「な、華蝶は、何が得意なんだ?」

キラキラとした瞳で見上げてくるルーク様に、華蝶は優しい笑みを浮かべながら答える。

「そうですね、魔術や料理が得意ですよ」
「魔法使えるのか?!」
「はい、精霊も呼び出せますよ」
「見たい!!」

純粋な眼差しに、私はルーク様の頭を撫でて立ち上がる。

「いいですよ」

幸い、こちらの世界の精霊とも契約はしていた。
だから構わない。
指を鳴らしたり、名前を呼べば出てくるのだが…、ルーク様は「つまらない」と言いそうだ。
だから、久しぶりに呪文を唱えよう。
杖を出現させ、息を吸う。

「我は命ずる。命ずるは我なり。我と契約せし炎の王よ、我の前に姿を現し、我に立ちはだかる愚かな敵を紅蓮の炎で焼き尽くせ!イフリート!!」

魔方陣が浮かび上がり、魔力の風が吹き上がる。
そして、出てきた、イフリート。

「ひ、人…?」

ぽかん…とするルーク様。
無理もない、人型のイフリートを見て驚かないなんて。
人型のイフリートは赤い髪に後ろ髪がしっぽみたいに長く、肌は茶色。瞳は深紅で長身長足。
イフリートはルーク様を見て、そして

「わわっ!?」
「可愛いな~!よし、頑張って守ってやるからな!!」

とか言って、ルーク様の頭を勢い良く撫で始めた。
華蝶は勢い良く杖でイフリートを殴る。

「王族の方になにしているんですか?!」
「別にいいだろ?」
「はぁ…」

ルーク様を後ろから抱きしめて笑うイフリートに、私はため息をつく。

「は、はなせよ!」

顔を赤くしながら叫ぶルーク様に、イフリートは笑いながら離れた。

「で、華蝶なんだ?」
扉を通れば、依頼先の世界――アビスの世界に着いた。
そして、私がいま居るのはキムラスカの王族の屋敷前。
突然現れた私に槍を向けてくる兵士。

「こんにちは、私は華蝶と申します。ローレライからの任務でやってきました」

にこり、と愛想の良い笑みを浮かべてお辞儀をする私に兵士は慌てた。

「失礼致しました!王に聞いて来ますのでお待ちください」

小さく頷けば、兵士は中へ入って行き、しばらくして戻って来た。
どうやら、入れるらしい。
兵士について行き、着いたのは王が居る部屋。
すぐに膝をつき、頭を下げる。

「初めまして、華蝶と申します。ローレライからの任務により、異世界からやって来ました」
「顔をあげて良いぞ」

そう言われ、やっと顔を上げた。

「その任務とは、なんだ?」
「ルーク様を、守って欲しいとの事です」

王は、少し考える。
そして

「よかろう。任務が終わるまで、ルークの執事になってくれ」
「畏まりました」

礼を言い、次にメイドにルーク様の部屋へ案内された。
まるで鳥かごの様な部屋に、昔を思いだして少し眉をひそめる。

「ルーク様、新しい執事が来ました」
「入っていいぜー」

扉が開かれ、「失礼します」と言いながら部屋に入った。

「初めまして、今日からルーク様の執事となる、華蝶と申します」

膝をつき、頭を下げて自己紹介をすれば、ルーク様は慌てた。

「頭さげんなって!普通でいいから!!」
「畏まりました」

許可がおり、立ち上がってにこり、と笑う。

「あ、お前は下がっていいぜ」
「解りました」

メイドが出ていき、二人っきりになる。
ある世界の神からの依頼に、萬屋・月下亭の執事は小さく笑う。
そして、愛しい主人に行くことを伝え、軽く口づけると、依頼先の世界に向かった―――。