「理系の英語」は「科学技術英語」または単に「技術英語」とも呼ばれている英語の1分野です。 まず、「理系の英語」が「その他の一般英語」とはどのように異なるのかを明らかにしておく必要があります。それには (1) 内容、(2) 目的、(3) 表現 の3つの観点がありますが、今回は (1) 内容について考えてみましょう。


 「理系の英語」が扱う内容は、特定の国・地域や文化に固有なものではなく世界中に通用する科学技術の情報です。たとえば、Mercury is a liquid at room temperature. (室温では水銀は液体である) は、世界中の人が認める客観的な事実です。ところが一般英語では、ある場面で “You are clever.” と言われたとしても、喜ぶのは早すぎます。なぜならclever はある地域や文脈によっては褒め言葉の「賢い」ではなく「悪賢い」や「ずるい」といった軽蔑的な

「理系の英語」では使われません。

 

 一般英語では、いろいろな意味を持つ単語を辞書で引いてどの意味が文脈に適するのかを考えることがよくありますが、「理系の英語」では一つひとつの単語の意味が明確なので、そのような作業はほとんど必要ありません。この点で「理系の英語」はやさしいのです。特に理数系の学科が得意な人は内容がわかりますから、「理系の英語」を学ぶことは英語の力を付けるのによい機会です。

 

 たとえば「オームの法則」の英文は次のとおりです:

Ohm’s law states that the current through a given conductor varies directly with the applied potential and inversely with the resistance.(オームの法則とは、導体を流れる電流は電位差に比例し、抵抗に反比例する、というものである)

 

 Ohm’s law states で、「法則」には state という動詞を使うことがわかり、「~に比例する」は vary directly with ~、「に反比例する」は vary inversely with ~ となることがわかります。また不定冠詞(a / an)は「任意の」、定冠詞(the)は「唯一の」という意味を表すことを考えれば、the current through a given conductor の the と a はなぜなのかといったことも理解できるでしょう。なお、applied potential の applied (かけられた) は日本語訳では省略されていることにも気づくでしょう。

 

 次回 ② は理系の英語の「目的」について考えます。

 

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 この講座は以前、ジャパンタイムズ社の英字紙 「週刊ST」に1年間、シリーズで掲載

された私の記事を、同社の了解を得て転載するものです。

 

 内容は「技術英語」の入門です。これを読み続けていただきますと、特に理系の学生や

社会人の方々には「理系の英語」は学びやすいことに気づかれると思います。

 

 これをきっかけに英文法に詳しくなるなど、英語力全体の増強にも役立ちます。、

ぜひ続けてお読みください。

 

 それでは始めましょう。初回は 「『理系の英語』とは: 一般英語との違い」 です。