265年7日
明日はいよいよ収穫祭。
ずっと楽しみにしてた収穫祭。
朝からウキウキワクワクしてたのに…
そんな気持ちに水を差すような事件が起こったの…
最近は朝にファンホに会いに行くのを日課にしてた。
何回見てもファンホってかっこいいんだもん!
朝からファンホのかっこいい顔を見るとね、その日1日が楽しく過ごせるって気づいたんだ。
ファンホは大抵家を出てからお姉さんに会いに行くんだよねぇ。
ファンホってばお姉さん大好きなんだからさ(*´艸`*)
でも今日は知らない人の家にいたんだ。
でもまあ、ファンホの顔を見られればいいんだしと思って行ってみたんだ。
そしたらファンホが知らない女の人を連れて家から出てきた。
どこに行くのかな?って思ってついて行ってみた。
その女の人との用事が終わったら話しかけようって思って。
2人は城下通りをお城の方へ歩いていって、城門前から木造橋、そして練兵場通りへと歩いていく。
ちらっと見えたファンホの顔が、いつになく強ばっているように見えた。
そして、2人は幸運の塔へ………
そこが告白スポットだってことはジェニファーだって知ってる。
ファンホってば、ちょっと怖いみたいな顔をして女の人に告白してた。
女の人は「私も好きだった」みたいなこと言ってさ、そしたらファンホが「やったー」って嬉しそうに叫んでた。
ジェニファーはただそれを見ていた。



その後、女の人は練兵場通りの方へと歩いて行き、ファンホはジェニファーのいる街門広場の方へと歩いて来て、そこでようやくジェニファーがいることに気がついたようだった。
ファンホは気まずそうに、照れくさそうにジェニファーに話しかけてきた。
「ああっと…もしかして、見てた?」
…うん。
「はは、参ったなぁ。照れるねぇ」
…あの人と恋人になったの?
「うん。そういうことだね。綺麗な人だろ?」
…ファンホは嘘つきだね。
「…え?えっと…俺なんか言ったっけ?」
…ジェニファーが素敵な大人になったら結婚してくれるって…
「ん?…ああ、あれかぁ!いや、だってあれはさぁ、言葉の綾って言うか…。ジェニファーちゃんだって色んな人に言ってるわけでしょ?まさか本気なわけないもんね」
その瞬間、頭の後ろら辺がかっと熱くなって、気がついたらジェニファーはファンホの胸を思いっきり殴っていた。
「いたっ、ちょっ、なに?どうしたの?」
ファンホの動揺する声。
本当は顔を思いっきり殴ってやりたかったけど、手が届かなかったから仕方なく胸をグーパンチしてやったのだ。
何度も何度も…
でも、すぐにファンホに両手を取られた。
同級生の中では一番強くったって、相手は大人で、しかも新人とはいえ魔銃兵なんだ。
子供とは力の差が違う。
両手を押さえられて殴れなくなったから、ジェニファーはキッとファンホを睨んでやった。
ファンホはそれを見て息を呑んだ。
ジェニファーは誰にでも言ってないもん!
ファンホにしか言ってないもん!
本当にファンホと結婚してもいいと思ったから言ったんだもん!
それに、ジェニファーは来年になったら大人だもん!
2歳や3歳の子供じゃないもん!
ちゃんと結婚がどういうものか分かってて聞いたんだ!
なのに…なのに…子供だからってバカにして!
どうして怒っているのに涙が出てくるんだろう。
こんなに腹がたっているのに、涙が次から次へと出てくる。
本当は涙を拭いたいけど、ファンホに両手を押さえられてるから出来ない。
その事にも腹が立ってきて、思いっきり腕を動かしたら意外なほど簡単に両手が解放された。
ファンホは驚いて、取り押さえていた腕の力が抜けていたようだ。
だからジェニファーは思いっきりファンホの胸を押した。
ファンホと距離を取りたくて。
ファンホはたたらを踏んだが、倒れることはなく少し後ろへと下がっただけだったけど。
そして、何か言おうとしているファンホに向かって、ジェニファーは叫んだ。
ファンホの嘘つき!!
ファンホなんか大っ嫌い!!
そう言い捨てて、ジェニファーは走って街門広場から自宅へと帰った。

誰もいない家で思いっきり泣いた。
自分がどうして泣いているのか分からないけど、涙が出てくるからわんわんと声を出して泣いた。
涙の訳なんて考えたくもなかった。
今はただ、ファンホへの怒りだけが圧倒的に胸を占めていて、それ以外は考えたくなかった。
ようやく落ち着いた頃、ちょうど学校へ行く時間だったのでとぼとぼと歩いて学校へ。
本当は行きたくなかったけど、自分で今年はサボらないって決めたんだもんね。
ジェニファーは嘘つきにはならないんだから!
今日は農場管理官の先生が明日の収穫祭に出る料理について教えてくれた。
本当ならすごく興味のある授業だったのに、先生の言葉がみぎからひだりに素通りするみたいで、全然話が入ってこない。
いつもなら一番好きな給食の時間も心躍らなかった。
折角作ったペピの肉詰めも、味がイマイチ分からなかった。

学校が終わって、お友達が何人か話しかけてきたけど、全部適当に返事をして1人でプラプラ歩いていた。
どこというあてもない。
ただ、何となく1人になりたくて、ずっと俯いて歩いていた。
「ジェニーちゃん?」
聞き慣れた声が上から降ってきた。
あ、パパ。
「どうしたの?なんだか浮かない顔だよ?」
パパはジェニファーの顔をじーっと見たあと、一緒に虫探しに行こうと誘ってきた。
本当は1人でいたかったけど、断るのがめんどうだったからパパのあとをついて行った。
しばらく黙々と虫探しをして、途中でロドリゴさんがパパに会いに来たりした後、パパがおもむろに話しかけてきた。
「何かあったの?」
…なんで?
「目が真っ赤だよ。泣いちゃうくらい、悲しいことがあったの?」
別に悲しくない。
腹が立つだけ。
「怒ってるの?どうして?」
………。
「パパには言いたくないこと?」
そうじゃないけど…
「話してみたら楽になるかもよ?」
…そうかな?
あのね、今日ね、ファンホに恋人が出来たの。
「おおっ、ついにか!」
んん?
「ああ、ついに告白まで漕ぎ着けたのか!どっちだ?どっちから告白したんだ?」
え?あの、ファンホ…
「そうか、ファンホからか!やっぱりいざって時はちゃんと自分から行くんだなぁ。それでペギーちゃんがOKした、と」
は?なんでそこでペギーさん?
「はあ?いや、だって、ファンホとペギーちゃんが恋人に…なってないの?」
違うよ、ペギーさんじゃないよ。
「はあ?!じゃあ誰?!」
名前は知らないよ。
サンブラノさん家の人。
「サンブラノさん?…あっ、カタリーナさんの娘か!ファンホが何度か会いに行ってるの見たぞ!あの子かぁ〜」
なんかパパ、詳しすぎない?
「そりゃあファンホの仲人してたからなぁ。今は忙しくなっちゃって中々できてないけど」
じゃあペギーさんって…
「そう、だいぶ前からファンホにはペギーちゃんを紹介してたんだけどなぁ…。ああ、ペギーちゃんに悪いことしちゃったなぁ」
…パパのバカ。
「ええっ?!な、なんで?パパなんかした?ん?ええ?…そういえばなんでファンホに恋人が出来たことでジェニーちゃん怒ってるの?」
だって、約束したんだもん。
ファンホと。
「…何を?」
ジェニファーが素敵な大人になったら結婚してくれるって。
「…おっふ。おおぅ、意外とボディにくるねぇ…」
なのにさ、恋人作ってさ、それだけでも腹が立つのにさ、約束したでしょって言ったら「色んな人に言ってるんでしょ?本気じゃないでしょ?」って、ジェニファーをバカにした!
「ああ、ジェニーちゃん泣かないで。パパの所へおいで」
パパに打ち明けてたら、また涙が出てきて、そしたらパパが手を広げて「おいで」ってしてくれたから、そのあと腕の中に飛び込んだ。
そしたらパパはジェニファーをぎゅっと抱きしめてくれて、右手で頭をよしよしってしてくれて、左手で背中をずっとさすっててくれた。
もっとずっと小さい時から、ジェニファー泣くとパパいつもそうしてくれてした。
「そっか、ジェニーちゃんはファンホにちゃんと恋をしていたんだね。だからこんなに傷付いているんだね」
…ジェニファーは、怒ってるんだよ?
「うん、怒ってもいるんだろうけどね、傷ついてもいるんだと思うよ?だから涙が出ちゃうんだ」
…そうなの?
「ジェニーちゃんは何が一番腹が立ったの?ファンホに恋人が出来たこと?それとも、ファンホに本気にしてもらえなかったこと?」
…ジェニファーはね、ちゃんとファンホのこと好きなんだよ。
だからファンホに「好きな人いる?」って聞いたの。
そしたらいないって言うから、じゃあジェニファーが結婚してあげるって。
誰にでも言ってるわけじゃないよ?
ファンホにしか言ってない。
なのにさ、なのにファンホが…
「うん、そうだね。それはファンホが良くないね。ジェニーちゃんが本気じゃないって決めつけてた。だから、守らなくていい約束だって思ったんだね」
確かにジェニファーはまだ子供だけどさ、結婚の意味が分からないほど子供じゃないもん。
パパとママみたいにさ、ずっと仲良しの夫婦になれるって、ファンホのとならなれるって思ったんだもん!
「そうだね、ジェニーちゃんの気持ちはジェニーちゃんのものなのに、ファンホが勝手に“冗談だ”って決めていいものじゃないよね。でも、別にファンホの味方するわけじゃないけど、ファンホに悪気があった訳じゃないと思うんだよ。まあ、人の気持ちに疎い所がある子だけどさ、決して人をバカにするような子ではないから」
でも…
「ジェニーちゃんからしたら“バカにされた”って思うかもしれないけど、ファンホは不器用な子だからね。言葉を間違えてしまうこともあるんだよ」
でも…でも…
嫌だった。
あんな風に言われるのは嫌だった。
「うん、分かるよ。傷ついたよねぇ。痛かったねぇ。心がギュッてして、痛かったねぇ」
…うん、ギュッてした。
そしたら涙が出てきた。
「いいんだよ、そういう時は泣いていいんだ。いっくらでも泣いていいんだよ」
パパがそう言うから、少しだけ収まりかけてた涙がまたドバッて出てきて、ジェニファーはパパの胸にしがみついて泣いた。
その間パパはずっと、「痛かったねぇ。辛かったねぇ。頑張ったねぇ」って、優しく背中をさすってくれてた。
パパは時々、なんて言うか、愛が重くてウザい時もあるけど、基本的にすごく優しい人だ。
そして、ジェニファーのことをなんでも分かってくれる人だ。
ひとしきり泣いて、ようやく落ち着いた頃にパパはジェニファーにこう言った。
「ジェニーちゃんも本当は分かってるよね?ファンホが故意に人を傷つける子じゃないってこと。今頃きっとものすごく落ち込んでるはずだってこと。どうやってジェニーちゃんに謝ればいいか、きっとものすごーく悩んでるよ。ファンホはそういう子でしょ?だからジェニーちゃんだって好きになったんでしょ?」
「今すぐには許せないかもしれないけど、ファンホが謝りに来たら聞くだけ聞いてあげて欲しいんだ。許さなくってもいいんだよ。でも、謝ることだけはさせてあげて欲しいなってパパは思う。ジェニーちゃんにはそういう子であって欲しいなって、パパは思うんだよ」
パパの言うことは何となく分かる。
ジェニファーだって、ファンホがバカにしてるんじゃないってことは分かってる。
ただファンホは、ジェニファーのは気持ちを知らなかっただけなんだって。
でもな、でも、今ファンホの顔みたらまた泣くか怒るかしちゃうと思うから、しばらく会いたくないんだ。
パパはこれを恋だと言った。
自分自身でもこれは恋だと思う。
恋って、もっと楽しいものだと思ってた。
だって今朝までは楽しかったもの。
ファンホに会えただけでその日1日楽しい気持ちでいられたもの。
だけどそれだけじゃないって知った。
今日知っちゃった。
心が抉られるみたいに痛んで、今でも痛くて…
こんなのなら、知りたくなかった。
恋なんてしなければ良かった。
そんな風に思うのは間違いかなぁ?
だって、ジェニファーは毎日楽しく過ごしたいんだ。
楽しいことだけしていたいんだ。
だから、恋が楽しいだけのものじゃないなら、ジェニファーはもう恋なんてしなくたっていい。
友達と遊んでるだけなら、こんな思いしないで済む。
だから…だから…
シズニ様お願いです。
もうジェニファーは恋をしませんから、二度としませんから、だからファンホを見ても泣かないような、怒らないようなジェニファーにしてください。
ファンホのこと許してあげられるジェニファーにしてください。

【中の人】
………なんか、すいません💦
なんだか急にジェニーちゃんが失恋してしまいましてw
本当はもっと時間をかけて恋をしていくジェニーちゃんを書いていくつもりだったんですよ。
ファンホとペギーちゃんの仲人が全然上手くいかないので、こりゃ時間かかるぞ、と。
だったらじっくりかけんじゃねーの?って。
まさか、ペギーちゃんじゃない人とくっつくなんて思ってないもの!
こんなに早く恋人作るなんて計算外だもの!
本当にこの男は…
いつまでも恋人作らずにこちらを心配させたり、こちらがしばらく作らなくていいよと思った途端に恋人作ったり…
読めない男だ…
そもそもジェニーちゃんの失恋は、中の人の都合によるもので、NPCの時にずっと騎士になりたいってジェニーちゃんは言ってて、でも中の人は魔銃兵になりたいわけですよ。
その辻褄合わせに、魔銃兵に恋をさせたかったんです。
でも、最終的にはジェニーちゃんは山岳に嫁がせたいので、失恋させたい。
しかも魔銃で龍騎士になるまでは結婚したくない。
それで、魔銃兵に恋をする→失恋→忘れられずに自分も魔銃兵になる→失恋の痛手を引きずって恋人作らない…という流れを作りたかったんです。
なので、今回唐突にジェニーちゃんが大失恋することになってしまったんですw
本当はもっと盛り上げてから失恋させたかった🥺
事前にファンホ好き好き言ってないから、ジェニーちゃんが唐突にすごく悲しんでいる子になっちゃったんですよねぇ。
ジェニーちゃんがファンホに「好きな人いる?」って聞いたネタも、もっと後に持ってくるつもりで温存してたんですよ!
今回ジェニーちゃんが情緒不安定な子みたいに見えてるのは、そういう事情があったからだと言うことは分かって頂きたいです。
相手はNPCなので、こちらの思った通りには動いてくれない。
だから予定外のことが起こるのは仕方がないことなのに、すっかり油断してましたw
前回までと打って変わって、いつの間にやらジェニーちゃんが結構ガチ目の恋をしているのに違和感があるとは思いますが、出来れば書かれていない所でジェニーちゃんの恋が盛り上がっていたと思っていただければ幸いです🙇♀️

