第142話 SMクラブの女王様
ヒカルの仕事が終わる頃
ヒカルの車で歌舞伎町まで迎えに行く日が増えていた。
私は無免許だったけれど
家から歌舞伎町までは
ほぼ一本道の大通りで
朝方5時頃なので車通りは少なく
とくに問題もなく運転する事が出来た。
区役所通りに着くと
客待ちのタクシーに混ざって路駐する。
お店のすぐ下だと
ヒカルのお客さんに見つかるかもしれないので
いつも少し離れた場所に車を停める。
電話のベルが鳴った。
「俺~、もう着いてる?」
「うん。おつかれさま♪」
「そのへんにさ~、赤のアウディ停まってるの見えるか?」
私があたりを見回すと
2台前に赤のアウディが停まっているのが見える。
「うん、見えるけど、どうしたの?」
「それ、太一の彼女乗ってるからさ。
ちょっとミーティングで15分くらいかかるから話でもしてろよ。」
「うん。 わかった。」
「太一も今電話入れてるみたいだから、その後4人で飯食いいこうぜ。」
「はぁ~い♪」
私はヒカルとの電話を切って
アウディに向かった。
太一君の彼女は
SMクラブの女王様をしていると聞いていたから
どんな子なんだろうと興味があった。
車は全面フルスモークで
外側からは何も見えない。
私は運転席の窓ガラスをノックした。
「まりもです。ヒカルから話してるように言われたんだけど、聞いてる?」
「こんちわ~! 乗って!」
彼女が元気良く挨拶をして
私は助手席に乗り込んだ。
「エミリです~。」
エミリは赤いタンクトップに黒のマイクロミニスカートをはき
シャネルのチェーンベルトをしている。
髪はワンレンで私と同じくらいの長さだ。
身長こそ大きそうだけど
笑うと頬にえくぼが出来てあどけない顔をしている。
とても女王様には見えない。
それに年上のお姉さんを想像していたのに
年を聞いたら19歳と私の一つ下だった。
「エミリちゃんもよく迎えに来てるの?」
「私の仕事明けで時間が合う時は迎えに来てますよ。
今日もさっき仕事終わったばっかで、疲れてるんだけどね~。」
エミリが気だるそうにタバコの煙を吐く。
「まりもさん、ヒカル君と同棲してるんでしょ? 調子はどうっすか?」
ずいぶん物怖じしない子だなぁと私は少し驚く。
「調子は・・・けっこういいかな? あはっ」
私は愛想笑いをした。
「ヒカル君、優しい? ねぇねぇ、 あっちの方はどう?」
エミリはあっけらかんとそんな事を聞く。
悪気はなさそうなんだけど・・・。
私はさすがに言葉に詰まってしまい
なんと答えればいいのか
すぐには返事が出来なかった。
「太一君は?」
私が困って質問に質問で返すと
エミリはすぐに
「太一は早漏っすよぉ~。」
と即答したから私は吹き出してしまった。
おもしろい子だなぁ。
こういう子、悪くない。
私はエミリの事が気にいった。
「あ~、足痛いなぁ・・・。」
エミリがボソっと呟く。
「どうしたの?」
「今日、プレイ中に蹴っ飛ばしすぎちゃったの。」
「え? お客さんを?」
「そうそう、 プロとして恥ずかしいんだけどさぁ
ちょっと当たり所が悪くてね、ほら、ここ青くなってるっしょ?」
エミリが足を私に向けて見せる。
弁慶の泣き所がたしかに青あざになっていた。
「本当・・・。痛そうね・・・。」
私はこの可愛い顔をしている女の子が
四つんばいになっている男を思い切り蹴り上げているところを想像してみた。
うまくイメージ出来なかった。
「SMクラブの仕事ってどう? どんな事するの?」
エミリがズバズバ物を言うタイプだったので
私も遠慮せずに興味のある事を聞いてみる事にした。
当時、私の女友達はちょっといけないお仕事の女達ばかりでした。SMクラブってどんな所なんでしょうね?私が男だったら絶対行ってみたぃなぁ~。。。w
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