振付師・宮本賢二が語る過去の教え子たち「高橋大輔は何をやらせても格好良い」 | 浅田真央さん&浅田舞さん 応援ブログ

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振付師・宮本賢二が語る過去の教え子たち
「高橋大輔は何をやらせても格好良い」  
(2015年9月17日(木))

 フィギュアスケートにおける振り付けは、選手自身の個性を表現する方法であると同時に、結果にも大きな影響を及ぼす。それがスケーターの特長にマッチしたものであれば、新たな魅力を引き出すことにつながる一方、その逆もまたありうる。宮本賢二はこれまで数々のプログラムを手掛けてきた振付師だ。高橋大輔さんの『eye』や鈴木明子さんの『リバーダンス』といった五輪プログラム(共にバンクーバー)を担当して名を上げると、その後も多くの名作を生み出してきた。いまや日本を代表する振付師の宮本に、創造力の源やこれまで指導した選手などについて語ってもらった。



衣装だけではなく、爪の色まで指定

――今季も数多くの振り付けを担当していますが、インスピレーションを蓄積するために普段からやっていることはありますか?


 音楽をたくさん聴きますし、普段生活している中で、人間がする自然な動きや歩く様子なんかを注意深く見ています。よく行っているのは動物園や水族館ですね。そういう生き物の動きを見て覚えるようにはしています。

――具体的に生物のどういう動きを参考にしているのですか?

 鳥が羽ばたく動きなんかでも、小鳥と大きな鳥では違います。あとは、葉っぱが揺れるところ、旗が揺らめくところとか。小さな波や大きな波など、そういう自然なものをいろいろ見て、動きを蓄えておくようにしています。

――実際にリンクで滑る選手を見て振り付けを考えていくそうですが、どういう部分に着目しているのですか?

 選手のスケーティングですね。まず、基本になるスケーティングを見させてもらって、この選手のどこがきれいなのか、どこがあまり良くない部分なのかというのを見ています。あとは、表情であったり髪型であったり、あるいは普段の手の動きとかを見て、自然に出ている動きを取り入れるようにしています。

――現役時代にアイスダンスをやられていましたが、その経験というのは今に生きているのですか?

 そうですね。アイスダンスは一人で滑るわけではなく、横にパートナーがいます。そのパートナーをどういうふうに持っていくのか、その人の周りをどう滑るか。ただ単に自己満足で滑らないようにしていました。今、振り付けをするときにも、音楽を表現して周りとの一体感を出せるようにという意識を持てているので、そういうところがアイスダンスをやっていて良かったなと感じています。

――衣装に対して意見は出しますか?

 僕が振り付けを担当した選手だけ、衣装を作ってくれる専属の方がいるんです。振り付けのイメージだったり、この曲だと青の方が似合うとか、赤の方が似合うとかというのを衣装さんに伝えて、デザインをしてもらい、でき上がりまで関わっています。

――選手にも基本こういう衣装を着てという感じでオファーを出す?

 はい。衣装だけではなく、髪型も髪飾りやお団子の位置について言いますし、眉毛の書き方や爪の色など全部指定します。すごく切ない曲や悲しい曲で、情景は秋というときにピンクの衣装を着られても困りますしね(笑)。

若手を指導する楽しさと難しさ

――若手選手の振り付けも数多く手掛けていますが、何か理由はあるのですか?


 いや、基本は依頼が来て、スケジュールが空いていたので振り付けをさせてもらっているという感じです。あとは、その選手が毎日練習をしっかりしているかどうかで判断しています。

――依頼を断ることも?

 いっぱいありますね。基準として、週6日以上練習しない人には振り付けをしません。あとは体脂肪だとかも見ています。どんなに上手でも、一流じゃない人は振り付けはしないです。やはり一生懸命練習している選手が一流だと思うので。

――今まで高橋大輔さんや鈴木明子さんのような成熟したスケーターにも振り付けていました。そういう選手に対して振り付けを行うときと、まだ一般的に表現力が未熟なノービスやジュニアの選手に振り付ける場合とで、それぞれどのような点に注意していますか?

 成熟した選手はより美しく、より格好良く見えるように振り付けていますね。小さい子には分かりやすく、どうやったら大きく見えるかなど、体の動かし方を丁寧に教えるようにしています。

――若い選手を指導するときの楽しさはどういうところに感じますか?

 やっぱり小さい子は大きく変わってくれますよね。今までやってきたことが少ない分、何か新しいことを入れるとすごく楽しそうに練習してくれるし、見た目も非常に変わる。年齢を重ねると、いろいろな曲を踊ってきた経験もあり、そこで「新しいものを」と言ったときに、これまでの努力があるので変わったりもするのですが、小さい子は特に変わるので楽しいです。

――逆に難しいなと思うところはありますか?

「君の右手はそっちか」とかいうところですね(笑)。一生懸命「右手を上げろ」と言っているのに、左手を上げてしまうところとか。真面目にやっているんですけど、考えと動きが合わないときとかは難しいなと思います。僕はミラーのイメージで動いているので、右手を動かしてもらいたいときには左手を動かすようにするんですけど……。こっち(選手と同じ方向)を向いてやらないといけないとか、そういうのがちょっと大変ですね。バレエをやっている人は分かってくれるんですけど。

――この子は覚えが早いなという選手はいましたか?

 若い子だと宮原知子ちゃん(関大中・高スケート部)や永井優香ちゃん(駒場学園高)、安原綾菜ちゃん(関西大学)や島田高志郎くん(就実学園)なんかは早かったですね。

――早い遅いは、吸収力の違いなんかがあるのでしょうか?

 そうでしょうね。やはり自分のイメージしている形と、目の前でやっている先生の形をパッとイメージに直すことができるんだと思います。あとは、やろうとする意識が強いんでしょうね。

あえて背伸びをさせる

――今季新たに振り付けを担当した永井選手や山本草太選手(邦和スポーツランド)には、どういった印象を抱きましたか?


 永井優香ちゃんはとにかく一生懸命やる選手ですね。いつもはふわっとしている雰囲気なんですけど、いざ氷上に立つと鋭い目線で観察するというか、突き詰めるというか。すごい努力家なんだなと思いました。

 山本草太くんは(ショートプログラムで)『ポエタ』をやったんですけど、僕が見てきれいな形や格好良い形を指摘したときに、鏡でしっかり自分で見て、それをもう少し角度を変えたりしていました。そういう意味では、2人とも努力家だなと思いましたね。才能なんて、みんな持ってるんですよ。それを努力で伸ばすかの問題で、やっぱりこの子たちは才能もあって努力もするんだなという印象はあります。

――一咋シーズンから本郷理華選手(邦和スポーツランド)の振り付けもされています。本郷選手は昨季、急成長を遂げた印象がありますが、宮本さんは変わったと感じる部分はありますか?

 ちょっと背が高いじゃないですか(166センチ)。普段は分からないですけど、演技しているときはちょっと肩が上がるんですよね。それを彼女も聞くのが嫌だろうなと思うくらいずっと言っていたので、最近は肩がシュッと下りて、首も長く見せられるようになったかなと。手足の長いあのスタイルで踊っているし、より素晴らしくなったと思います。

――若手の選手を振り付ける際、彼らの武器を最大限生かすようなプログラムを作るのか、それとも少し背伸びをさせるプログラムを作るのでしょうか?

 少しだけ背伸びをさせるようにします。その子に合ったものだけをすると、1年間それをやるので、やっぱり慣れてしまうんですよね。慣れてしまうと動きは小さくなるし、見ていて感じるものが少なくなる。だからちょっとだけ難しくて、しんどい中でやっていたら、試合のころには、それがぴったりはまるようになるというような振り付けをしています。

――最初は苦労しそうですね。

 そう。でもその必死に動いている姿が素晴らしく見えるんですよ。だから慣れてしまうとちょっと良くないので、あえて背伸びをさせています。そしてその結果、選手は全員伸びています。

最高のプログラムができるまで

――トップの成熟した選手に振り付けをするときの楽しさと難しさは、それぞれどういった点が挙げられますか?


 例えば、荒川静香や高橋大輔といった人たちは、僕が思っている以上に大きく動くんですよね。だから僕が1を言うと10の動きをしてくれるし、「そんな動きができるの?」という動きを自然とやってくれるので、振り付けがどんどん広がるというか。僕がシュッと一本描いたものに羽を生やすように、葉っぱを生やすように、花を咲かすように大きくしてくれるんです。やっぱりそれが素晴らしいなって思います。


 難しいなと思うのは、こっちにシュッて線を描いたのに、あっち側で花を咲かせてしまったりすることですね。それは選手自身のこだわりであったりするんです。でも、それをそのまま振り付けに生かしてしまうと今までと変わりがないから、「これはやめて、こっち側にやりましょうよ」というのがなかなか難しいです。癖であったりもしますから。

――かつての高橋さんのように、自分を見せる術を知っている選手の新たな面を出すためにはどのような工夫をしていますか?

 難しい質問ですね。あの人は何をやっても格好良いんですよ。ああいうトップクラスの選手には、とにかく常に刺激や意外性を与え続けないといけないと思いながら振り付けをするので、超大変です(笑)。

――具体的にどういうことが大変でしたか?

 フリーレッグの位置一つでもそうですし、普通にやればきれいな形なんですけど、それをどう少し崩してより美しく見せるかといったことですね。ただ普通のアティテュード(バレエにおける技法の一つ)にするだけじゃなく、それに対して手は逆の方向にするとか。基本的にバレエの動きなんかをどう変えていくかというのがすごく難しいです。

――今までで一番お気に入りのプログラムは高橋さんの『eye』だったということをメディアでもおっしゃっていますが、それはどういったところが最高だったと思えるのでしょうか?

 もう全部です。曲もそうだし、ジャンプもそうだし、スケーティングもステップも表現もすべて好きです。選曲の時点で、高橋大輔からcobaさんというアーティストで好きな曲があるんだと言われて、でも曲名は分からないと。そう言えば「俺もすごい好きな曲がある」と持っていったら、それが偶然一緒だったんですよ。まずはその偶然から「何かある」と思って。

 それで、作っていったらやっぱり素晴らしい。あのときはルールでステップが2つあったんですけど、どっちもレベル4もとっているし、つなぎもしっかりある。僕は本当に世界一のプログラムだと思っています。

――最高のプログラムができたのはなぜだったのでしょうか?

 選手と先生の努力だと思います。そこに僕がちょっと振り付けで参加させていただいたというくらいです。

――最高のプログラムはどのようなときにできると考えていますか?

 一生懸命にみんなが頑張ったときですかね。そんなポッとアイデアが出てパッとやったものが素晴らしいものだとは思わないですし、僕自身が振り付けたプログラムで順番はないんですけど、一生懸命みんなで作ったものはすべて最高のものだと思っています。

――ご自身が振り付けを担当した中で、一番インスピレーションを掻き立てられた選手は誰ですか?

 全員ですね。高橋大輔はもちろんすごいなと思うし、小さい子でも例えば言ったことを勘違いして動いたものが素晴らしくきれいだったりとか、どの選手にもいつも驚かされるんです。だから本当に全員がすごいなと思います。
http://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201509160006-spnavi?p=1