「あー、ヤマダさん(私の名前を仮にヤマダとする。)うん、陣痛来てそうだし先生よんでくるね!あれから何年経ったんだっけー?経産婦さんだから進み早いし、点滴しなきゃかも。」

夜勤中の長男出産の時の看護師さんが、スッピンで話しかけてくる。

そういえば、あの時もこんな感じだったのかなー。日が上る前には出てくるか?と、分娩室で先生を待つ。

先生「うん、今日だね。あ、点滴始めましょうか。」

出産直前に抗生剤の点滴を早々開始。

針苦手な私、出産前に針にビビる…。

私「い、い、いい痛いですかね…?」

看護師「大丈夫よー、そんな針大きくないもーん、いくよー。」



痛い。痛い、いたい、いたーい!!!

私「…ぐふっ、あ、い、い、できました?」

看護師「大丈夫??」

私「は、はい。」

案の定痛い点滴から、分娩控え室に戻り旦那と少しの間待つが…陣痛が加速。

看護師さんに頼み、早めに分娩室で内診を受けたところ、もう本陣痛がガンガン来ている様子。

控え室で旦那と待つか、このまま分娩室で待つかと問われ動けそうもないのでこのまま残ることに。

定期的にくる陣痛の波。

そして、昨晩寝てない眠気。

更に、体重を気にして食べてなかった夕食、で、空腹。

日が完全に昇り、日勤の看護師さんが沢山出勤してくる。

看護師A「おー、ヤマダさん。もうすぐなんじゃない?!」

私「うぅ…ん。(半分白目、滝のような汗。)」

看護師B「経産婦さんだし、大丈夫!もうすぐよ!」



ぜんっぜん、もうすぐじゃねー!!

長いことこのままなんだけど、どうなの?!

もう汗か涙で前が見えないし、なんか意識も飛んでますけども?!



私「先生は、こないんですか…?」

ここで、助産師さん登場。

内診後、

助産師「うん、まだね。頑張ろう!」



えっ!?!?

パニックも、パニック。

二人目はスルリと産まれたし、今回も陣痛まではすんなりきたのに、何故?!

もうよくわからず、とりあえず白目のまま、遠退く意識の中で落ちる点滴の粒を見ていた。




予定日は6月5日。

「経産婦さんは早いからねー。上二人も予定日より早いんでしょう?じゃあ、三人目も早いかな。」

と、言われ続けた…が。

一向に本陣痛はこず!!!

毎日お腹に聞いてみるが、どうも出てくる気配無しで元気に動いておられる。

予定日にモニターをつけて内診を受けてはみたものの、

「まだ赤ちゃんが高いねー、まだ先かな。」

と言われる始末。

私「先生、困ります!!来月長男の手術控えてまして…。最長いつまでかかりますか??」

先生「うーん、42週までは待つよ!大丈夫、手術するのは病院なんだし、そのとき何かあっても赤ちゃんも一緒に見てもらえばいいじゃない。」

ま、そうなんすけどね、極論。

でもやっぱ、生後1か月たつかたたないかと、ね?違うじゃん?ね?


帰宅後もどーも府に落ちず、実母と、

「どーしたもんか。出てこんなー。出方がわからんかのー?」

と話す。


0時を過ぎ、40週と1日。

2時…ん?

3時…んんん?!

私「(夜勤中の旦那にLINE)来たかも。何時ごろ帰れる?」

5時前、病院に連絡し無事到着。


三人目と会えるまでの辛く長い(…本人は長く感じた)陣痛の始まりだった。


産休をいただいてから約二週間。

100均で収納に使えそうなものを家の棚などのサイズにあわせて大量買い。

仕事仕事と言い訳にして、せっかくの新築の家の収納スペースを放置していた私。

短い期間の“日中ひとり”の時間にせっせと物入れを片付けた。

夕方、4時半。

「吐きそう…」

さっきまでヤル気満々で作業していた手が動かない。

何度となく経験した二日酔いの時のもやっとした吐き気が、からだの中にたまっている雰囲気。

旦那「そーいや、長男の時、陣痛が来て吐いたっていってなかった?」(こいつは立ち会いなんかをする輩ではない。よって、そうそう私のお産には詳しくはない。なんなら次男の出産の時は単身赴任中でチャチャラ遊んでいたというたわけ者。)

「今さらつわりでもないけんが、来たかも…?!」

と、私もその気になってみた。

その日の夜もなんだかきついし、お腹も張るが…これやんっ!!!!というほどの有効な陣痛はこず…

その後もこの前駆陣痛が6月まで続くとは誰も思ってはいなかっただろう。

毎週水曜日と土曜日に波が来るコレ。

5月中に産みたい!と月末の夜、家族で夜のウォーキングをしたのは良い思い出。

私のために、文句も言わず長い坂を私の手を引いて歩いてくれた長男がとても頼もしかった。

この長男にまた手術を受けさせなければいけないと思うと、胸が痛い。

お腹の中でしっかり育ててあげられなかった自分が情けなく感じる。


どうかお腹の子は、健康で生まれてきますように。


長男の汗ばんだ手のひらを感じながら、それだけを願った。