第152話 チャンネル事件 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第152話 チャンネル事件

慢性的な寝不足が続いている。


スタジオへの移動の車中や

セットチェンジの待ち時間など

短い時間で熟睡する技が身についていた。


メイクさんは私の目の下のクマを

一生懸命コンシーラーで塗りつぶしてくれる。


「あー、眠い・・・」


現場でこの言葉を使うたび

ジイヤから嫌味を言われる。


「睡眠も仕事だと思えよ。体一つで稼いでるんだからな。」


「ん~。わかってるよぉ・・・。」


機嫌の悪い私には

ジイヤからの助言も耳障りでしかない。


私は不貞腐れてメイクルームのソファに横になり目を閉じた。


撮影の準備が出来たと呼ばれたので起き上がると

足元がふらついて転びそうになった。


ジイヤが

それ見た事かという顔で支えてくれる。

悔しいけれど限界だと感じた。


仕事を終えた私は

今日こそは家でゆっくりしようと決意して家路についた。


家に着いたのは夜の7時過ぎだった。


ヒカルは

鏡の前で眉毛を書いている。


髪型はすでにばっちりキマっていて

スプレーもかけて固めてある。


「もぉ出かける準備してるの? 今日はどこに行くの?」


私はヤレヤレと思いながらヒカルに声をかける。


「雄二が六本木に店だしたんだよ。一緒に行こうって言ってただろ?」


「あぁ・・・それって今日だったっけ。」


雄二君は

私とヒカルの共通の知り合いで

ホストを上がり六本木でショットバーを経営する事になっていた。


若いソープのお姉ちゃんがエースだったから

きっとお金の出所はその子だろうけど

新たな門出をお祝いしてあげようとヒカルと計画していたのだ。


すっかり忘れていた・・・。


「おまえ、すぐ出れるの?」


ヒカルが当然のようにそう聞くので

私はわざと疲れの色と浮かべて答えた。


「ごめん。ちょっと疲れが溜まってるの。

今日は家にいたいんだ。

悪いんだけどヒカル一人で行ってくれない?」


「じゃぁ、ちょっと顔だけ出して帰ってこようぜ。」


ヒカルはやや心配そうに私の顔を伺うけれど

予定を変更する気はないようだ。


「うーん・・・。ごめん、本当に疲れてるから私は行かない。」


私はヒカルに目もあわせずにそう言った。


「そっか、んじゃ明日でもいいか。」


「いや、ヒカルは行ってきていいよ! 今日オープンなんだしお花届けてあげなよ。」


「いや、花はもう店宛に贈ってあるからいいよ。

おまえと一緒に行きたいし、俺も今日は家にいるよ。」


私は本当はヒカルに行ってもらいたくて堪らないのだ。


一人でゆっくりと休みたいのだけど

さすがにそうは言えない。


ヒカルには何の悪気もないのはわかっていたし

強引に行く予定を強行しなかったのは

ヒカルなりの優しさだと感じたからだ。


リビングで

テレビをぼんやりと見ていると

ヒカルが気を利かせてコーヒーを入れてくれた。


こうやって家でのんびり過ごすのは久しぶりな気がする。


ヒカルは何かいろいろとしゃべっているけれど

私は相槌だけ打って聞き流している。


そのうちヒカルが

リモコンでテレビのチャンネルを変え始めた。


忙しなくチャンネルを飛びあるく事が私の気に障る。


「ちょっとチャンネル変えるのやめてくれない? 落ち着かないんだけど!」


私は少しきつい口調で言った。


「ごめん、 見たいとこあった?」


「いや、チャンネルはどこでもいいけどさ・・・ひっきりなしに変える事ないでしょ?」


全然リラックスできない・・・。

仕事して疲れて帰ってきても息抜きの時間さえない!

私はイライラを募らせる。


すると
ヒカルは全然悪びれずにこう言った。


「全部のチャンネルをざっと見て情報を多く取り入れたくてさ。」


それからまたヒカルは

全てのチャンネルの内容を短時間で要領を把握するには

この方法がいいんだぜ? 知ってる?

なんて能書きを垂れ始めたから

私は何も言わずに我慢していた方がマシだったと後悔する事になった。



疲れている時ってちょっとした事でも気に障るんですよね^^; イライラしちゃってダメですね。

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