車いすママと介護者と発達障害

車いすママと介護者と発達障害

車いすママは脳性麻痺です。
23歳の時、ひょんな事から東京へ出てきました。様々な人たちと出会い29歳のときには可愛い女の子を出産しました。その娘さんは軽度の発達障害があります。
そんな私たちを支えてくれる介護者さん達との日常を少しずつ書きたいと思っています。

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お久しぶりです。
2月はインフルエンザB型にかかったり、新たなプロジェクトを立ち上げる準備などで忙しくブログを放置してしまってました。
慌ただしく生活していたら、あっという間にカレンダーは3月になろうとしていました。娘さんも来年度からは、2年生で進級するのをとても楽しみにしてるようです。
「ちゃんと学校に行けるのか?イジメられないか?不登校にならないか……」と1年前にアレコレ心配していた事が馬鹿らしく思えるくらいに成長してくれました。とりあえず、毎日楽しく学校に行ってくれてるので車いすママは一安心です。


娘さんと車いすママの関係は、今のところ超ベタベタ親子ですが、生後5ヶ月くらいまでは正直あまり自分の子供ですが可愛いと思えませんでした。

車いすママは、妊娠中つわりも殆どなく9ヶ月まで特に異常もなく過ごしていました。ただ、脳性麻痺からくる筋肉の緊張がお腹が大きくなるのと比例して全身に強く出ました。本来なら、筋弛緩剤を飲んで筋肉の緊張を抑えるのですが妊娠中はそんな薬は使えません。
お腹の中で赤ちゃんが動くだけでも、全身に物凄い力が入り呼吸が出来ない状態になります。できるだけ深く呼吸をするように意識してお腹に力が入らないように、赤ちゃんには苦しくないように……と毎日が自分の体との戦いで「胎動を感じて母に近づく実感」など感じてる余裕は当時の車いすママにはありませんでした。
「ごめんね。窮屈な思いさせて。ママ頑張るからもう少しだけ頑張ってね」と、お腹の赤ちゃんの無事を祈るだけで精一杯でした。
出産予定日が近づいてきた妊娠9ヶ月の中頃、普通分娩は車いすママには難しいとの産婦人科の先生方の判断により、全身麻酔による帝王切開で出産する事になりました。
出産当時、苦しい思いをしながら9ヶ月の間一緒に頑張ってきたお腹の赤ちゃんにやっと会えると嬉しさでいっぱいでした。でも、なぜか寂しい気持ちがフッと湧いたのです。なんというか……自分だけの赤ちゃんではなくなるのではないか?見えない何かに引き離されるような漠然とした恐怖心にも似たような変な感覚がありました。
手術室に入り、全身麻酔をかけられたかと思ったら、あっという間に帝王切開で出産したそうです。意識が朦朧とする中、「元気な女の子だよ!」と付き添いのヘルパーさんに言われてホッとしたのを覚えています。
初めて、娘さんを抱っこした時は「この子が本当にお腹にいたのかな?」と普通分娩を経験しなかったせいか、実感があまりなく不思議な感覚でした。
そして、あんなに会いたかった我が子のはずなのに、抱っこしようとすると緊張して上手く身体がコントロールできなくて眺めてるばかりになってしまいます。そして、看護士さんやヘルパーさん達が自然に抱っこができるのをみると、とても惨めな気持ちになりました。
子供は本能でちゃんと育児ができる相手なのかを見極めてしまいます。たぶん「障害があり上手く抱っこも出来ない自分を拒絶されたらどうしよう」という自信の無さから被害妄想に走ってしまったのでしょう。退院してきてからも数ヶ月は「私がいなくてもこの子は大丈夫なのではないのか?」という思いは心の片隅にありました。
首がすわらないうちは抱き上げることができないので、スキンシップはあまり取れないしオムツも上手く替えてあげられない状態で「母親失格なのではないか」とばかり考えてしまい子供への接し方もよくわからなくなっていきました。
そんなある日、ヘルパーさんに買い物を頼んだため1時間くらい部屋には私と娘さん2人だけの状態になりました。すると突然、ミルクも飲んだしオムツも取り替えたばかりのはずなのに娘さんが泣き出したんです。そして、いつもとは何か違う泣き声のような気がした私は、無我夢中で娘さんを抱き抱えました。すると、ピタッと泣きやんでそのまま寝てしまいました。
自分の腕の中でスヤスヤ眠る我が子を見ているうちに涙が溢れてきました。今まで、自分の障害を理由に子供と距離をおこうとして、子供の気持ちを無視してきた事にそのとき気付いたのです。
決して寝心地の良い抱き方ではないはずなのに、安心しきって寝ている我が子はずっと母親を求めてたのではないかと。そして、この子にとって抱き心地の良さなんてさほどの問題ではなかったんだということを教えられました。
「そうだよね。あなたは窮屈なママのお腹にずっといたんだものね。多少抱っこが下手なのなんて関係なかったね。ごめんね、今まで寂しかったね」
車いすママは、その日ずっと娘さんを抱っこし続けました。
そして、その日から「多少、不恰好でも母親として恥じる事のない行動」を娘さんにはとり続けようと思ったのでした。

身体障害者は、子供の頃から結婚や出産・子育てなんて自分には出来ないと教えられて育ちます。
自分には母性・父性すら備わってないのかもとすら感じるのです。
でも、健常者であっても初めから母性や父性を完璧に持ってる人なんていないと思っています。
子供が生まれて初めて母親や父親になり、自分の中にある母性・父性に目覚めるのではないのではないかと車いすママは考えてます。たとえ、障害があろうともそれは変わりない本能なのではないかと思うのです。だだ、その機会が健常者の皆さんより遥かに少ないだけなのです。