『雁の寺』
【川島 雄三】監督、大映にて【若尾 文子】さんとのコンビ二作目。
一作目の『女は二度生まれる』と一緒に買ったDVDにて鑑賞しました!
セピアがかった淫靡なジャケットからは崇高な和尚さんの色欲のお話を予想してましたが………m(__)m
原作は、『飢餓海峡』『越前竹人形』等の【水上 勉】氏、少年期に禅寺での修行経験を元に執筆された作品。。現実と空想が入り交じった問題作に川島監督はどんなアプローチをされたのでしょうか?
◇ 1962年作品(大映)
監督・脚本 : 川島 雄三
脚本 : 舟橋 和郎
原作 : 水上 勉
撮影 : 村井 博
音楽 : 池野 成
出演 : 若尾 文子、高見 国一、三島 雅夫、木村 功、山茶花 究、中村 鴈治郎、西村 晃、菅井 きん、小沢 昭一
〈簡単なあらすじ〉
昭和初期、
京都洛北の由緒ある禅寺・孤峯庵は名画壇・岸本南嶽(中村 鴈治郎)の描いた雁の襖絵が飾られる部屋があることで有名となり「雁の寺」とも呼ばれている。
寿命が尽きた南嶽は遺言で、この寺の住職・慈海(三島 雅夫)に妾の里子(若尾 文子)を世話して欲しいと言い残し息を引き取った。
元々、里子に気があった慈海は、南嶽の死後、間もなく里子を寺に迎え入れ面倒を見る様になるが、、和尚でありながら里子への愛欲に溺れ、何時でも里子の体をむさぼる様になっていった。
若狭から得度してきた修行僧・慈念(高見 国一)は、慈海から虐遇される毎日だったが、学校に通わせて貰う等の恩がある為、逆らう事等、出来る筈もなく我慢して従うしかなかった。。
そんな慈念を不憫に思った里子は、慈念に優しく接し慰める様になっていった。
ある日、
慈念の出家を仲介した若狭西安寺の木田黙堂(西村 晃)が、孤峯庵を訪れて来たが、慈念は自分の出生の秘密を絶対に里子に話さないで欲しいと懇願するが、、黙堂は、里子に執拗に言い寄られ慈念の生い立ちを話してしまった。
慈念は捨て子だった事が明らかになり、より同情心が募る里子
その夜、
慈海が眠りにつくと、、
里子は、夜なべをする慈念の部屋の襖を開けた……
………(★完全にネタバレします要注意m(__)m)
若狭に居た時の過去を隠そうとする慈念、そのコンプレックスを深堀され強い憤りを覚える。
慈念、、本名が「捨吉」だったが、その名前の由来が捨て子だったからと言う父親の単純で悪意にも満ちたモノ。そうして、彼の捻れた性格が育まれて行く。
乞食谷で捨吉を育ててきた母(菅井 きん)、、貧しい生活を凌ぐために「口べらし」をしなくてはならず、実子ではない捨吉以外に選択肢はなかった。母は仕方ないと言い訳じみた弁解をするが、元々賢い捨吉にとっても出家する事は決して悪い話しでは無い筈であった、、
しかし、出家してからは、慈海の虐待に近いパワハラが激しく、寺では完全服従を強いられ、また、学校では教練(軍隊演習)が、嫌で堪らなく無断欠席を繰り返す様になっていった。。
そんな慈念を、幼少期に同様の境遇を受けた里子が同情するのも無理はない…‥
但し、何でもしてあげたいと、自ら迫り性交まで許してしまうのは行き過ぎも甚だしく、、
不貞を働いてしまったと言う罪悪感が慈念を苦しめ、慈海への憎しみを増長させるだけの逆効果に他ならなかった。。
それから数日が経ち、
慈念は、源光寺に行く慈海の代わりに勤めた檀家の法事で、平吉から兄の葬儀を近々頼みたいと言われ、ある事を思いつく…‥
慈念は、不気味な程冷静に計画を練っていたのだ。。
そして決行、、
源光寺から酩酊状態で帰宅した慈海を庭先で殺害し、遺体を一時的に自室に隠し、慈海が雲水修行の旅に向かったと見せかける隠蔽工作をした後、平吉の兄の通夜の晩、棺桶に慈海の遺体を一緒に入れた。
あとは、葬儀後に埋葬するだけだったが…‥
なんとか、、完全犯罪は成立したが。。
その後、学校の担任だった宇田(木村 功)が出家して、孤峯庵に繋ぎの住職として現れた時、慈念は、得も言われぬ焦燥感に苛まれる、、
この時慈念は、将来住職に収まり、里子と二人で暮らして行く事を思い描いていたのだろうか?用意周到に殺害&隠蔽を実行した慈念だったが、その後のビジョンが崩れてしまった…‥
宇田先生に訴える慈念の言葉、、
「私はおかんもお父っつあんも知りません~けども私はおかんに会いたい、お父っつあんが誰やも知りたい…‥先生、これもみんな迷いどすか?これが迷いやったら、やっぱり私ら坊さんになれしません…‥」
悲しい叫びが「雁の寺」に響く。。
そして、慈念は出奔を決意する。
止めにはいる里子も寺には無用になり既に無力だった。
「おっさん(慈海)のいる所へ行く」と言って寺を後にする慈念。
後悔と懺悔か?
全ては煩悩の悪戯………
里子が後をついていくと、そこは平吉の兄の墓場だった。
そこで、慈海は慈念によって殺害されたのだと気付く里子に恐ろしい形相で迫って来る慈念。
常軌を逸した里子は必死に逃げ、寺に戻ると、気でも狂ったかの様に「雁が泣いている」と一目散に、あの南嶽が描いた襖絵の部屋へ行く。
⬆襖の雁とうろたえる里子の描写は秀逸❗
そして、母雁の絵だけが破られている事を発見する。
ミステリアスな結末の陰鬱なモノクロ映像から、、一転、、
いきなり❗画面は明るいカラーと陽気なディキシーランドジャズのリズムに転換して、観光名所と化している「雁の寺」がそこに写される。。
賛否両論あって当然ですが、私はこんな突飛な演出、、大好きです。
映画は、所詮空想の世界、監督の思い描いた様に作れば良い!そこに方々から反対意見が介入しても貫いてこそ、その映画に監督の魂が宿るのだと思います。
かの『幕末太陽傳』では、ラストで佐平次が現代にタイムリープ(?)するシーンを構想していたが、多数派反対意見に仕方なく屈した川島監督…‥
やはり、川島監督は何年も先を行っていた異次元の奇才だったのだと思います。
現に当時大反対した【フランキー堺】氏が後年監督の言う通り撮れば良かった…‥なんてコメントもされているそうです。
『幕末~』のラストを観る度に、ファンとしては、残念、、と思ってしまいます…‥m(__)m
しかし、本作で一つの川島ワールドを実現出来たのではと、妙に感動してしまった❗
そしてそこに現れるのは、雁の襖絵をガイドするお坊さん(?)役の【小沢 昭一】さん!
感無量👍です❗
私は個人的に映画のラストシーンに拘りを持っていて、、そのラストの為にストーリーがあると言っても過言ではないと思っています。。
ハッピーエンドやバッドエンド、突拍子もないエンディング、意味不明なエンディング、説明し尽くしてしつこい程のエンディング等々、、其々に監督の思いやセンスが詰まっていて、
そこが私にとって映画の醍醐味の一つです☝
そう言う意味も込めて、本作のエンディングは、素直に面白かった!
川島監督はこのセンシティブな問題作を、最後は皮肉を込めてあっさり笑いに変えて見せた。
またも、、してやられた。
★★★☆
とにかく、今は、、
「雁がいいひん、雁がいいひん、」
の里子の声が頭から離れない…………(笑)
………………………
【若尾 文子】さん、本作でも有り余る程の妖艶な美貌を武器に「いやよいやよも好きの内」からの「好きこそものの上手なれ」と才能を存分に発揮する女を演じられています❗
川島&若尾三部作を順番に観ていくと、、
面白い事に☝若尾さん演じる其々の役柄が、変遷を辿りながら、少しずつ成長していき最終作『しとやかな獣』で熟成して最高にエグい女として大成します(笑)!
「若尾文子を女にして見せる!」と息巻いた川島監督は、有言実行!やり遂げられました。
助平な住職・慈海役の【三島雅夫】さん、、
「マスカット」を「バスケット」と軽くボケてみたり、ダブルベッドを注文してヤル気満々だったり、完全に目眩くエロ和尚 m(__)m 、気持ちは解らないでも無いが、少し落ち着け!と言いたくなった……(笑)
その慈海から「○○しちゃって!」なんて口癖にハイカラ坊主と言われる源光寺の雪州【山茶花 究】さん、お洒落で奥さんもかなり若くて、「坊主丸儲け」なんてホントにウラヤマしい( ;∀;)
一番お坊さんらしい(笑)慈念役の【高見 国一】さん、前作『女は二度~』に続いての出演で、本作では主役級の大抜擢でしたが、坊主役がかなりハマっていて、当時は注目株だったのだろうと思いますが、その後殆ど見られなくなりました。モッタイナイ。。
………………………………
最後に、、
本作はあくまでフィクションであって、この作品を観て、お坊さんが全てこんな方達だと勘違いする事は決してありません m(._.)m(笑)
何卒ご寛容の程お願い申し上げます…‥ f(^_^;

















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