ポール・オースターはかつて人からいいよと言われて読み始めた経緯がある。
もちろんニューヨーク3部作といわれる初期作品から読んだのだが、
正直あまりその良さがよくわからなかった。
ポール・オースターは一時期、日本のインテリ層に愛された作家でもあったので、
わからないとはなかなか言えない作家でもあった。
でも長編の「偶然の音楽」あたりから面白いと思いはじめ、
「リヴァイアサン」「ティンブクトゥ」や、
「ミスター・ヴァーティゴ」「幻影の書」とどんどん読みやすくなり、
すごくストーリーテラーだなと思うようになった。
初期の短編に作家としての力量を見抜いている人は、
本当に本読みだな思う。
最近、柴田元幸さんの新訳を見かけたので、
かつて読みにくいと思っていたのが、
少し違っているのかもしれないと思って、
「ガラスの街」を再読してみた。
ご存知の人には言うまでもないが、
この小説は探偵小説風の体裁で書かれているが、
全く探偵小説ではなく、
実験的な文学作品である。
まず作家である主人公が他の人物に成りすますことから始まり、、
さらに尾行する人物が書いたとされる著書とその世界観があり、
成りすました人物がポール・オースターその人であったり、
そのポール・オースターが書いていると語る、
セルバンテスと「ドン・キホーテ」の関係が主人公に影響を与え、
最後のほうにいきなり文中に書き手本人の意見が出てきたりするので、
読んでいる方も必然的に混乱するようになっている。
あとがきに柴田さんが書いている、
この作品の『透明感あふれる文章』とか、
『独特の非在感がある文章』とかあるので、
おそらく原文ではそういう文学性が高いのだろう。
再読しては見たが、
やはり後期の長編の方が読みやすいし面白いという、
これまでの思いが変わることはなかった。
でも、3部作の次の新訳が出たら、
また買って読むだろうなとは思う。