穂 ひづる)とも対面するが、有力な情報は得られずじまいだった。


手掛かりが掴めぬまま、警察の捜査も一向に進まなかった為、出張先から立ち寄った憲一の兄・宗太郎(西村 晃)と交替する形で禎子は一旦帰京した。


しかし、
数日後、その宗太郎が、何者かに青酸カリ入りのウィスキーを飲まされ死亡してしまった。

憲一への不信感と深い疑念がつのる禎子は自らも、事件の真相究明に動く中、、
憲一は、この広告会社に勤める前に、東京・立川署で一年半、警官をしていた事がわかった。

そこで、憲一が担当していたのが、特飲街の米軍兵士専門の娼婦(パンパン)を取り締まる風紀係であった。。。。

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(★完全にネタバレしますm(__)m)


憲一が警官時代、東京・立川署でパンパンの風紀係をしていた時、同僚に話したという言葉「パンパンなんて実にやっかいなもんだが、捕まえて取り調べしてみると、其々、身につまされる事情を持っている、いわば敗戦の産んだ一番悲しいみなしごだ……

物語(事件)の根底に流れる、消し去りたい過去から犯行に及んだ理由が少しずつ浮き彫りになり、禎子の推理が当てはまっていくが。。

この金沢で、鵜原 憲一は曽根 益三郎と名前を偽り、、
内縁の妻・久子(有馬 稲子)と暮らしていたが、禎子との結婚を機に自殺を偽装して久子との関係を清算しようと考えた。。


今や、夫と共に地元の名士となった佐知子としては、パンパンであったと言う苦い過去をどうしても消し去りたかった。。
その過去を知っていて足元を見られていると思っていた憲一(曽根)の自殺偽装を幇助するが、


アリバイを残そうとした、その偽装現場である能登金剛で、、
佐知子は、瞬時の判断で憲一を崖から突き落とし、殺害してしまった。。

この人さえ居なくなれば誰にも過去を知られる事は無いと………

しかし、その後も連鎖して、事情を知る兄・宗太郎を殺害する佐知子、、


そして、最後の殺害相手、憲一(曽根)の内縁の妻・久子だが、、
実は、佐知子と同じパンパンとして苦労をして来た仲間だったのだ。。

佐知子(エミー)は久子(サリー)を、殺す事が出来ず夫の元へ行き、全てを話し罪を償おうとしたが、、帰途の車中で、憲一の兄の殺害に使用した「青酸カリ入りのウィスキー」を、久子が一口飲んでしまう。。。

犯人さえも、意に反した殺害となってしまった。。


禎子の推理におけるプロセスは間違っていた……
しかし結果として、、佐知子が犯人である事は間違っていなかった。。

………………………

前半はスンナリ、淡々と物語が進むが、、


後半、能登金剛の断崖絶壁でのクライマックスとなる謎解きの禎子の推測&佐知子の回想シーンからは、、まるで別世界の様な、ある種、流麗な美しささえ感じてしまう程のドラマチックな映像とストーリーに魅せられてしまった!
あの『砂の器』のクライマックスシーン同様、演出の妙ですね☝

とにかく、【野村 芳太郎】監督&【橋本 忍】氏の作品は、演出・構成が素晴らしく、、
そう持って来るかぁ!みたいな作品が多く、本当に敬服するばかりですm(__)m

そして、あまりにやるせない結末には虚無感を感じてしまった。。

悲運と幸運の間に生きる女、、
全ての過去を消し去り、
「ゼロ」にしなくてはならなかった。。

この日本海の様に、、
「広く深い無限の悲しみ」だけが残った。

★★★★

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★三人の名女優が、とにかく素晴らしい!

⬆禎子役の【久我 美子】さん、クールな風貌だが、純真さの残る貞操な女性を演じられました👍禎子自身が憲一を疑問に思い推理していく過程での戸惑いと悲哀の表情は素晴らしかった。

⬆佐知子役の【高千穂 ひづる】さん、柔和な表情から、一瞬にして犯罪者の顔へと変貌する、、驚愕の演技は凄まじかった。地位と名声を得た女のエゴと隠したい過去への焦燥が、取り返しのつかない過ちを冒した。ある意味一番悲しい女かも知れません。。

⬆久子役の【有馬 稲子】さん、、
回想シーンでの、、数々の不幸からやっと掴んだ幸せを実感しながらも耐える女を美しく演じられていました。どんなにみすぼらしい容姿であろうと、滲み出る色気を感じ取れます。


特に、出張から帰って来た曽根を、見付けて走り寄る久子、、作品中一番美しくロマンチックなシーンでした👍

有馬さんは、どの作品を観ても、演技の巧さが突出し過ぎていて、、逆に浮いて見えてしまう作品もありますが、m(__)m、本作は、全ての俳優さん達の演技が素晴らしく、、いい形で有馬さんがブレンドしている作品だと思います。。

本作の様な、名優の演技の応酬こそ、昭和映画の醍醐味ですね❗

思いっきり、堪能致しました ❗❗

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いつもの余談⬇
凡そ30年前に、友達の父の生家があり、、
この地を訪れた事があります。。


その時、お世話になったお宅が、、
本作で、禎子さんが、身元不明の自殺体を確認しに行く際に途中乗り換えをする駅「羽咋」(はくい)と言う地名だった事を急に思い出しました👍

うろ覚えですが、当時はまだ東京から電車で行くと7~8時間位は掛かっていたんじゃないでしょうか……?(車も同じ位掛かりました(^^;)

その時、初めて日本海を泳ぎましたが、、
プライベートビーチ状態で凄かったんですが、、夏なのに、荒波で暗い海のイメージを持ちました。。天気が悪かったからでしょうか?

本作を観て、、心の中に微かに残っていた暗い海の記憶が、鮮やかなモノクロで甦りました、、