「子供が机に向かうまでの21日間」 第12回
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子供を大学入試までで燃え尽きさせない方法
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あなたは子供さんが、大学入学までで
燃え尽きてしまったとしたら悲しいと
思います。
もしそうなったとしたら
「○○さんのお子さん、□□大学に入った
まではよかったけれど、その後仕事も
見つからないんだって。やっぱり子供の
時に頭がいいかどうか、というのと社会で
やっていけるかどうかは別なのかしら。」
と、ご近所で噂されるかも知れません。
「偏差値の高いバカ」
「受験は得意でも社会では通用しない」
このような人間にお子さんを育てたいと
は思わないでしょう。
逆に
「大器晩成って本当ね。○○さんの
お子さん、社会に出てからの方が
すごいわね。」
と言われるような、
学校生活がピークではない尻上がりの
人生を歩ませてあげられます。
では、子供を大学入試までで燃え尽きさせない
ようにするにはどうしたらよいでしょうか。
この答えは実はシンプルです。
「人生のゴール=大学合格
としないようにする。」
です。
ポイントはペース配分であったり、
遠くの目標を見据えることだと
お分かりでしょう。
もし
「人生のゴール=中学合格」
としてしまうと、中学に合格した
瞬間に子供は燃え尽きてしまいます。
これは論外ですよね。
子供は親の期待をそのまま
自分の目標にしてしまう場合が
あります。
だからあなたがお子さんに
無意識にでも期待することに
注意してくださいね。
「人生のゴール=大学合格」
としてしまうと、大学に合格した
瞬間に子供は燃え尽きてしまい、
その後の進路を見出せなくなる
可能性があります。
特に親の期待に沿うことだけを
考えて、わき目も振らずに
勉強した子供は、その後の自分の
人生を切り拓く力をゼロから
身につけなくてはならず、ハンデ
を負うことになります。
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人生のゴール≠大学合格ならば・・・
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「人生のゴール=大学合格
としないようにする。」
もっと遠くの目標を見据えて、
子供さんが長期的に成功する
にはどうしたらよいでしょうか。
このことは、あなた自身が既に答えを
知っていると思います。
あなたが日ごろ感じていることを
思い出して欲しいのです。
例えば、次のような例です。
「あの人真面目ね・・・」
というふうに人を評する時、あなたは
ネガティブに「真面目」という言葉を
使っているかも知れません。
真面目という言葉が、ネガティブに
使われるとき、
・融通がきかない
・頭でっかち
・品行方正だが、人間として幅が狭い
といったニュアンスを含む場合が
あります。
私がここでお話しているのは
「真面目な人間がよいか悪いか」
「真面目なだけの人間ではダメ」
といった話ではありません。
「誰もが受験勉強ができる、
テストで点が取れるという以外の
能力が必要だと無意識に感じている」
ということです。
そしてあなたは、受験勉強が
人生の全てだとは思っていません。
つまりあなたは、
人生を生き抜いていく力、
人生を生きていく上で大切なことは
受験勉強のスキル以外にもたくさん
あることを知っています。
であれば、あなたはこうしたことを
子供さんに教えてあげたいと
思うでしょう。
「人生のゴール=大学合格
としないようにする。」
とは、すなわち、
「人生のゴール=大学合格と
せずに、人生を生き抜いていく力、
生きていく上で大切なことを
長期的視点で教える」です。
そうすれば、子供さんは
人生のゴール=大学合格とは
思わないようになります。
そして大学合格はあくまで
一つの通過点として考えて、
自分の人生を切り拓いていける
ようになります。
あなたの無意識の期待は自然と
子供さんの目標になり易いから
注意して下さいね。
人生を生き抜いていく力、
人生を生きていく上で大切なこと
とは何でしょうか。
例えば、あなたは子供さんが幼稚園に
行く前から「おはよう」「こんにちは」
「ありがとう」といった挨拶、礼儀を
教えましたよね。
それは人生を生きていく上で大切なこと
だからですよね。
その他に「大切なこと」にはどのような
ものがありますか?
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いい会社に入ること以外に大切なこと
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受験をしていい学校に行って、いい会社に
入ったとしたらなぜいいのでしょうか?
いつもの質問です。
そして今回は、もう一つ質問が加わりました。
いい会社に入ること以外にも
生きていく上で大切なことは
何ですか?
難しいかも知れません。
でも考えて見ましょう。
・・・・再掲になります・・・・
子供さんが尋ねたとします。
「お母さん、どうして勉強していい中学校に
行かなくちゃいけないの?」
「それはね、今勉強していい中学校に
入っておくと、そのままいい高校に行ける
からよ。」
「ふ~ん。じゃあ、どうしていい高校に
行かなちゃいけないの?」
「それはね、いい高校に行くと、いい大学に
行けるからよ。」
「ふ~ん。じゃあ、どうしていい大学に
行かなちゃいけないの?」
「それはね、いい大学に行くと、いい会社
(もしくは役所)に入れるからよ。」
あなたはこのような会話をするでしょうか?
もしかしたら
「そうそう、その通り。」
と思うかも知れません。
「それを聞かれても困るわ。」
「私自身が教えて欲しい。」
「よく分からない。でも必要なことなのよ。」
・・・・再掲ここまで・・・・
ここから私なりに人生を生きていく上で
必要な力と受験の関係を解説します。
(なお、私がここでいい大学とかいい会社と
いうのは、世間でそのように言われている
という意味です。
客観的に「いい」のか
「真実価値がある」のかどうかは別問題
だと思いますが、分かりやすくお話します。)
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仕事力と受験勉強
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人生を生き抜いていく力、
人生を生きていく上で大切なことの
範囲は広いと思います。
だからこれを単純化するために
「仕事力」とします。
ですから、問題を次のように
置き換えて考えてみます。
【置き換え前】
「受験をしていい学校に行って、
いい会社に入ったとしたら
なぜいいのでしょうか?」
「人生を生きていく上で
必要な力とは何か?」
「いい会社に入ること以外にも
生きていく上で大切なことは
何ですか?」
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
【置き換え後】
「受験をしていい学校に行ったら
いい会社に入るのに有利だ。」
だが・・・
はたして
「こうして受験を通して身に
つけた頭脳は、仕事をして
いく上で役に立つのか?」
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
つまり、仕事力と受験脳の
関係を確認することにしましょう。
結論はお分かりだと思いますが、
仕事ができるかどうか、と受験脳は
関係ない、ともいえるし、関係ある
ともいえます。
それは一言で言えば、
仕事の質による部分が多いからです。
ただ、業務処理能力と受験脳は関係
あると言えます。
多くの人が仕事をこなすため、言い
換えると業務処理のために会社に
行っています。
こういう仕事なら受験脳と関係がある
と言えます。
当たり前だけれど、
芸術やクリエイティブな仕事と受験脳
はあまり関係ないでしょう。
そもそも仕事力とは何でしょうか。
仕事=業務処理ではない
ですね。
仕事に必要な能力とは何か、を
考えてみましょう。
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2つの仕事のタイプ
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ちょっと乱暴ですが、仕事を2つの
タイプに分けて考えて見ましょう。
専門的な技術(≒資格)を必要とする仕事と
スキルは必要だが、スキル=資格ではない
タイプの仕事
です。
1.専門的な技術(≒資格)を必要とする仕事
医師、エンジニア、弁護士、会計士、通訳
2.スキルは必要、ただしスキル=資格ではない仕事
芸術、俳優、管理職の仕事、営業の仕事、職人、料理人
ここで便宜上、両者に名前を付けます。
前者を「頭脳資格系スキル」
後者を「非頭脳資格系スキル」と呼ぶ
ことにします。
多くの仕事にはスキルが必要です。
もちろんスキルの要らない仕事も
ありますが、このような「誰にでも
できる仕事」はただ時間を売っている
だけなので、子供さんの将来を考えて
いる訳ですから検討の対象外にします。
(内職、掃除のパートなど)
そのスキルが知識や技術のレベルの
数字に表せるものと数字に表しにくい
ものがあります。
頭脳資格系スキルの方は、数字に
表せるスキルと言えます。
そしてこうしたスキルを身につける
には受験脳があった方が有利
ということは言えます。
一方、
非頭脳資格系スキルの方は受験の能力と
直接関係していないのです。
だから子供さんの進路が非頭脳資格系
スキルの仕事の分野であったら、
受験勉強が得意であったかどうかと、
仕事のスキルはあまり関係がないと
言えます。
ただし、受験を通じて勉強の仕方
を身につけた人は、他の分野でも
上達が早いことがあります。
この話はまた改めてお話します。
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スキル以外で仕事に必要なもの
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仕事に必要なスキルを考えて
みましたが、仕事にはそもそも
スキル以外のものも必要です。
仕事に必要なものを考えて
みましょう。
これは
「仕事に必要なものは何か」
という質問ですが、
同時に次のように置き換えて
考えてみます。
「仕事をして報酬をもら際に
私達は、何を(会社やお客さんに)
提供しているだろうか」
そうすると、次のようなことが
分かると思います。
仕事に必要なもの
(=働くときに私達が提供
しているもの)
1.スキル
2.時間
3.エネルギー
4.集中力
5.決断力
6.想像力
このように多くのものを提供して
いることが分かると思います。
「誰もが受験勉強ができる、
テストで点が取れるという
以外の能力が必要だと無意識に
感じている」
というお話をしました。
これは、
2.時間
3.エネルギー
4.集中力
5.決断力
6.想像力
の要素である場合が多いと
思います。
「あの人真面目ね・・・」
というふうに人を評する時、
あなたはネガティブに
「真面目」という言葉を
使っているかも知れません。
この場合も、
2.時間
3.エネルギー
4.集中力
5.決断力
6.想像力
のどれかが欠けていると
いう意味合いで使っている
場合があるかも知れません。
ただ、私達はスキル以外の
ものを提供していることに
時として気付かない場合も
あると思うので、例をお話します。
もしあなたのお子さんが大変な
難病になったとします。
そしてその病気を治してくれる
医師を探したけれども、
どの病院でも諦めて欲しいと
言われたとします。
ただ、ある病院で、「もしかして
彼なら治せるかも知れない」
と言って、ある人を紹介されます。
その男は、
天才的な外科手術を行う人です。
ただし、医師の免許は持って
いなくて、しかも法外な治療費を
請求します。
世界中に子供さんを治せるのは
この男しかいないでしょう、と
他の医師も口を揃えて言っています。
おそらくあなたは、この男に
治療をお願いするでしょう。
これは漫画の「ブラックジャック」
を例にスキルの力をお話しました。
圧倒的なスキルがあれば仕事は
できます。
仕事は人格を提供するもの
ではないからです。
逆に、圧倒的なスキルがない場合
には、
2.時間
3.エネルギー
4.集中力
5.決断力
6.想像力
といった他の要素が
大切になってきます。
あなたがある分野で法律の専門家に
相談することになったとしましょう。
例えば、あなたのご自宅が道路の
建設の予定地になったため、立ち退き
を要求されたとします。
このようなレアなケースでは
知識や経験のある法律の専門家が
ほとんどいないとしましょう。
そうするとあなたは先ほどのブラック
ジャックのように、相手がどんな人で
あってもその人にお願いするしか
選択肢はなくなります。
一方、あなたが交通事故のトラブルに
遭ったとします。
この事故の相手との交渉のために
法律の専門家を探したとします。
こちらは比較的よくあるケースです
ので、経験のある専門家は容易に
見つかります。
だからあなたには弁護士を選ぶ権利が
あります。
A弁護士は、
「はい、あなたのケースでは、○○法
□□条が適用されます。だからあなた
には△△する権利があります。」
と法律の知識を授けてくれました。
あなたは満足でしょうか。
B弁護士の場合はこうです。
「あなたのケースでは、○○法
□□条が適用されます。だからあなた
には△△する権利があります。
一方で、先方は●●して欲しいと
交渉して来ているようですから、
▲▲するように交渉したらいい
でしょう。」
B弁護士は、法律の知識だけでなく
状況を判断して、交渉の方法まで
教えてくれました。
あなたはB弁護士の方をいい弁護士
だ、頼りになると思うでしょう。
B弁護士は、法律の知識という
スキルだけでなく、
3.エネルギー
5.決断力
6.想像力
を使って、プラスαの仕事を
していることになります。
何かの専門分野で
圧倒的なスキルを持っている
人であったら、その分野で
はやっていけるでしょう。
(ブラックジャックのように)
でも専門のスキルがあるにしても
多くの場合、同業者との競合が
ありますので、プラスαの仕事を
することが必要になってきます。
こういう場合に、
2.時間
3.エネルギー
4.集中力
5.決断力
6.想像力
という要素を提供できるか
どうかが重要になってきます。
つまり
受験脳と生きていくための
仕事力の差はこの部分に
あると言えます。
仕事にはスキル以外の
ものも必要だ、ということは
ご理解頂けたと思います。
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受験脳をどう生かすか
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話を戻しますね。
「受験をしていい学校に行ったら
いい会社に入るのに有利」
ですが、では、
「こうして受験を通して身に
つけた頭脳は、仕事をして
いく上で役に立つのか?」
という疑問が出発でした。
答えは、役に立つ仕事もあるし、
役に立たない仕事もあります。
それは仕事の内容によります。
また、必要とされるスキルは
同じでも、それ以外の要素で
差のつく仕事はたくさんあります。
むしろ、圧倒的なスキルの差が
ない、ほとんどの場合は、
こちらのケースでしょう。
要するに、受験脳が仕事力に
結びつくのは一部のケースに
なります。
頭脳資格系スキルを身につける
には受験脳があった方が有利
ということは言えます。
逆に、
非頭脳系スキルの方は受験の能力と
直接関係していないし、
スキル以外の要素で仕事力に差の
つくことも多いのです。
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人生は頭脳が全て
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さて、ここまでお話してきた
ところで、今日の宿題として
やって欲しいことがあります。
「お母さん、どうして勉強して
いい中学校に行かなくちゃ
いけないの?」
の答えをご自身なりに考えて
頂きたいのです。
そして、思ったことをノートに
書いて頂きたいのです。
「思考力が身に付くからよ。」
といった、塾の言葉の
受け売りではなくて、
ご自身の言葉で書いて
下さいね。
もし今のご自身のお気持ちの
中で、はっきりとして
いなければ、
「よく分からない」など
正直に書いて下さい。
私が今日お話したことを
納得して頂けるならば、
次のような順に整理して
考えをまとめて頂けると
思います。
いい中学に行く
↓
いい大学に行くのに有利
↓
いい会社(役所)に入るのに
有利
また、受験脳は頭脳資格系
スキルを身につけるには有利
ただし、このようにスキルだけ
を提供して生きていけるか
どうかは定かではない。
(私達はスキル以外のものを
提供することが必要になるし、
これは必ずしも受験勉強では
身に付かない。)
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夫との会話
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宿題として、もう一つ
やって頂きたいことがあります。
ご主人との会話です。
「受験を通して身につけた
頭脳は、仕事をして
いく上で役に立つのか?」
「仕事をしていく上で必要な
スキル以外の能力」
といったことを考えてみました。
このことに関して、ご主人の
意見を聞いて頂きたいのです。
実際に働いているご主人に
受験脳と仕事力の関係に
ついてのナマの意見を
聞いて頂きたいのです。
できるだけご主人の率直な
意見が聞きやすいように
工夫して聞いてみて下さいね。
「ねえ、仕事いつも大変そうね。
色々と大変だと思うけど、
どんなことで一番苦労している?
そうかあ、じゃあ身の回りで
どんな人を偉いと思う?
その人ってどんな人?
尊敬される人ってどんな人
かしら?
頭のいい人が仕事ができる人、
尊敬される人なのかな?」
こんな言葉を使うといいかも
知れません。
注意点としては2つあります。
1.ご主人が言われる意見を
否定せずに「そうか、たいへん
ね~」という調子で聞いて
下さい。
仕事の内容をよく分からない
場合でも、分からないことは
分からないとして、大変そうだ
ったら「そうか、たいへん
ね~」と言ってあげて下さい。
2.受験脳と仕事力の関係に
ついて参考になる意見が聞けても
聞けなくてもよいと思って
下さい。
もしかしたらご主人からは
愚痴ばかりが出るかも知れません。
それはそれで、ご主人の
ストレスを軽減してあなたと
ご主人の関係が改善される
のでよしと考えて下さい。
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本当のアドバイス
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実は、今日のここまでのお話は
最初の目的の途中までになります。
「子供が大学受験までで燃え尽き
ないために」というお話から始めた
のでした。
今日は受験脳と仕事力の関係
についてお話しました。
燃え尽きないためには
「人生のゴール=大学合格
としないようにする。」
ことが必要です。
もっと遠くの目標を見据えて、
子供さんが長期的に成功する
にはどうしたらよいでしょうか。
受験脳と仕事力の関係をみて
受験脳が全てではないと
分かった上でどうしたらいいか
お話していく予定です。
知恵はなぜ必要か
という話もしていきます。
もし感想やご質問があったら
ご連絡下さい。
お待ちしています。