魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」その14
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482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:21:57.89 ID:CkBATQ0gP
――魔界、開門都市、郊外の虹降りしきる丘
しゅわんっ!
青年商人「こ、ここは……。くっ」
勇者「転移酔いだ。深呼吸すれば治るさ」
青年商人「これは……移動の呪文ですか?」
勇者「そうだ」
青年商人「ここは……。なんて場所だろう!!」
勇者「このあたりでは、夜になるとなぜか虹が降るんだ
磁気がどうとか説明されたけれど、俺にはちょっと
難しくて判らなかったな」
青年商人「すごい……」
勇者「夢魔鶫っ」
夢魔鶫「御身の側に」
勇者「公女に云って酒の用意を頼んでくれないか。
場所はここで良いだろう」
夢魔鶫「仰せのままに」
青年商人「魔族……?」
勇者「使い魔っていうんだ。伝言に便利だよ」
483 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:26:20.97 ID:CkBATQ0gP
青年商人「ここはまさか」
勇者「うん、魔界だ」
青年商人「……」
勇者「さっきの言葉で判ったよ。だから連れてきた」
青年商人「あの人は」
勇者「魔族だ」
青年商人「やはり……」
勇者「……」
青年商人「空気の香りも、違うのですね」
勇者「ん。そうかもな。でも、港町には港町の、
都市には都市の匂いがあるだろう? そういうものだ」
青年商人「あの外壁は?」
勇者「あれが『開門都市』。……この間まで人間が占拠
していた街さ」
青年商人「ああ。司令官が逃げ帰って魔族に再統治されたという」
488 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:32:50.23 ID:CkBATQ0gP
勇者「そりゃ嘘だな。だいたいその話が本当なら
開門都市にいた人間の商人数千人は殺されたことになる」
青年商人「違うのですか?」
勇者「あの都市で今でも商売をしているよ」
青年商人「は?」
勇者「ゲート周辺の治安や周囲の荒野の関係で、
いまはちょっと人間界と連絡を取りずらいかもしれないが
『同盟』の商人だって、残ってる」
青年商人「本当ですかっ!?」
勇者「嘘は言わない」
青年商人「そんな……」
勇者「おいおい。あいつと話したんだろう?」
青年商人「あ……。ええ……」
勇者「じゃあ判ってたはずだ。あいつが何を夢見ていたか」
青年商人「勇者……」
勇者「あいつは、お前のこと買ってたぞ?」
青年商人「……っ」
勇者「人間界にも好敵手は居る、ってな」
491 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:41:56.11 ID:CkBATQ0gP
勇者「俺はあいつじゃないから、あいつのように
計画も語れないし損得勘定であんたを説得できそうもない。
でも、やっぱり、今あんたに降りられると困るし。
あー。なんだろうな。
この感じは……。
うん……寂しい。
ただの勇者に戻るのは――寂しいんだな」
青年商人「……」
勇者「だから、見せる。これが開門都市だ。
今この世界にある唯一の魔族と人間が共存する交流都市だ。
この都市の人口は約三万二千。湖の国の首都より大きい。
この都市は中立地帯として魔王にも承認されている。
自治都市として、都市議会が統治を行っているんだ。
議会のメンバーの1/3は人間だよ。
議長は人間の元軍人が務めている。議員には魔界の
有力氏族の子女も……」
火竜公女「わが君~ぃぃ」
勇者「入ってもらう形で……」
火竜公女「わが君、ご下命に応じましてただいま参上
いたしました。宴席であるとか。わが火竜一族の誇りに
賭けてお客人のおもてなしに無礼があっては成りませぬ故、
ただいま設営をっ!」
勇者「あー、んー。そのー。お手柔らかに」
494 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:46:46.44 ID:CkBATQ0gP
――魔界、開門都市、虹降りしきる丘、宴席
火竜公女「酌をしましょう、お客人」
青年商人「いえ、随分飲んだので」
火竜公女「なりませぬ」ぷいっ
勇者「ああ。飲んだ方がいいぞ。
火竜の酌を拒むと耳がかじられる。片耳だと不便だぞ」
青年商人「ええっ!? そんな無法なっ!!」
勇者「魔界だから仕方ない」 魔族娘「そ、その……黒騎士さまも、どうぞ……」
ぽたぽたぽた
青年商人「そ、そのくらいで。止めてくださいっ」
火竜公女「一人前の男子たるもの、杯の縁より酒が
こぼれるくらいでないと“注いだ”とは申しませぬ」
青年商人「なんて所なんだ!?」
勇者「おい、商人」
青年商人「なんですか、勇者」
496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:50:55.47 ID:CkBATQ0gP
勇者「どーだ」
青年商人「なにがどーだですか」
勇者(小声)「おっぱいだよ、おっぱいっ!」
青年商人「はぁぁ!?」
勇者「お前がおっぱいいっぱいの打ち上げパーティーを
企画しておくから、民衆に手を振ってばきゅーん☆って
しろって俺を魔界に送り出したんだろ!」
青年商人「あ。あははは! そうでしたっ。
あははっ。ひどいなぁ、わたしそんなこと
云ってましたよね。若気の至りとは言え
我ながら呆れる悪辣さだっ」
勇者「どうよ、これ」ちらっ
青年商人「ええ、結構なお点前です」こくり
勇者「……あははっ」
青年商人「あはははっ。
ああ、おかしい。こんなに笑ったのは久しぶりです」
勇者「酒も旨いか」
青年商人「ええ。わたしは商人ですからね。
色んな国の酒を飲む。酒にはその国がでるような気がしますね」
勇者「おい、商人」
青年商人「なんですか、勇者」
499 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 19:54:50.66 ID:CkBATQ0gP
勇者「虹が、すごいなぁ!」 ごろん
青年商人「確かに」 ごろんっ
火竜公女「まぁ、殿方は子供ですね」
魔族娘「でも、ほんとうに……風が気持ちいいです」
青年商人「虹はすごいですが、それで交渉の妥協は
しませんよ? 勇者殿」にこっ
勇者「あいつが云ってたぞ。
“商人たちはその『許可』を求める”ってな。
使用許可、通行許可。新しい土地は新しい市場でもあり
新しい物産の供給源でもある。そう言った場所と
取引をする」
青年商人「ええ」
勇者「あの都市のそれはどうだ?」
青年商人「それは、そうですね。まさに……
“中央大陸の都市の金全て。
いや、既知世界の全てよりも金になる”」
勇者「売ろう」
青年商人「良いのですか?」
500 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 20:00:45.18 ID:CkBATQ0gP
勇者「かまわない」
青年商人「対価は何を求めるんです?」
勇者「俺はあいつじゃないから、何が適当な対価なんて
判らないんだよな。何が釣り合って、
何が釣り合わないかなんて、今までろくに考えないで生きてきた」
青年商人「……」
勇者「だから、対価なんて困っちまうんだけど。
それでも、となるとさ。
……商人は、何でも損と得に切り分けて
考えるのだろう?」
青年商人「ええ」
勇者「なんて云うのかな。
みんなは、そんな商人を強突張りだとか
利益にしか関心のない化け物のように云うけれど、
あいつを見ていると、
そんなことはないのじゃないかと、俺は思うんだ」
青年商人「……」
勇者「誰よりも利に聡く、誰よりも真剣に損得勘定で
生きている商人は、もしかしたら世界で一番最初に
損得では割り切れないものを見つけるかもしれない」
502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 20:04:08.42 ID:CkBATQ0gP
青年商人「勇者……」
勇者「もしかしたらもっとちゃんとした
対価を求めるべきかもしれない。
あとであいつに殺されるかもなぁ。
でも、俺に『それ』を見せてくれ。それが対価だ」
青年商人「はははっ。なんでしょうね、この」
勇者「あいつと俺には、あんたの見つけるそれが必要だと思うんだ」
青年商人「うん、そうだ。このばかばかしい気持ちはっ!
ああ、愉快だ。わたしはどうやらとっても愉快ですよ」
勇者「……」
青年商人「良いでしょう、確かにその契約をお受けしました。
わたし自らが陣頭に立ち『同盟』を率いて
必ずや『それ』を仕入れてご覧に入れましょうっ」
勇者「頼む」
青年商人「その暁には」
勇者「?」
青年商人「あなたとあの方の関係を聞いても、
きっと退かずにに済むでしょう。なぁに、不利な時期に
戦いを挑むほど、この商人は愚かではありません」
537 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:06:26.36 ID:CkBATQ0gP
――冬越し村、屋敷の馬小屋
馬 ぶるるるんっ!
女騎士「よしよし、いいこだぞ。今拭いてやるからな」
勇者「やっぱり騎士だけあって、馬の扱いは上手いなぁ」
女騎士「何云ってるんだ。勇者だって乗れないと困るぞ」
勇者「自分で走った方が早いし……」
女騎士「見栄えの問題だ」
勇者「わかっけど。よし、林檎やる」
馬 がぶっ!
勇者「な、なにをするおんどれー!?」
女騎士「おい、大人げないな」
勇者「こいつがぶってやったんだぞ!?」
女騎士「お前、怒らせたんだろ?」
勇者「ちっげーよ。林檎食べる? ヘイ君可愛いねって」
馬 がぶっ!
勇者「ちょ、まてやこら。しまいにゃ卸すぞっ!」
543 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:13:32.13 ID:CkBATQ0gP
――。
――――。
女騎士「ったく、馬と喧嘩するやつがあるか」
勇者「だって……」
女騎士「おまけに駆けっこで負かすやつがあるか。
ほれみろ、お前の馬だって自信喪失だぞ」
勇者「面目ない」
馬 しょんぼり。
女騎士「まぁ、いい。馬の世話はやってやる」
勇者「む……」
女騎士「いくら勇者でも、馬で旅することもあるだろう?
何かのパレードに参加する事にでもなったら、
馬に乗れないじゃ格好はつかないぞ」
勇者「それはそうだけどさ」
ごっしごっし、ごしごし
女騎士「~♪」
勇者「やっぱ、戦いよりも平和のが良いよな」
女騎士「それは当たり前だ」
勇者「当たり前なのに、そうならんのは何故かなぁ」
女騎士「それは判らない。わたしは馬鹿だからなっ」ふふん
548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:19:28.53 ID:CkBATQ0gP
勇者「魔王と一緒にいると傷つくものが
女騎士と一緒だと癒されるよ」
女騎士「どういう意味だ?」
勇者「そのまま馬鹿でいて欲しい」
女騎士「喧嘩を売ってるのか?」
勇者「ちげー、ちげーですよ」
女騎士「まったく、勇者と居るとふざけてばっかりだ」
勇者「それがいいんじゃないか」
女騎士「へ?」
勇者「そういうのが良いんじゃないか。判って無いな」
女騎士「……」
勇者「俺はそうやって女騎士とふざけてるの好きだぞ?」
女騎士「え、あ……その」
勇者「?」
女騎士「……ありがとう」
勇者「……うわ、むず痒っ。普通に返すなよ」ぼりぼり
551 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:24:54.29 ID:CkBATQ0gP
女騎士「どうしたんだ?」
勇者「いや、髪が。ちょっと目に刺さって」
女騎士「ああ、長くなってきたもんな」
勇者「ちょっと切ってくれないか?」
女騎士「えっ。いいのかっ?」
勇者「うん。なんで?」
女騎士「あ。いや……。なんでもない。
何でもないけれど、切るのはやめておこう」
勇者「なんでだよ」
女騎士「なんでもない。……そうだ。
額環を作ってやるよ。それで髪をまとめれば、伸びても
目に刺さらないぞ」
勇者「面倒くさそうだぞ」
女騎士「いいや、似合うよ。ちょっと都会風になって
もてるかもしれないぞ? 勇者」
勇者「お! そうか? 格好良くなるのかっ」
女騎士「うむ、似合うものを作ってやろう!」
554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:33:13.07 ID:CkBATQ0gP
女騎士 すっ
勇者「な、なんだよっ」
女騎士「いや、髪の毛を確かめているだけだ。
額環は、碧色が良いな。きっと似合う」
勇者「そかな」
女騎士「うん。わたしは切らないが、
それくらいなら許してくれるだろう?」
勇者「うーん。切った方が絶対早いんだけどな」
勇者「……」
女騎士「……」
女騎士「なぁ、勇者」
勇者「ん?」
女騎士「勇者は、魔王の物なんだろう?」
勇者「え。あ。……うん。そうだ。所有契約だ」
女騎士「そうか……」
勇者「まぁ、いろいろあったんだよ。そこに至るには」
557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:38:06.50 ID:CkBATQ0gP
女騎士「魔王は勇者の物なのか?」
勇者「うん、まぁ。成り行き上、一応」
女騎士「じゃ、魔王がもし酷いことになったら保護しないとな」
勇者「そりゃするよ。でも俺は勇者だろう?
たいていのやつが困ってたら保護するんだぜ?」
女騎士「ああ、それはよく判ってるよ」
勇者「なんだかなぁ、心臓にストレスがキリキリと」
女騎士「そうなのか?」
勇者「そうなんだ。俺の勘は根拠はないけど良く当たる」
女騎士「勘じゃなくて、もうちょっと空気を
読む能力を身につけてくれると周囲が助かるんだがな」
勇者「なんだ、それは?」
女騎士「いや、気にしないでくれ。こっちの愚痴だ」
559 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:43:34.04 ID:CkBATQ0gP
女騎士「でも、やっぱり一方的なのは悔しいな」
勇者「?」
女騎士「わたしも勇者に何かあげたいのだ」
勇者「額環くれるんだろう? もてもての」
女騎士「うん、貰ってくれるか?」
勇者「もちもち。もてもてアイテムか~。
女騎士に貰えるものなら何でも貰うぜ?」
女騎士「そうか。……そう言ってくれると嬉しい」にこり
勇者「大げさだな-。女騎士らしくもない」
女騎士「勇者」
ザッ
勇者「なんだよ、女騎士っ」
女騎士「黙って立ってろ」
勇者「何でいきなり跪くんだ?」
562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:51:36.08 ID:CkBATQ0gP
女騎士「我は……
湖畔の国に精霊の恩寵を受け、生を賜りし光のしもべ。
勇者と共に旅をした長きにわたるこの剣を
女騎士の全てと共に勇者に捧げる」
勇者「……」
女騎士「我が剣、我が力、我が身体。
我が魂からの忠節と純潔は、勇者のもの。
勇者こそ我が魂の主人にして、我が希望の宿り主」
勇者「まてよ、女騎士っ」
女騎士「またない。勇者、この剣は勇者のもの」
勇者「立てって」
女騎士「立たない。勇者が貰ってくれるまで、動かない」
勇者「なに子供みたいな事言ってるんだよ」
女騎士「子供になって勇者に貰って貰えるならかまわない」
570 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 22:58:46.33 ID:CkBATQ0gP
女騎士「勇者が魔王の持ち物なのは、判った。
仕方ない。……わたしが、遅かった」
勇者「……」
女騎士「魔王はすごい。魔王は賢くて、懐が広くて
夢があって、ずぅっと遠くを見てる」
勇者「……」
女騎士「だから、わたしは勇者のことを欲しがったりはしない。
それは魔王のものだから、仕方ないと云えば、仕方ない。
もちろんその……魔王がいらなかったり隙があれば
遠慮なんかするつもりはないけれど」
女騎士「でも、だからといって、わたしはわたしのものだ。
せめて、わたしを勇者にあげたいんだ。
騎士に生まれて、今まで剣を捧げてこなかったわたしは、
騎士にしたって半端者だった。
剣を捧げるなら、勇者が良い。
始めに勇者に剣を捧げて、以後、主を変えない。
わたしは、そんな騎士でいたい」
勇者「……良いのかよ、こんなので。
こんな思いつきみたいな場所で。
そ、それってすげー大事な事じゃないのかよ」
574 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 23:03:59.22 ID:CkBATQ0gP
女騎士「どこだって、何時だって同じ事だ。
わたしだって何かがしたいんだ。
勇者たちが未来へ出掛けるなら、
わたしの居場所だってその近くに欲しい。
もう…… もう、おいて行かれるのはいやだ」
勇者「……悪かった」
女騎士「剣を取って、我が主。大丈夫、わたしはあなたに叛かない」
勇者「……」こくり
すっ
女騎士「よし。……反対にして、返して」
勇者「うん」
びゅんっ! びゅんびゅんびゅっ!! しゃきんっ!
女騎士「これで、わたしの剣は勇者のものだ。
わたしの身も心も、勇者に捧げたって訳だ。
うん、なんだかそこはかとなく充実感があるなっ!」
579 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 23:11:22.35 ID:CkBATQ0gP
勇者 ぞくっ
女騎士「どうした? 勇者」
勇者「いや、なんか寒気がした。あのさ、あのさ。女騎士」
女騎士「ん?」
勇者「その、返品とかって出来るのか? 契約解除とか」
女騎士「出来ると思うのか」にこり
勇者「……」
女騎士「大丈夫だ。その悪寒の件はわたしが対処する。
わたしたちは親友になったんだ」
勇者(親友~!?)
女騎士「ちゃんと正面から話せば判ってくれるはずだ」
勇者(ちょ、なんでそう力勝負ばっかりっ!)
女騎士「勇者のことは、わたしが守るッ」
勇者「いや、まじほんと」
女騎士「ん?」
勇者「俺から云いますんで、一つ勘弁して」
593 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 23:20:30.64 ID:CkBATQ0gP
――冬越しの村、湖畔修道院
修道士「たっ! 大変だ!」
修道士「どうしたっていうんだっ!?」
修道士「大変だ、恐ろしいことが起きたっ。
も、もうだめかもしれないっ!!」
修道士「水を飲め、説明するんだ」
修道士「それどころじゃないっ。修道院長は?
女騎士様を呼べ、いや、探せっ! 一刻を争う!
早く女騎士様を捜すんだ!!」
――湾岸都市、商業区、大きな商業会館執務室
辣腕会計士「急報です、委員っ!」
青年商人「何ですか、慌ただしい」
辣腕会計士「一大事です。こ、これを……っ
とにかく、この報告書を……」
ガサリ
青年商人「……まっ、まさかっ!? 選挙の影響なのか。
迂闊、迂闊だった。この展開を見落とすとはってて。
――確認を、至急確認の船を出してくださいっ!!」
598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 23:25:50.51 ID:CkBATQ0gP
――冬の国、冬の宮殿、謁見の間
ガタンッ!
冬寂王「なんだとっ!?」
使者「お聞こえになりませんでしたかな?
ではもう一度繰り返させて頂きます」
冬寂王「……」ぎりぎり
使者「冬の国にて学者を開きし『紅の学士』を名乗りしもの
彼のものについては、以下のような疑惑有り。
ひとつ。彼のものが湖畔修道会を利用して、罪なき
農民に広めている馬鈴薯なる作物は、魔族によって
栽培される悪魔の実である。
ひとつ。彼のものが進める農法、指導および肥料の
方法は精霊の教えたもうたものにあらず。そこには
邪なる異界の関与が認めらるる。
ひとつ。彼のものがその学校で教えている学問の数々。
これらは教会の権威をないがしろにし、侮蔑するものである。
ひとつ。聖王都の神学院は、彼のものが名乗るような
『紅の学士』なるものを輩出した記録はない。
告発と以上のような疑惑に基づき、
『紅の学士』なるものは異端であると疑いが十分である。
即刻身柄を引き渡すべし。
中央聖光教会 異端審問司教。
――この通り、署名もそろっております」
604 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 23:30:02.52 ID:CkBATQ0gP
冬寂王「そ、それは……間違いないのか、使者殿」
使者「言葉を控えた方がよろしかろう! 冬寂王どの。
それが真実かどうかは、異端審問の場で審議が為されること。
もっとも光の精霊の教えを受けたる司教どのが
千に一つ、万に一つも過つことがないことなど
敬虔なる信徒である冬寂王ももちろんお解りだろうが」
冬寂王「……」
執事「こ、このような……」
使者「もちろん聡明なる司教殿は、こうも仰せられた。
おそらく冬の国、および湖畔修道会は、この異端の学士の
奸計に巻き込まれた、いわば被害者であろうと」
冬寂王「っ!」 ぎりっ
執事「……」
冬寂王(……中央の妬心か。それほどまでにっ。
それほどまでに南部諸王国が首輪から外れるのを
嫌われるのかっ。聖王国よっ、聖教会よっ!
南部諸王国が貧しさを脱し、自らの意志を持つことを
そこまで憎まれるかっ。このような手まで使って
足止めを狙うほどにっ)
606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 23:33:46.85 ID:CkBATQ0gP
使者「ご返答は如何に、冬寂王」
冬寂王「……」
執事「……」
使者「この世界において、教会に逆らうと云うことの意味は
わかっているでしょうな? 若き王よ。
信仰は光、教会は世界。それに背くと云うことは、
背教の輩、すなわち人類全てを敵に回すと云うことですぞ」
冬寂王「……く」
使者「大主教は、『破門』と云う言葉は口に出されませんでした。
ただ、“同じ信徒として異端に与するものが居たことは
非常に悲しい”とだけおっしゃった。
そのご厚情を無にするおつもりか、冬寂王っ」
冬寂王「そ、それは……」
執事「若……」
冬寂王「使者殿の、お言葉……痛み……いる……」
使者「では?」
冬寂王「軍を……出そう。しかし、冬越し村は、遠い。
時間を頂くことに……なる」
使者「よいでしょう。ただしお気をつけて、冬寂王。
もし、紅の学士を取り逃がすことなどあらば
あなたもこの国も湖畔教会も、背教のそしりを
免れないでしょうからなっ!」
