第071話 「ごめんなさい」 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第071話 「ごめんなさい」

世界がバラバラになっていく様な恐怖を感じて
私はお母さんにしがみつく。


お母さんが

タオルの下の手首の様子をそっと見ると

血はもう流れ出さずに
たくさんの傷口に溜まって
止まりかけていた。


あんなにたくさん切ったのに
人間の体って頑丈に出来てるんだな。
と驚いてしまう。


手首を切って死ねるだなんて
とても信じられない。


お母さんはその手首を見て
嗚咽を漏らし

また号泣する。



「……お母さん」



「…あのね。」



「私…生理がこない。」



しゃくりあげ
短い感覚で息をしながら
私は打ち明けた。


涙は枯れてしまったのか
瞳から水分はもう出てこない。


胸のつかえが取れ

すっーっと力が抜けていく。


お母さんに抱きしめられるのは
どれくらいぶりだろう。


この半年
ただ抱きしめてほしい時が
何度もあった。


こうやって
お母さんの胸の中で

私は泣きたかったのかもしれない。



「心配しなくていいから。」



お母さんは泣きながら
背中を抱く手に力を込める。


汗ではりついた私の前髪を額からどけて
柔らかい手でおでこから頭にかけて
ゆっくりと何度も撫でてくれる。


子供の頃も
こんな風にしてもらった記憶がある。


手首の傷を診せに病院に行きましょう、

と言うお母さんに
大丈夫だから少し横にならせてくれと
お願いした。


ベットに寝かされ
タオルケットを優しくかけてもらい
お母さんは私の手を握ってくれている。


「お母さん、気持ち悪くて吐きそうだから
洗面器を置いておいて。」


さっきから口の中がすっぱくて
息を吸い込む度に吐き気がする。


喉はカラカラに渇いているのに
何も飲む気にはなれない。


そう言うとお母さんは
氷を持ってきてくれて
私の口の中に

ひとかけら入れてくれた。


氷の冷たさが心地よく
口の中が少しすっきりする。


「お母さん、ごめんなさい。」


小さくなった氷を噛み砕きながら
ほとんど開かなくなった目で
お母さんの目を見つめ

私はようやくきちんと謝る事が出来た。


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