第143話 お仕事の意識
エミリの話は想像以上のものだった。
牛乳パックを持参でやって来て
浣腸を懇願するおじいちゃんの話や
男のあそこにマチ針を指すと抜く時に血がピューと噴出すだとか
思わずゲェーと言ってしまいそうな話ばかりだ。
「それって、仕事とはいえきつくない? きついってか怖いよぉ!」
私は思わず顔をしかめて首を横に振る。
「慣れっすよ。」
エミリは平然とタバコをふかしている。
「私、SMクラブで働く前って普通のヘルスにいたの。
ヘルスってさぁ、生強要してくるやつとか、外で会いたがる客とか多いんだよね。
女の子同士もな~んか陰険でイジメとかあったし・・・。
仕事以外の事でストレス感じちゃっててね。
で、知り合いの紹介でSMクラブに行ってみたんだけどさ
そりゃーはじめの内は衝撃受けて
泣きながらプレイを覚えたよ。
でも開き直っちゃたってか
完全に吹っ切れちゃうとさ
あー、意外と自分には合ってるかもって思い始めたんだ。
あそこに来るお客さんって、なんつ~か・・・健気なんだよね。
ちゃんとルールがあってきちんとそれを守る人ばかりなの。
みんな日常ではお偉い人ばっかでさぁ
先生って呼ばれる職業の人が多いんだよ!
SMクラブはね、日常から完全に独立した異空間なんだ。
プレイ時間の90分は特別な時間なんだよね。
私はその空間を作るのが楽しいんだと思う。
店での私はキャサリンなんつ~恥ずかしい名前なんだけどさ。
キャサリンはエミリとは違うんだ。
だから私はキャサリン女王様としてローソクを垂らすし鞭を打つ。
私も客もプレイ中だけは全く別の人間になる。
つまりそれが女王様と奴隷っていう明確な役割なんだけどね。
完全に普段の自分とは別人になるでしょ?
だからこそ割り切ってなんでも出来るんだと思う。
今では奴隷をいたぶってる時が一番生きてるって実感が沸くもん!
まりもちゃんもそうでしょう?
ビデオ撮影の時とかはさ、AV女優まりもになりきってるんじゃないの?」
私は少し考え込んでしまった。
エミリの話はとても納得できるものだったけれど
私とは全く違うと感じていた。
「私はそんなんじゃないなぁ・・・。
エミリちゃんは、仕事で別の自分を作り上げてるのよね?
それで生きてるって実感がわくなんて・・・。よくわかんないけどそれってすごい事だと思うよ。
私はね、 撮影の時は自分がどこにもいなくなっちゃうのよ。
ただ時間が流れていくかんじでさぁ
男優のなすがまま・・・いつのまにか終わってる。
感情も何もなくなっちゃうし・・・
自分が何かを作り上げてる感覚なんていうのとは程遠いや・・・。」
私とエミリの仕事への意識は
あまりにも違うと私は自信を失くしそうだった。
「まりもちゃん、それじゃB級のAV女優にしかなれないよ~!
AV女優って男の妄想をお手伝いするのが仕事でしょ?
SMと一緒で頭使ってなんぼじゃないのぉ~? もったいなぃなぁ~。あはは」
エミリはそんな風に笑いかけてくるから
私は面食らってしまう。
「若いのに、エミリちゃんってただ者じゃないゎね!」
私はエミリのもっともらしい言い草にすっかり感心してしまった。
ヒカルもエミリもプロフェッショナルだったんだよね。私は中途半端でした^^;
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