食器を洗うスポンジを見ると、12年くらい前にお世話になったカウンセラーの先生を思い出します。
当時は元夫の転勤先の町に引っ越したばかりでした。元夫とは既に不仲になっていて、私は子育てを重荷に感じていました。
そんな時、先生の主催するワークショップに参加したのでした。
詳しい内容は覚えていないのですが、夫婦関係が良好になるためのセラピーだったと思います。
でも、それは私にとって違和感を感じるものでした。そして、本当は夫婦関係の修復ではなくて、終わらせたいと思っている自分に気付きました。
取材に来ていた市の広報担当者が参加者に感想を聞いていました。私も聞かれましたが、本当の気持ちは言えなくて、ワークを受けて良かったと噓の感想を伝えました。
場違いな所に来てしまった恥ずかしさと、自分の本当の気持ちを口に出せなかった悔しさがあったからなのか、涙が出そうになって、早々にその場から立ち去りました。
それから数日後、もうお会いすることはないと思っていた先生が連絡を下さって、お会いすることになったのでした。
確かどこかのカフェでお会いしたような記憶があります。当時私が抱えていた悩みを聞いてもらいました。
私が
「これからどんな辛い環境の中でも生きていけるように、強くて折れない心でいたいんです。」
と言った時、先生が
「折れない心よりも柔軟な心でいた方がいいと思いますよ。」
とアドバイスをくれました。
「心が緊張し過ぎて硬くなっていると、衝撃を受けた時に傷つきやすい。
柔らかい方が衝撃を受けた時に傷つきにくい。例えば、スポンジは柔らかくて、へこんでもまた元に戻るでしょ。
だから、私は柔軟な心でいた方が良いと思っています。」
当時の私は鬱状態で時々病院に通っていました。自分が世界でいちばん不幸だと思っていて、それを環境と人のせいにしていました。しかも酷くやさぐれていて、人の言葉が耳に入ってこない状態でした。
でも、私に寄り添ってくれた先生の優しさは心に染みました。
それから半年後にまた引っ越すことになり、先生とも疎遠になってしまいましたが、
スポンジを見ると時々先生のことを思い出します。
あの時、助けて下さったことは忘れられません。
おかげさまで今は幸せな人生を生きられています。ありがとうございました