第069話 自傷 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第069話 自傷

手首から

真っ赤な血が流れ出る。


ひとおもいに切ったつもりが
思ったよりも力が入っていなかったのか
血は噴出さずに
腕を伝ってポタポタと流れ落ちる程度だ。


左拳を握り締めて

太い血管を浮き出させる。


カッターナイフの先を

浮き上がる血管の皮膚に目がけて

沈め一気に引く。


不思議な事に
流れる血を見ながら
私はだんだん冷静になっていった。


手首に走る痛みと
滴り落ちる赤い血を見ながら
生きているんだと実感する。


傷ついていた心が

血を流しているように見える。


自分をいじめ続けた罰を
自分の肉体に与えるかのように
切り口にまたカッターナイフをあてて
同じ部分を切る。


死のうと思って切ったはずが
いつのまにか

自分を傷つけ

戒める事が目的となっていく。


無数の赤い線が

手首に刻まれていき

それを見ながら私は安心する。


傷口が浅く

血が固まってしまう赤い線は

すぐにまた切り刻む。


真っ赤な血の道筋が
なぜ私を安心させるのかは解らない。


傷口が腫れあがり
少しでも刃が当たると
激痛が走る。


ヒリヒリと焼けるような
痛みに自分が同化していく。


痛みだけが
強烈な現実味をおび
何よりも信用できると思う。


私は無心になって

自分を傷つけ続けた。


生暖かい血が

腕から肘に伝っていき

ピンクのカーペットの上に

染み込んでいく。


ただの現実逃避かもしれない。


もっともっとつらくて

とても立ち向えそうもない現実から

逃げるために自分を傷つけているだけだ。


そう気がついても

左手首を切る右手を止める事はできなかった。


sfa


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