星も月も何も無い、ただ暗い夜道を歩きながらタバコを一本口にする。火をつけると同時にいつも思い出してしまうのは、高校生の時の初恋の相手。
全ての初めてを捧げた人というのは、誰にとっても儚く特別な存在である。
ただ一つだけ誰とも共有できない感情が、自分の中には存在している。それはその人を傷つけたい、殺してしまいたいという感情。
よく映画や小説で殺したいほど愛しいという表現を耳にする。しかし、この感情はそれとは似ても似つかない感情である。いや、自分でもこの感情を理解しきれていないというのが、正しいのではないか。
決して殺人がしたいわけではない。むしろニュースでよく耳にする酷い事件を他の人と同じように、ありえない、気持ち悪いと感じ、いつの間にか忘れ去る。
周りを見渡すと無駄に目をキラキラさせた、新入生達。そしてお決まりの『桜も皆さんの入学を祝うかのように満開です』という校長の挨拶。左足には真っ白なギブス。散々な入学式だという感情とともに、少し心を躍らせてしまっていたのを今でも鮮明に覚えている。
寮に荷物を運び込み教室に入る。田舎の高校なので知らない顔はほとんどいない。
教室の名での話といえば、男は女の話、女はイケメン教師の話。そして自分はただ周りに話を合わせて愛想笑を振りまく。
そんな適当な高校生活を過ごす自分の時間は、人よりも早く何の事件も楽しみもなく刻々と過ぎていった。
そして、ちょうど自分のギブスも取れた夏休み。
地元の中学生たちが高校を見学しに来た。その中にはクラスメイトの付き合っていた女生徒がいた。この女生徒こそがのちにこの何とも説明できない殺意を自分に抱かせる張本人である。
どんな経緯で付き合ったのかは正直覚えてはいない。いや、それほど大事なことではない。
(つづく)