第078話 中絶 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第078話 中絶

中絶手術は10時から始まる。


9時になっても優弥は現れない。


昨日電話で手術の時間を伝えると
バイト明けに店にそのまま泊まり
9時には家に行くからと約束してくれた。


店に電話をしても誰も出ないし
念のため、優弥の家に電話をしてみても
お母さんが電話に出て不在を伝えられる。


不安な気持ちでいっぱいになりながら
優弥のポケベルを何度も鳴らす。


9時45分になり
お母さんにそろそろ行きましょうと言われる。


優弥に事故でもあったのではないかと
とても心配になり
後5分だけ待ってくれとお願いをして
ポケベルを鳴らし続ける。


結局
優弥とは連絡がつかないまま
私はお母さんに付き添われて
産婦人科へと向った。


お母さんに自分のポケベルを渡し
優弥から連絡が来るはずだから
必ずそこに電話してね。

とお願いをする。


お母さんは悲しそうに私を見て
わかったわ。と小さく頷く。


産婦人科につき
すぐに看護婦さんから注射を打たれる。


筋肉注射でとても痛い。


産婦人科特有の診察台の上で
大きく足を開かれ固定される。


「麻酔の注射をします。
1、2、3と数えていきますから
私の後に続いて、繰り返し数えてください。」
と先生から説明される。


仰々しい器具や太い注射器が
並べられているのが見える。


この後に及んで

悪あがきをするつもりはないけれど
私は怖くて不安でたまらなくなり
何より心細くて涙が溢れだす。


「泣くと血圧が上がるので我慢してくださいね。」
と看護婦さんから注意を受け
私にかまう事なく

先生が注射針を腕に突き刺す。


「1、2、3、」
先生は淡々と数字を数えだす。


私は先生に続いてその数字を繰り返す。


「1、2、3…」


4まで数えたところで急激に意識が遠のいていき
私はこのまま意識を失いたくないと強く思う。


朦朧と意識が混濁していく事に
出来る限りの抵抗を試みる。


頭の中でワーンワーンという低い音が鳴り
目が回りはじめる。


薄れゆく意識の中
「ゆうや…」
と孤独に呟いた。


aaa


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