外来での一通りの検査を終え、病棟へ上がる。
脳神経外科の大部屋。
お年寄りが多い。




病衣に着替え、同意書へのサイン。
バタバタと事が進む。




事務の人などもみえ、高額医療費の認定証の説明を受ける。




こんなこと、こんなときに思いたくはないが、いったい、治療費はいくらになるんだろう…





処置をするので出てくださいと、ベッド周りのカーテンが閉められる。
そのすきに、保育園や主人の会社の健康保険の窓口に電話。




病室へ戻ると主人の辛そうなうめき声と荒い息づかい。



私の心拍数が一気に上がる。



尿管の管が、なかなか入らなかったようで、病室では断念。
カテーテルの手術の時にやることになる。



また、辛い思いしなきゃいけない…
心が弱気になる。



これからは絶対安静のようで、ベッドのまま移動。
カテーテルの手術が始まる。



脳腫瘍は血流が豊富で、それを開頭手術で取るとなると、大出血の可能性がある。
それを避けるため、前日にカテーテルで、腫瘍への血管を塞ぐらしい。



正常な血管まで塞いでしまうと、脳梗塞を起こす。



もう、ここまで来たら、私は祈るしかなかった。



手足が動かなくなっても、どうか記憶は、頭は普通の今まで通りでいてほしい…



カテーテルの部屋に入る。
扉が閉まったとたん、涙が出てくる。
主人のうめき声も聞こえる。



看護師さんに「ビックリしましたよね…」と、声をかけられる。
何も返事が出来なかった。

転院先に到着。
初めて来た病院。
古いが、とても大きな病院のよう。
駐車場も入り口もどこかよく分からない。




入り口を見つけ、とりあえず横付けし、車椅子を取りに走る。
主人と荷物を下ろし、私は車を移動させる。




荷物を抱えて中へ。
車椅子なんてひいたことがない。
何度も人とぶつかりそうになる。
そのたび、主人が足をパッと出し、車椅子を止めている。
こんなときでも、気を使わせてしまい、申し訳なく思う。





紹介状を渡し受付。
大きな病院は、やはり待ち時間も長い。
待っているのもしんどそうな主人。
そこに、ご両親も到着する。





とりあえず、外来を受診しないといけないとのこと。
車椅子に座るのも辛そうなので、ベッドに横にならせてもらう。





1時間は待っただろうな…
もっとかな。
やっと、先生がみえる。





若い男の先生だった。
転院前の病院では、部長の先生方の名前が上がっていたので、若い先生で大丈夫かな?と、少し不安になった。






昨日、先生方でカンファレンスもすぐ開いてくれたとのこと。
全員一致で、手術がいいと。
おそらく、血管芽腫だろうけど、最終結果は病理の結果。
手術の簡単な説明、それに向けての処置の説明。






ここからが嫌だ。
色んな可能性の話。






後遺症は10%程度。





死亡率は1%。





てかさ、脳腫瘍って、調べたら数万人に1人じゃん。
その数万の1の中の、血管芽腫は、ほんの数%。






死亡率の方が高いし…。
全然1%が有り難くないと思ってしまった。






改めて、手術を希望すること。
早い方がいいことを伝える。
それならと、看護師さんから沢山の説明が加わる。





入院の説明。
検査の説明。


泣きそうなのをこらえながら、主人に代わり沢山の説明書に目を遠し、同意書にサインをする。
主人は聞いてたのか聞いてなかったのか、ずっと目を閉じ横になっている。





とても辛そうだった。
よく、そんな身体で、入院当日まで仕事してたよ…
気が抜けたんだろうな…。






その後すぐ、血液検査、心電図、レントゲン。
そしてカテーテルの処置と、CTとMRI。
ナビゲーションだったかな?
なんだかバタバタと検査など始まった。


9時頃病室に着く。
すぐに入院費の支払いを済ませる。
いったん、ここの病院は退院。
転院先に向かうことになる。




荷物をまとめ、主人を車椅子へ。
ひとりでやるつもりだったが、看護師さんたちが手伝ってくれた。




玄関まで車をまわし、主人を乗せる。
転院先まで、約30分と言われていた。





車内の温度、臭い、揺れ。
色んなことに気を使って運転した。
ブレーキを踏むのも、なるべく滑らかに。






後部座席で目を閉じ、何も言わない主人。
私も何も言葉が出てこなかった。







不安しかない。
これから、どうなるんだろう…







「注射やだなー」






やっと口を開いた主人。







「手術じゃなくて、そっちかい!(笑)」





ちょっと笑顔になった。






注射大嫌い。
血も嫌い。





子どもかい!(笑)






いつもそう。
私は不安な時は、とことん底までマイナス思考になり、そこから這い上がる。





主人はいつも楽観的。
ひょうひょうとしてる。





この人と、結婚して良かったって思う瞬間。
私には、その思考は出来ないから。