舟木一夫特別公演
『花の風来坊~おとぼけ侍奮闘記~』
2月19日(木) 昼の部 11:00
夜の部 16:00
~ 第一部 ~
「花の風来坊」―厳寒の上本町に笑い
の渦を巻き起こして来た ” 痛快爆笑
娯楽時代劇 ” も残すところあと二日、
いよいよ終盤となってきた。
生まれたときから若様を慈しみお育て
申しあげた ” 爺 ” の ” 趣味の切腹 ”
は、如何なっていようか。
屑屋さんたちの台詞も、さらに磨きが
掛かり、日ごとに冴えている模様。
ねずみ小僧を追う、岡っ引キズ源の
林啓二さんは?
江戸城で山内伊賀之亮と対決した松平伊豆守の威厳はかなぐり捨てて、
着物をはだけ必死の形相で舞台下手から上手へ掛け抜ける。
林流家元の舞踊家・啓二さんが、着物を脱ぎ捨てる寸前まで、思いっきり、
あられもない姿をさらして走り抜ける落差と軽妙さが、2月3日においても
このうえなく可笑しく、大いに笑わせて頂いた。
何回かの観劇の楽しみは、お芝居がだんだんに完成していく様子を見せ
て貰えること。 今回は中日あたりのお芝居は拝見できなかったが、千秋
楽前日の19日なら、どんなにお芝居が練り上げられているだろう、と楽し
みにしていた。
松平家側用人・後藤五郎左衛門の ” 爺 ” (曾我廼家文童さん)と、付き
添う佐助(真木一之さん)の、掛け合いの見事なこと。 やはり、芸達者な
文童さんの「趣味の切腹」が出る度に、場内は爆笑の渦が巻き起こる。
「 この上は、皺腹を掻っ捌いて 」 と切腹の作法を始めるものの、実は何と
か止めてもらいたい ” 爺の切腹 ” に、” 腹 ” の読めない(ふりの?)若い
佐助。 真木さんの真に迫った嘆息と、何とか切腹を思い留まって貰うため
の力任せの荒業。 松竹新喜劇で鍛え上げた文童さんの演技は、万来の
拍手喝采を呼び、もちろん絶賛の嵐だが、その文童さんをお相手に真木さ
んは本当にお上手になられたな~と感心してしまった。
座長が舟木さんである舞台のもう一つ楽しみは、役者さんの芝居に、舟木
さんの持ち歌が入ること!
文童さんは、 切腹シーンで ♪ 君よ振りむくな を歌われていたし、屑屋
の戸田都康さんは、♪ あのひと~に会いたい~ たまらなく~会いたい~
と、ねずみ小僧を恋しがっていた。
林与一さん、長谷川稀世さん、葉山葉子さん、、シリアスでもコメディでも、
お馴染みの方々がしっかりと支えて下さる舟木さんの舞台。 ますます息
があって、お芝居の流れはテンポよく快調に進んでいく。 この度も安心し
て心地よい流れに身を任せることができた。
舞台の舟木さんも、5度のお召し替えのある ” 天下泰平 ” 役を、どうやら
ご自身が一番楽しんで演じておられるように、お見受けした。
~ 第二部 ・昼の部~
昼夜で構成が変わるシアターコンサートの中で、” 日本の名曲たち ” は
前半と後半でも選曲が変わる。
2月10日~2月19日までお昼の部は ♪ 道頓堀(とんぼり)人情
♪ 河内おとこ節
♪ 道頓堀(とんぼり)人情
詞 : 若山 かほる
曲: 山田 年 秋
ふられたくらいで 泣くのはあほや
呑んで忘れろ 雨の夜は
負けたらあかん 負けたらあかんで東京に
冷めとない やさしい街や道頓堀(とんぼり)は
未練捨てたら けじめをつけて
きっぱりきょうから 浪花に生きるのさ
くちびるかんでも きのうは過去や
わかるやつには わかってる
負けたらあかん 負けたらあかんで東京に
冷めとない やさしい街や道頓堀(とんぼり)は
でんと構えた通天閣は
どっこい生きてる 浪花のど根性
三吉魂 あんたにあれば
うちが小春に なりもしょう
負けたらあかん 負けたらあかんで東京に
冷めとない やさしい街や道頓堀(とんぼり)は
ほれてつきあう 今夜の酒は
まっ赤に流れる 浪花の心意気
♪ 河内おとこ節
詞: 石本 美由起
曲: 岡 千 秋
河内生まれの 風来坊は
生きのいいのが あゝ、、、売りもんや
サテモ皆様 おそまつながら
ここが男の舞台なら
太鼓叩いて見栄を切る
喧嘩囃子の 河内ぶし
一に度胸や 二に人情や
後は腕づく あゝ、、、腕しだい
サテモ皆様 悪声ながら
坂田三吉 物語り
派手な掛声 頂いて
唸る男の 河内ぶし
馬鹿な息子を 叱ってくれる
俺(わい)の親父(おやじ)は あゝ、、、生駒山
サテモ皆様 おおそれながら
肌は鉄火の 勇み肌
グイと冷酒 飲みほして
仁義がわりの 河内ぶし
オリジナルは大阪を代表する演歌歌手、天童よしみさんと中村美律子さんの曲で
あり、普段は自分から進んで聴く曲ではない。 しかし、舟木さんならきっと浪花の
個性たっぷりの気風を、心地よくマイルドな風に変えて届けて下さるだろうと思って
いた。 舟木さんの「浪花恋しぐれ」が何の違和感もなく届くのと同じように、ごくごく
自然に浪花の風が吹いてくるだろう、と。
もちろん、その通りだった。いや、それ以上に、人生の山も谷も乗り越えてきた舟木
さんが、今、骨太に ” 浪花のど根性の歌 ” を歌って下さると、吸い寄せられるよう
に心がなびいていく。 そして何より心地いい。
昼の部がこうだったのだから、恐らく夜の部でも舟木マジックが掛かった歌に又して
も酔わされていくに違いないと、しっかりと心づもりをしておいた。