いっぱいのお運び、厚く御礼申し上げます。毎度バカバカしいお笑いを、一席。
え~、どんな人にでも『名前』というものはついておりますね。人以外にも動植物・物品・土地・病原体・現象などなど、名前というものはそのものの存在証明であり、とても大切なものでございます。
しかし、昨今では『個性』というものを勘違いしたのか、自分の子どもに暴走族の屋号みたいな名前をつける輩が増えており、“騎士(ナイト)”とか“金星(マアズ)”とか“ペ若人(ペヤング)”なんてビックリな当て字の名前も珍しくはありません。「ペット感覚で名前をつける親」なんて度々ニュースで比喩されることもあり、また古風につけたらつけたで逆に“ぶってる”と言われたりして、現代日本では名づけという行為は相当ハードルの高いものと言えるのかもしれません。
ところかわって、昨今ではペットを家族同然として扱う人も増えておりますね。人間以上に良いものを食べさせたり毛皮があるのに服を着せたり、飼い主(お父さん・お母さんなんて呼称するらしいですが)にしてみれば、自分の息子・娘と同じと言っても差し支えないのかもしれません。
一時世間を騒がせたアザラシなんかには、一般的なものとは違いますが『特別住民票』なんてものを区があてがったりして広くアピールしており、もはや動物は人間と同等の存在と言っても過言ではないのでしょう。
さて、ここまでペットの価値観が高まった世の中になりますと、先ほどとは逆に、ペットに人間的な名前をつける人も出てくるのかもしれませんね。
“セバスチャン(セバスチャン)”とか“田中(タナカ)”とか“ペス男(ペスオ)”とか。もしくは、――――“太郎(タロウ)”とか“次郎(ジロウ)”とか……
………………っ! な、南極物語____、
☆★☆★☆
――――そうは言いましても、
先ほどから現代人の名前のつけ方をディスってばかりでございましたが、昔の人が“太郎”や“次郎”、“花子”や“せへ”などのド鉄板な名前だけを子どもにつけていたか、と言いますと存外そうでもございません。
男の子には“悪太郎(あくたろう)”や“尿太郎(いばりたろう)”、女の子には“お捨(おすて)”なんて現代では到底受け入れられないものも多数ございました。また、“牛若丸”などに使われております『丸』の字は、つまるところ“おまる”のことであるという説もございます。
しかし、これは自分の子どもが悪いものに取り憑かれないようあえて汚いものを名前につけ、ウチの子は汚いから触るんじゃない、と魔を欺き大人になるまで健やかに育てたいという親の情愛に他ならぬもの。まだ現代ほど科学も発展しておらず、また現代よりすべからく信仰心の強い時代の産物でございました。
そして、子どもが『元服』(現代で言う『成人』)を迎えますと、改めて立派な名前つけるものとなっておりました。
さて、以上を鑑みておりますと世代、世情、世相関係なく、いつの世も親が子どもに託す願いは大きいもの。それは決して自画自賛やエゴからではなくただ純粋に子どもの幸せを願ってのものでありまして、子どもの健康と長命を千歳飴に願をかけたという『かくまでに親は思うぞ千歳飴』なんて昔の句もございます。
さりとて、煌びやかで尊大で大仰な名前をつけられた子どもほど、名前負けをして鬱屈してしまうことも無きにしも非ず。
『個性』や『存在感』は名前や容姿、装飾品ではなく『心の内』から滲み出る、そんな子どもに育ってほしいものですね。
☆★☆★☆
「こんちは」
「おお。誰かと思えば、八っつぁんじゃないかい」
大工の八五郎が訪れたのは、町の賢人・ご意見番で知られるご隠居の猫屋敷。
「お前さん、今日はどうしたんだい?」
「いや、ご隠居。この度はおめでとうございます」
「なんじゃ? わしになんかめでたいことでもあったのかのう?」
「ええ。大変めでたいことがありまして……」
「ほほう。いったい何があったんじゃ」
「はい。実はですね、長家でお子さんがお生まれになりまして」
「(ドキッ) あ、あら、そうかい? そりゃ気が利かなかったね。それでどちらでお子さんがお生まれなさったんだい?」
八五郎の発したふいの一言に、ご隠居の顔は冷や汗でまみれ、心臓は道路工事で地盤を固めるやつみたいな感じで早鐘を打ち出す。しかし____、
「ええ。あっしのところでね、お生まれなさったんです」
八五郎の頓珍漢な言葉に、新喜劇並みにずっこけるご隠居。
「(ふう。セフセフ) なんじゃ! 自分のところで“お生まれなさった”て言うのはおかしいじゃろ」
そう言いつつご隠居は自分の心当たりとは違うことに人心地つき、ホッ、とした途端に体中の毛穴という毛穴から汗が噴き出し着衣が汁にまみれる。
「まあいいんじゃが。それで、生まれたのは男の子かい? 女の子かい」
「うちに生まれたのはね……男のBoyなんですよ」
「なんだよ。男のBoyてのは」
「でね、うちのかみさんが言うには、お前さん、今日は“しょなのか”だからなんとかしておくれよ、てことらしいんですよ」
「……ああ、そうかい。そりゃお気の毒だったね。生まれるとすぐに亡くなったのかい」
ご隠居が八五郎の心中を察し、胸の前で十字を切っていると、
「冗談言っちゃいけない、全然ピンピンですよ。日がな一日マカレナ踊ってますし」
「お前さん今、『初七日』だから、て」
「ええ。生まれて七日目ですから!」
八五郎はセクシーに腰を振りながら、子どもの健在ぶりをアピールしている。
「生まれて七日目を初七日て言う奴があるかい。人間生まれて六日目を『六日垂』、七日目を『お七夜』、世の不条理と大人の汚さ、そして自分の無力さを痛感した十五年目の叫びだしたい夜を『十五の夜』と言うんだ」
「なるほど。盗んだバイクにトランスフォームしたくなりますね。そうそう、その『お七夜』」
「ま、世間ではだいたいお七夜に名前をつける習わしになっておる」
「ご隠居、そこなんです!!」
ご隠居の言葉を受け、八五郎は身を前に出した。
「うちのかみさんが、お前さん今日はお七夜だから名前をつけておくれよ、そう言うんですよ。あっしは強い子に育ってほしいから『武井壮』なんてのはどうだい? て訊いたら、うちには“和田”っていう立派な苗字があるんだよ。それじゃあ“和田武井壮”になっちゃうじゃないか。そんな名前じゃ百獣の王目指しちゃうよ、て文句ばっかりで。そんなときに、横丁のご隠居はハゲてるわりに難しい本とか読んでるから、上手くおだてりゃ良い名前でも浮かぶんじゃないか、なんてことになりまして。なんか良い名前考えてくれます?」
「………………お前さん、言いにくいことをハッキリ言うね」
「え? なんか言いましたか?」
「なんか言いましたか、じゃないよ。“横丁の”からなんて言った?」
「ええ。横丁のご隠居は小難しい本を読んで知識を頭に詰め込んで、代わりに頭から髪の毛を追い出してる。もう奴の毛根は八割方死滅してるよ……」
話しながら何かに気付いた八五郎は、
「そう言やかみさんも言ってたよ。――この話は当人の前で言っちゃいけないよ、て」
てへぺろ、と舌を出し不二家った。
「当たり前だよ。しかし、そうかい。あたしが名づけ親にしてもらえるのかい。そいつはありがたいね」
「そうでしょ。一つ良い塩梅にお願いしますよ」
「それでお前さんはどんな名前をつけたいんだい?」
「そうですね……なるたけ長生きをする名前をつけてもらいたいんですがどうでしょう?」
八五郎は、庭に一本そびえ立つ天まで届かんばかりに伸びた長い木を見上げながら、そう一人ごちた。
「そりゃまあ、親はそう思うもんだよ。長生きをして願う、そりゃ確かにそうだ。願わない親なんてないから。そうねえ、長生きって言うと、頭に浮かぶのは『鶴は千年』なんて言うが、名前に『鶴』の字を使うのはどうだい」
「なるほどね。鶴なんてのは縁起が良いですね」
「どうだい一つ、“鶴男”とか“鶴吉”、“鶴蔵”、“鶴太郎”てのは?」
「鶴太郎……なんか“プッツン”しながら“パンツ一丁でカメラ”を持ち、“熱々のおでん”を食べて“画伯”になりそうな名前だね。それにツルツルツルツル、ご隠居みたいにハゲ散らかしそうだよ」
「あ! まだ言うか。この野郎」
「いやいや、でも鶴は千年経ったら死んじゃうんでしょ?」
「まあなあ。千年経ちゃ、即Deadだけれども……」
「それで参っちゃ面白くないですよ。もっと長生きする名前はないですかね?」
「お前さん、欲と業が深いね。じゃ『亀は万年』だな。“亀吉”、“亀太郎”、“亀蔵”とか。あと“亀治郎”なんてのもあるぞ」
「亀治郎、ねえ……今ちょうど歌舞伎界で枠が空いてる名前だね。そりゃ確かに、海老ってつけるよりかはWEST麻布で灰皿にテキーラ注がれて飲まされそうな名前じゃないけども、う~ん、でもちょっと違うね。なんて言うか、千年万年経つと死んじゃうなんて穏やかじゃないでしょ。もっとさ、もう死なないような常しえに生きるような……」
「なにが常しえだよ。床上手のお前さんからそんな言葉聞くなんて、ちゃんちゃらおかしいよ。だがそうだねえ、まあそう言っても始まらないから、昔の書物など紐解くと色々めでたい文句があるから、その中から一つ二つよってみようか」
「おっ! 願いましょう。それで一ついきましょう。どんな具合ですか?」
「そうだねえ。あたしの好きな文句で『寿限無』なんてのがあるけど、どうだい?」
ご隠居の突飛な発案に、暫し口を開いたけたまま、ポカーン、とする八五郎。
「へー……じゅ、じゅげ、じゅげ……ねー。そりゃ、なんですか?」
「“寿”“限り”“無し”と書いて『寿限無』だ。どうだい? 寿=年齢に限りが無いてんだ。あたしゃめでたいと思うね」
「ほお、なるほどねえ。まだありますか?」
「うーん。それじゃあ『五劫の擦り切れ』なんてのはどうだい?」
「なんですかそりゃ! ふざけちゃいけませんよ、“ごこうのすりきれ”なんて。きんぴらごぼうを作る下準備みたいなもの」
「そりゃ“ごぼうのささがき”だろ。これはなあ、天人が三千年に一度天下ってくるんだな。そして地上の岩を己の着ている軽い衣でそっと撫でる。で、上がってから三千年経つとまた下りてきてこの岩を撫でる。ね? 三千年毎に下りてき上がりでやっているうちにすっかり岩が擦り切れて無くなるのが一劫っていうんだ」
「ふーん。なるほど」
「それが“五劫の擦り切れ”てんだから、何億年何兆年何無量大数年て先の話だろ」
「ほぉ、こりゃ良いや。あっしも擦り切ってもらいたいね。まだありますか?」
「まあ、『海砂利水魚水行末雲来末風来末』なんてのは?」
「へー。すいぎょうばつうんらいばつふうらいばつ、バツバツ並んでますね。まるで昔住んでた懲罰房思い出しますよ」
「これはね、海砂利水魚、海の砂利というものは取っても取っても取り尽くせるもんじゃない。魚とて同じだ、“水の魚、取っても取っても取り尽くせない”てところから、これもめでたいだろ。で、後にきて雲の行く末風の行く末、これも何処から来て何処へ行くやら果てしもなく広いもんだ、と大層めでたいもんだ」
「はああ、なるほどね。か、かいじゃり……かいじゃり……くりぃむしちゅー……かいじゃりすいぎょばつばつばつ! と、面白くなってきましたね。まだありますか?」
「ふむ。“衣食住”と言うから『食う寝るところに住むところ』ぐらいのことも考えておいた方が良いだろう」
「………………はあ。なるほどね。まだありますか?」
「あるけどさ。いいのかい? どんどん続けて?」
「ええ。続けて続けて」
「『やぶら小路の藪柑子』て言うがね」
「はああ? KOJI1200なら知ってますがね」
「『今田耕司』と一緒にするやつはないだろ。こりゃ“柑子”という木だな。草花、植物だがね、大変めでたいんだよ。春、若葉を生じ花を咲かせ、やがてこれが秋に実がなる。冬になってもその緑が、お前さん風に言うと常しえに変わらないてな。常に緑で大層長寿な木だ」
「なるほど。やぶらこうじのやぶこうじ……その木はどこにあるんですか?」
「どこにあるとか、そういうことじゃなくて」
「でも、あったら引っこ抜いてウチに持って帰ろうと思いましてね」
「……そんなことしたら怒られるよ」
「へへ。そしたら素直に謝りゃ、後に大統領になれるかもしれませんよ」
「その前に銃殺刑だよ」
「で、まだ後なんかないですかね?」
「お後お後、てうるさいね。じゃどうだい、『パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコナーのポンポコピー』てのは?」
「こりゃ、恐ろしく並べましたねー」
「これはまあ、昔パイポという国にシューリンガンとグーリンダイという王様とお后様がいてね、そこに産まれたのがポンポコナーとポンポコピーという子どもだ。大層長生きをして国が盛って、何万年の間国が繁栄したって話があるね」
「ほへえ。外国の方にも色々ありますね。でも外国じゃなくて、日本に何かないですかい? 和製ビヨンセみたいなやつ」
「日本て言うとね。あたしに名前をつけなきゃいけない子どもでも孫でもいたら『長久命の長助』、“長く久しく命を助ける”なんてのは良い名前だと思うけどどうだい?」
「ありがたいね。それくらいで結構ですから、ちょいと紙に書いて下さい」
「はあ。書くのは構わないけど」
「あ! 本字(漢字)で書かれると駄目なんだあたしは。読めないからね。一番取りつくやつ“かな”てやつね。本字ってやつはどうもね。かんじ(感じ/漢字)が悪くてかな(適/かな)わない、てのはドヤッ」
「つまらねえ洒落を言うね、お前さんは」
ご隠居は八五郎のドヤ顔を流しながら、和紙にさらさらと文字をしたためていく。
「ほら。書いたよ」
「へへ。ありがとうございやす」
八五郎はご隠居からそれを受け取ると、
「えー……『じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょのすいぎょうばつふうらいばつうんらいばつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのやぶこうじ ぱいぽぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ』、ね。はいはい」
一頻り紙に書かれた名前を読み上げ、
「よっ!」
ビリランッ!!
おもむろに紙を引き裂いた。
「お、お前さん。なにをするんじゃ」
「なにをするんじゃ、じゃねえよ、このアデランス野郎。なんだこりゃ! 名前つけろってのに、衣食住辺りから名前になってねえじゃねえか」
「じゃ、じゃが、お前さんが縁起の良いものと……」
「じゃがもポテコもねえよ。そんな変な名前つけて周りから浮いたらどうするんだ。昔ニュースで“夢”て書いて『ドリーム』て読ませる子が出てたぞ! そりゃ小さい時分は良いかもしれねえが、順当に年老いたら末は“ドリームおじいちゃん”だぞ! ちょっとした町のトピックス・名物おじいちゃんみたいじゃねえかっ!!!!!」
「ふ、ふぇぇ……」
八五郎は、まくし立てられ半涙目となっているご隠居を尻目に、ビリビリに破った紙と罵詈雑言と吐瀉物を撒き散らしながら、ノーモーナヤミムヨー、と最後に一言残してその場を飛び出していった。
――――ご隠居の家を後にした八五郎は、
「ったく、あのプロピア野郎の所為ですっかり時間を無駄にしちまったぜ。しかし、どうしたもんかなー、名前は。やっぱ『武井壮』が妥当か?」
プリプリ怒ったまま家路につき、やはり初志貫徹! と息子の名前を決めかけていたその時、
わーわー、キャーキャー、ピ・ピカチュウ
ちょうど横を通りかかったおもちゃ屋から、たくさんの歓声と拍手喝采が響き渡っていた。
「なんだあ? ここで祭りでもやってんのか?」
八五郎がその声に誘われて店の中に入ってみると、
『おめでとうございます。大会を優勝して見事“ポケモンマスター”の称号を手に入れたのは、今国智章くん四十三才でーす』
店の天井に吊されたスピーカーから爆音のアナウンスが流れるや否や、割れんばかりの大きな拍手と喝采が店内に鳴り響く。八五郎がその喧騒に誘われて店の奥へと足を運ぶと、大型モニターの前で全身タイツの男性が誇らしげにゲームボーイを掲げて立っていた。
「おい、ちょっと。お前さん、今一身に拍手喝采を浴びてるけど、なにかあったのかい?」
「おじさん、なんだい? 僕はポケモンマスターさ」
「ポケ……ポケ……アイマス……ポケモンマスターっての? そいつは偉いのかい?」
「僕はこの中で一番ポケモンが強いんだ! もちろん世界で一番偉いよ」
「そうかそうか」
男性の力強い一言に、これはしたり、と八五郎が男性に話し出す。
「そいじゃ、ちょっとお前さんに頼みがあるんだけどね。七日前におじさん家に子どもが生まれたんだ。元気な男の子の赤ちゃんだよ。その子の名前を是非つけてほしい」
「な、名前!!」
「そうなんだよ。世界一のお前さんにしかできないんだ。一丁、強そうな名前をつけておくれ」
「わかったよ。おっさん、まかしとけ!」
八五郎に請われて、男性は早速名前を考えだす。
「うーん。『ポケモン赤』で強いって言えば、『ノーマル系』だろ。ノーマル系といえば『ケンタロス』・『ラッキー』・『ガルーダ』だけど……でも、他のポケモンにも個性があるし。一般的にパラメータの高いポケモンだけ選べば良いのか? それじゃあ大会対策だけで面白さの欠片もないし……」
「………………?」
「……大会で勝つために強キャラだけの布陣じゃ、その場では勝てたって避難囂々は目に見えてるし、みんなそんなキャラだけ使うようになったら6体もポケモンがいたら充分だ……」
「お、おい!」
名前を考えているはずの男性は、ブツブツと益体のないことを一人ごちているばかりで、一つも候補が挙がらない。八五郎はだんだんと男性の将来が心配になり声をかけてみるが、男性はそれを無視して蚊の入るような声でブツブツと言うばかり。
「……どんな人にも趣味嗜好があるから151体もポケモンがいるわけだし、成長前のカワイイ風体も成長後のゲロッパみたいな成りも、全てのキャラに魅力があって各々が選択出来るからポケモンは素晴らしいゲームなんだ。……やはり『愛』だ! 『愛こそ全て』なんだ!」
「おいっ! 目覚めろ!」
八五郎はとうとう我慢が出来なくなり、渾身の力で男性の頬を張った。
バシッ!!
「はっ! おじさん? どうしたの?」
男性はその一撃で目を覚まし、トリップから覚醒する。
「どうしたの、じゃねえや。お前さんが名前を考えるのにブツブツ言いながら軽くトランスっちゃってたんで心配になって一叩きしただけだよ」
「なまえ?……名前……そうだっ! おじさん。ボク、良いことを思いついたよ!」
「おお、そうかそうか。考えてくれたかそれでどんな名前だい?」
「へへへ。それじゃあ、いくよ」
男性は照れ笑いしながら、一呼吸おき____、
「ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!」
ポケモンの名前をリズムにのって口にした。
「ポケモン、ゲットだぜ!!」
「おお! こりゃみんな良い名前だ」
「うん。おじさん、どのポケモンも個性があってみんな素晴らしいんだ」
「そうか。お前さんのポケモンに対する愛がひしひしと感じられるよ。じゃあ今のを全部紙に書いてくれるかい? あ! でも本字はいけねえよ。おじさん読めないからな。かんじがわるくてかなわない、てな」
「HAHAHAッ! おじさん、サイコーだよ! 大丈夫さ、ポケモンの名前はみんなカタカナ五文字以内だから」
「ほお、そいつはありがてえ」
男性がポケモンの名前を和紙に書き込み、八五郎がそれを受け取ると、
「すまねえな。そいじゃ、行ってくるぜ」
その足で市役所まで駆け込み、書かれた名前をそのまま全て出生届に書いて提出してしまいました。
――――時は流れ、早五年。
八五郎の息子はすくすくと育ち、昨今の子ども中では恰幅も良く腕っ節も強い。またその名前の通りポケモン好きになっており、近所にいる友達・レイモンドくんと遊びに行くと言っては、“公園で携帯型ゲーム機をやっている”という現代っ子の負の部分を受け継いだ子として芳しく成長していたのであった。
今日も今日とて、母親がF2層向けのテレビ番組を視ているのを横目に、友達と遊んでくる、と3DSを持ち元気に家を出て行ったのだが____、
「HEEEEYYYY。あアアァんまりだアアアア」
息子と遊んでいるはずのレイモンドが、豪快に泣き叫びながら八五郎の家に飛び込んできた。
「あら、レイモンドくん」
一頻り泣きわめいたレイモンドは、
「フーーー。スッとしたぜ」
涙と一緒に愛憎入り混じった心情も流したのか、スッキリとした面持ちでその場に立っていた。
「どうしたの? レイモンドくん」
「おばさん。
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
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ちゃんと一緒にポケモンの対戦やってたんだけど、ボクが勝負に勝ちそうになったら無理矢理通信ケーブルを引き抜くんだ。そうしたらボクの3DSがバグっちゃって動かなくなっちゃったんだよ」
レイモンドはそう言って3DSを高々と掲げる。
「あら、本当に? うちの
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
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ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
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ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
がごめんなさいね。あなたー、あなたー。
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
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ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
が、レイモンドくんのピコピコを壊しちゃったらしいわよ」
こういう時に女親というものは、とんとゲームに疎いもの。こうなったらアメリカのドリームチームを召集して訴訟だ、などと奮然としているレイモンドを宥めながら、奥にいる八五郎を呼び出します。
「なんだって?
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
がレイモンドくんのピコピコ壊しちゃっただと。おお、レイモンドくん、そいつはすまなかったな。後で
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
にもきつくお灸をすえとくからな。どれ、おじさんにピコピコ見してみな…………………………おいおい、レイモンドくん、嘘言っちゃいけねえや。画面に何も映っちゃいないじゃないかい」
八五郎がレイモンドから手渡されたゲーム機を見ると、うんともすんともどころか画面に何も映っていない様子。こりゃゲームが壊れたと言って電池代をかすめ取る新手の詐欺か、といぶかしんでいたところ、
「うわぁぁぁぁぁん。あまりに名前が長いから、ゲーム機の充電が切れちゃったんだーい」
――――さらに時が流れて、一年後の春。
教師生活三年目の田尻は、この春から初めてクラスの担任を受け持つこととなり、緊張と不安であまり睡眠も取れないまま始業式を迎えることとなっていた。
先輩教師からも、今の子どもはキレたら何するかわからない、やら、モンスターペアレンツがすぐに怒鳴り込んでくる、やら、三秒間なら体罰にならない『三秒ルール』がある、やら……あることないこと吹聴されたことがさらに不安を募らせ、田尻を泣きゲロ吐いちゃうほどの心持ちにさせられていた。
そして、不安を抱えたまま教室の中に入っていく田尻。すると____、
「せんせー、おはよーございます」
誰に言われるまでもなく口々に挨拶をしてくる子ども達。その子ども達の顔を見てみると、どの子も希望に満ちて活き活きとした表情をしており、それが田尻の不安でいっぱいだった心の靄を軽く吹き飛ばしてくれたのであった。
「みんな、おはよう。僕がこのクラスの担任になる田尻智です。これから一年間宜しくお願いします」
田尻の言葉に子ども達は耳を傾け、はーい、と元気よく返事が返ってくる。
――――このクラスならやっていける。
田尻は先ほどまでと打って変わって心が晴れやかになり、子ども達がまっすぐに成長できるよう粉骨砕身して挑むことを心に決意したのであった。
「では、出席をとります。名前を呼ばれたら大きな声で『はい!』と答えてください。」
「ワイワイガヤガヤ」
さあここからだ、と田尻が出席簿を開いて名前を読み上げる。
「…………浅田美羽(みう)さん」
「はい」
「(呼びづらいな……)……安藤優由(ゆ、ゆ?)さん」
「はい」
「(……ゆゆで良いのか……)上野……ポチ男……くん?」
「はーい」
「……プッ……クク……近藤……──麗音菜愛梨亜(……読めん)……近藤さん!」
「はい」
「近藤さんのお名前はなんて読むのかな……?」
「れおなあめりあ」
「そうですか。ありがとうございます…………(読めねえよ)……佐藤……光中(こうちゅう)……くん?」
「ぴかちゅう」
「失礼しました……(十万ボルト……)佐々木メロディ愛(めろでぃあ)さん(今度こそ正しいだろ!)」
「メロディあい!」
「ごめんなさい……メロディあいね…………中野世歩玲(せふれ?)さん」
「はい」
「(セックスフレンド……略してセフレ……)……西田…………王子様……君」
「はーいはーい」
「(あだ名はプリンス)……浜田光宙(こうう?)くん」
「せんせー。俺、ピカチュウ!」
「ごめんごめん。ピカチュウね(二匹目ゲットだぜ)…………松田太郎くん(やっとマトモなのが来た)」
「?」
「あれ?松田君?松田太郎君?」
「ジョンです」
「ジョン!……(いいえ、それはトムです)…………山下愛子さ…………愛子エンジェルさん……」
「はーい」
「和田ピカチ……(三匹目! ここはピカチュウの群生地だな)ピカチュウく……
……ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!……くん?」
「はーい」
「(やっと終わった)……それでは、みなさん、授業をはじめましょう」
現代っ子の独特な名前を、ねーよorz、と悪戦苦闘しながら読み上げ、やっと授業が始められる、と田尻が顔を上げた瞬間____、
キーンコーンカーンコーン~♪
「せんせー。もう終わりの時間でーす」
____お後がよろしいようで。
え~、どんな人にでも『名前』というものはついておりますね。人以外にも動植物・物品・土地・病原体・現象などなど、名前というものはそのものの存在証明であり、とても大切なものでございます。
しかし、昨今では『個性』というものを勘違いしたのか、自分の子どもに暴走族の屋号みたいな名前をつける輩が増えており、“騎士(ナイト)”とか“金星(マアズ)”とか“ペ若人(ペヤング)”なんてビックリな当て字の名前も珍しくはありません。「ペット感覚で名前をつける親」なんて度々ニュースで比喩されることもあり、また古風につけたらつけたで逆に“ぶってる”と言われたりして、現代日本では名づけという行為は相当ハードルの高いものと言えるのかもしれません。
ところかわって、昨今ではペットを家族同然として扱う人も増えておりますね。人間以上に良いものを食べさせたり毛皮があるのに服を着せたり、飼い主(お父さん・お母さんなんて呼称するらしいですが)にしてみれば、自分の息子・娘と同じと言っても差し支えないのかもしれません。
一時世間を騒がせたアザラシなんかには、一般的なものとは違いますが『特別住民票』なんてものを区があてがったりして広くアピールしており、もはや動物は人間と同等の存在と言っても過言ではないのでしょう。
さて、ここまでペットの価値観が高まった世の中になりますと、先ほどとは逆に、ペットに人間的な名前をつける人も出てくるのかもしれませんね。
“セバスチャン(セバスチャン)”とか“田中(タナカ)”とか“ペス男(ペスオ)”とか。もしくは、――――“太郎(タロウ)”とか“次郎(ジロウ)”とか……
………………っ! な、南極物語____、
☆★☆★☆
――――そうは言いましても、
先ほどから現代人の名前のつけ方をディスってばかりでございましたが、昔の人が“太郎”や“次郎”、“花子”や“せへ”などのド鉄板な名前だけを子どもにつけていたか、と言いますと存外そうでもございません。
男の子には“悪太郎(あくたろう)”や“尿太郎(いばりたろう)”、女の子には“お捨(おすて)”なんて現代では到底受け入れられないものも多数ございました。また、“牛若丸”などに使われております『丸』の字は、つまるところ“おまる”のことであるという説もございます。
しかし、これは自分の子どもが悪いものに取り憑かれないようあえて汚いものを名前につけ、ウチの子は汚いから触るんじゃない、と魔を欺き大人になるまで健やかに育てたいという親の情愛に他ならぬもの。まだ現代ほど科学も発展しておらず、また現代よりすべからく信仰心の強い時代の産物でございました。
そして、子どもが『元服』(現代で言う『成人』)を迎えますと、改めて立派な名前つけるものとなっておりました。
さて、以上を鑑みておりますと世代、世情、世相関係なく、いつの世も親が子どもに託す願いは大きいもの。それは決して自画自賛やエゴからではなくただ純粋に子どもの幸せを願ってのものでありまして、子どもの健康と長命を千歳飴に願をかけたという『かくまでに親は思うぞ千歳飴』なんて昔の句もございます。
さりとて、煌びやかで尊大で大仰な名前をつけられた子どもほど、名前負けをして鬱屈してしまうことも無きにしも非ず。
『個性』や『存在感』は名前や容姿、装飾品ではなく『心の内』から滲み出る、そんな子どもに育ってほしいものですね。
☆★☆★☆
「こんちは」
「おお。誰かと思えば、八っつぁんじゃないかい」
大工の八五郎が訪れたのは、町の賢人・ご意見番で知られるご隠居の猫屋敷。
「お前さん、今日はどうしたんだい?」
「いや、ご隠居。この度はおめでとうございます」
「なんじゃ? わしになんかめでたいことでもあったのかのう?」
「ええ。大変めでたいことがありまして……」
「ほほう。いったい何があったんじゃ」
「はい。実はですね、長家でお子さんがお生まれになりまして」
「(ドキッ) あ、あら、そうかい? そりゃ気が利かなかったね。それでどちらでお子さんがお生まれなさったんだい?」
八五郎の発したふいの一言に、ご隠居の顔は冷や汗でまみれ、心臓は道路工事で地盤を固めるやつみたいな感じで早鐘を打ち出す。しかし____、
「ええ。あっしのところでね、お生まれなさったんです」
八五郎の頓珍漢な言葉に、新喜劇並みにずっこけるご隠居。
「(ふう。セフセフ) なんじゃ! 自分のところで“お生まれなさった”て言うのはおかしいじゃろ」
そう言いつつご隠居は自分の心当たりとは違うことに人心地つき、ホッ、とした途端に体中の毛穴という毛穴から汗が噴き出し着衣が汁にまみれる。
「まあいいんじゃが。それで、生まれたのは男の子かい? 女の子かい」
「うちに生まれたのはね……男のBoyなんですよ」
「なんだよ。男のBoyてのは」
「でね、うちのかみさんが言うには、お前さん、今日は“しょなのか”だからなんとかしておくれよ、てことらしいんですよ」
「……ああ、そうかい。そりゃお気の毒だったね。生まれるとすぐに亡くなったのかい」
ご隠居が八五郎の心中を察し、胸の前で十字を切っていると、
「冗談言っちゃいけない、全然ピンピンですよ。日がな一日マカレナ踊ってますし」
「お前さん今、『初七日』だから、て」
「ええ。生まれて七日目ですから!」
八五郎はセクシーに腰を振りながら、子どもの健在ぶりをアピールしている。
「生まれて七日目を初七日て言う奴があるかい。人間生まれて六日目を『六日垂』、七日目を『お七夜』、世の不条理と大人の汚さ、そして自分の無力さを痛感した十五年目の叫びだしたい夜を『十五の夜』と言うんだ」
「なるほど。盗んだバイクにトランスフォームしたくなりますね。そうそう、その『お七夜』」
「ま、世間ではだいたいお七夜に名前をつける習わしになっておる」
「ご隠居、そこなんです!!」
ご隠居の言葉を受け、八五郎は身を前に出した。
「うちのかみさんが、お前さん今日はお七夜だから名前をつけておくれよ、そう言うんですよ。あっしは強い子に育ってほしいから『武井壮』なんてのはどうだい? て訊いたら、うちには“和田”っていう立派な苗字があるんだよ。それじゃあ“和田武井壮”になっちゃうじゃないか。そんな名前じゃ百獣の王目指しちゃうよ、て文句ばっかりで。そんなときに、横丁のご隠居はハゲてるわりに難しい本とか読んでるから、上手くおだてりゃ良い名前でも浮かぶんじゃないか、なんてことになりまして。なんか良い名前考えてくれます?」
「………………お前さん、言いにくいことをハッキリ言うね」
「え? なんか言いましたか?」
「なんか言いましたか、じゃないよ。“横丁の”からなんて言った?」
「ええ。横丁のご隠居は小難しい本を読んで知識を頭に詰め込んで、代わりに頭から髪の毛を追い出してる。もう奴の毛根は八割方死滅してるよ……」
話しながら何かに気付いた八五郎は、
「そう言やかみさんも言ってたよ。――この話は当人の前で言っちゃいけないよ、て」
てへぺろ、と舌を出し不二家った。
「当たり前だよ。しかし、そうかい。あたしが名づけ親にしてもらえるのかい。そいつはありがたいね」
「そうでしょ。一つ良い塩梅にお願いしますよ」
「それでお前さんはどんな名前をつけたいんだい?」
「そうですね……なるたけ長生きをする名前をつけてもらいたいんですがどうでしょう?」
八五郎は、庭に一本そびえ立つ天まで届かんばかりに伸びた長い木を見上げながら、そう一人ごちた。
「そりゃまあ、親はそう思うもんだよ。長生きをして願う、そりゃ確かにそうだ。願わない親なんてないから。そうねえ、長生きって言うと、頭に浮かぶのは『鶴は千年』なんて言うが、名前に『鶴』の字を使うのはどうだい」
「なるほどね。鶴なんてのは縁起が良いですね」
「どうだい一つ、“鶴男”とか“鶴吉”、“鶴蔵”、“鶴太郎”てのは?」
「鶴太郎……なんか“プッツン”しながら“パンツ一丁でカメラ”を持ち、“熱々のおでん”を食べて“画伯”になりそうな名前だね。それにツルツルツルツル、ご隠居みたいにハゲ散らかしそうだよ」
「あ! まだ言うか。この野郎」
「いやいや、でも鶴は千年経ったら死んじゃうんでしょ?」
「まあなあ。千年経ちゃ、即Deadだけれども……」
「それで参っちゃ面白くないですよ。もっと長生きする名前はないですかね?」
「お前さん、欲と業が深いね。じゃ『亀は万年』だな。“亀吉”、“亀太郎”、“亀蔵”とか。あと“亀治郎”なんてのもあるぞ」
「亀治郎、ねえ……今ちょうど歌舞伎界で枠が空いてる名前だね。そりゃ確かに、海老ってつけるよりかはWEST麻布で灰皿にテキーラ注がれて飲まされそうな名前じゃないけども、う~ん、でもちょっと違うね。なんて言うか、千年万年経つと死んじゃうなんて穏やかじゃないでしょ。もっとさ、もう死なないような常しえに生きるような……」
「なにが常しえだよ。床上手のお前さんからそんな言葉聞くなんて、ちゃんちゃらおかしいよ。だがそうだねえ、まあそう言っても始まらないから、昔の書物など紐解くと色々めでたい文句があるから、その中から一つ二つよってみようか」
「おっ! 願いましょう。それで一ついきましょう。どんな具合ですか?」
「そうだねえ。あたしの好きな文句で『寿限無』なんてのがあるけど、どうだい?」
ご隠居の突飛な発案に、暫し口を開いたけたまま、ポカーン、とする八五郎。
「へー……じゅ、じゅげ、じゅげ……ねー。そりゃ、なんですか?」
「“寿”“限り”“無し”と書いて『寿限無』だ。どうだい? 寿=年齢に限りが無いてんだ。あたしゃめでたいと思うね」
「ほお、なるほどねえ。まだありますか?」
「うーん。それじゃあ『五劫の擦り切れ』なんてのはどうだい?」
「なんですかそりゃ! ふざけちゃいけませんよ、“ごこうのすりきれ”なんて。きんぴらごぼうを作る下準備みたいなもの」
「そりゃ“ごぼうのささがき”だろ。これはなあ、天人が三千年に一度天下ってくるんだな。そして地上の岩を己の着ている軽い衣でそっと撫でる。で、上がってから三千年経つとまた下りてきてこの岩を撫でる。ね? 三千年毎に下りてき上がりでやっているうちにすっかり岩が擦り切れて無くなるのが一劫っていうんだ」
「ふーん。なるほど」
「それが“五劫の擦り切れ”てんだから、何億年何兆年何無量大数年て先の話だろ」
「ほぉ、こりゃ良いや。あっしも擦り切ってもらいたいね。まだありますか?」
「まあ、『海砂利水魚水行末雲来末風来末』なんてのは?」
「へー。すいぎょうばつうんらいばつふうらいばつ、バツバツ並んでますね。まるで昔住んでた懲罰房思い出しますよ」
「これはね、海砂利水魚、海の砂利というものは取っても取っても取り尽くせるもんじゃない。魚とて同じだ、“水の魚、取っても取っても取り尽くせない”てところから、これもめでたいだろ。で、後にきて雲の行く末風の行く末、これも何処から来て何処へ行くやら果てしもなく広いもんだ、と大層めでたいもんだ」
「はああ、なるほどね。か、かいじゃり……かいじゃり……くりぃむしちゅー……かいじゃりすいぎょばつばつばつ! と、面白くなってきましたね。まだありますか?」
「ふむ。“衣食住”と言うから『食う寝るところに住むところ』ぐらいのことも考えておいた方が良いだろう」
「………………はあ。なるほどね。まだありますか?」
「あるけどさ。いいのかい? どんどん続けて?」
「ええ。続けて続けて」
「『やぶら小路の藪柑子』て言うがね」
「はああ? KOJI1200なら知ってますがね」
「『今田耕司』と一緒にするやつはないだろ。こりゃ“柑子”という木だな。草花、植物だがね、大変めでたいんだよ。春、若葉を生じ花を咲かせ、やがてこれが秋に実がなる。冬になってもその緑が、お前さん風に言うと常しえに変わらないてな。常に緑で大層長寿な木だ」
「なるほど。やぶらこうじのやぶこうじ……その木はどこにあるんですか?」
「どこにあるとか、そういうことじゃなくて」
「でも、あったら引っこ抜いてウチに持って帰ろうと思いましてね」
「……そんなことしたら怒られるよ」
「へへ。そしたら素直に謝りゃ、後に大統領になれるかもしれませんよ」
「その前に銃殺刑だよ」
「で、まだ後なんかないですかね?」
「お後お後、てうるさいね。じゃどうだい、『パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコナーのポンポコピー』てのは?」
「こりゃ、恐ろしく並べましたねー」
「これはまあ、昔パイポという国にシューリンガンとグーリンダイという王様とお后様がいてね、そこに産まれたのがポンポコナーとポンポコピーという子どもだ。大層長生きをして国が盛って、何万年の間国が繁栄したって話があるね」
「ほへえ。外国の方にも色々ありますね。でも外国じゃなくて、日本に何かないですかい? 和製ビヨンセみたいなやつ」
「日本て言うとね。あたしに名前をつけなきゃいけない子どもでも孫でもいたら『長久命の長助』、“長く久しく命を助ける”なんてのは良い名前だと思うけどどうだい?」
「ありがたいね。それくらいで結構ですから、ちょいと紙に書いて下さい」
「はあ。書くのは構わないけど」
「あ! 本字(漢字)で書かれると駄目なんだあたしは。読めないからね。一番取りつくやつ“かな”てやつね。本字ってやつはどうもね。かんじ(感じ/漢字)が悪くてかな(適/かな)わない、てのはドヤッ」
「つまらねえ洒落を言うね、お前さんは」
ご隠居は八五郎のドヤ顔を流しながら、和紙にさらさらと文字をしたためていく。
「ほら。書いたよ」
「へへ。ありがとうございやす」
八五郎はご隠居からそれを受け取ると、
「えー……『じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょのすいぎょうばつふうらいばつうんらいばつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのやぶこうじ ぱいぽぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ』、ね。はいはい」
一頻り紙に書かれた名前を読み上げ、
「よっ!」
ビリランッ!!
おもむろに紙を引き裂いた。
「お、お前さん。なにをするんじゃ」
「なにをするんじゃ、じゃねえよ、このアデランス野郎。なんだこりゃ! 名前つけろってのに、衣食住辺りから名前になってねえじゃねえか」
「じゃ、じゃが、お前さんが縁起の良いものと……」
「じゃがもポテコもねえよ。そんな変な名前つけて周りから浮いたらどうするんだ。昔ニュースで“夢”て書いて『ドリーム』て読ませる子が出てたぞ! そりゃ小さい時分は良いかもしれねえが、順当に年老いたら末は“ドリームおじいちゃん”だぞ! ちょっとした町のトピックス・名物おじいちゃんみたいじゃねえかっ!!!!!」
「ふ、ふぇぇ……」
八五郎は、まくし立てられ半涙目となっているご隠居を尻目に、ビリビリに破った紙と罵詈雑言と吐瀉物を撒き散らしながら、ノーモーナヤミムヨー、と最後に一言残してその場を飛び出していった。
――――ご隠居の家を後にした八五郎は、
「ったく、あのプロピア野郎の所為ですっかり時間を無駄にしちまったぜ。しかし、どうしたもんかなー、名前は。やっぱ『武井壮』が妥当か?」
プリプリ怒ったまま家路につき、やはり初志貫徹! と息子の名前を決めかけていたその時、
わーわー、キャーキャー、ピ・ピカチュウ
ちょうど横を通りかかったおもちゃ屋から、たくさんの歓声と拍手喝采が響き渡っていた。
「なんだあ? ここで祭りでもやってんのか?」
八五郎がその声に誘われて店の中に入ってみると、
『おめでとうございます。大会を優勝して見事“ポケモンマスター”の称号を手に入れたのは、今国智章くん四十三才でーす』
店の天井に吊されたスピーカーから爆音のアナウンスが流れるや否や、割れんばかりの大きな拍手と喝采が店内に鳴り響く。八五郎がその喧騒に誘われて店の奥へと足を運ぶと、大型モニターの前で全身タイツの男性が誇らしげにゲームボーイを掲げて立っていた。
「おい、ちょっと。お前さん、今一身に拍手喝采を浴びてるけど、なにかあったのかい?」
「おじさん、なんだい? 僕はポケモンマスターさ」
「ポケ……ポケ……アイマス……ポケモンマスターっての? そいつは偉いのかい?」
「僕はこの中で一番ポケモンが強いんだ! もちろん世界で一番偉いよ」
「そうかそうか」
男性の力強い一言に、これはしたり、と八五郎が男性に話し出す。
「そいじゃ、ちょっとお前さんに頼みがあるんだけどね。七日前におじさん家に子どもが生まれたんだ。元気な男の子の赤ちゃんだよ。その子の名前を是非つけてほしい」
「な、名前!!」
「そうなんだよ。世界一のお前さんにしかできないんだ。一丁、強そうな名前をつけておくれ」
「わかったよ。おっさん、まかしとけ!」
八五郎に請われて、男性は早速名前を考えだす。
「うーん。『ポケモン赤』で強いって言えば、『ノーマル系』だろ。ノーマル系といえば『ケンタロス』・『ラッキー』・『ガルーダ』だけど……でも、他のポケモンにも個性があるし。一般的にパラメータの高いポケモンだけ選べば良いのか? それじゃあ大会対策だけで面白さの欠片もないし……」
「………………?」
「……大会で勝つために強キャラだけの布陣じゃ、その場では勝てたって避難囂々は目に見えてるし、みんなそんなキャラだけ使うようになったら6体もポケモンがいたら充分だ……」
「お、おい!」
名前を考えているはずの男性は、ブツブツと益体のないことを一人ごちているばかりで、一つも候補が挙がらない。八五郎はだんだんと男性の将来が心配になり声をかけてみるが、男性はそれを無視して蚊の入るような声でブツブツと言うばかり。
「……どんな人にも趣味嗜好があるから151体もポケモンがいるわけだし、成長前のカワイイ風体も成長後のゲロッパみたいな成りも、全てのキャラに魅力があって各々が選択出来るからポケモンは素晴らしいゲームなんだ。……やはり『愛』だ! 『愛こそ全て』なんだ!」
「おいっ! 目覚めろ!」
八五郎はとうとう我慢が出来なくなり、渾身の力で男性の頬を張った。
バシッ!!
「はっ! おじさん? どうしたの?」
男性はその一撃で目を覚まし、トリップから覚醒する。
「どうしたの、じゃねえや。お前さんが名前を考えるのにブツブツ言いながら軽くトランスっちゃってたんで心配になって一叩きしただけだよ」
「なまえ?……名前……そうだっ! おじさん。ボク、良いことを思いついたよ!」
「おお、そうかそうか。考えてくれたかそれでどんな名前だい?」
「へへへ。それじゃあ、いくよ」
男性は照れ笑いしながら、一呼吸おき____、
「ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!」
ポケモンの名前をリズムにのって口にした。
「ポケモン、ゲットだぜ!!」
「おお! こりゃみんな良い名前だ」
「うん。おじさん、どのポケモンも個性があってみんな素晴らしいんだ」
「そうか。お前さんのポケモンに対する愛がひしひしと感じられるよ。じゃあ今のを全部紙に書いてくれるかい? あ! でも本字はいけねえよ。おじさん読めないからな。かんじがわるくてかなわない、てな」
「HAHAHAッ! おじさん、サイコーだよ! 大丈夫さ、ポケモンの名前はみんなカタカナ五文字以内だから」
「ほお、そいつはありがてえ」
男性がポケモンの名前を和紙に書き込み、八五郎がそれを受け取ると、
「すまねえな。そいじゃ、行ってくるぜ」
その足で市役所まで駆け込み、書かれた名前をそのまま全て出生届に書いて提出してしまいました。
――――時は流れ、早五年。
八五郎の息子はすくすくと育ち、昨今の子ども中では恰幅も良く腕っ節も強い。またその名前の通りポケモン好きになっており、近所にいる友達・レイモンドくんと遊びに行くと言っては、“公園で携帯型ゲーム機をやっている”という現代っ子の負の部分を受け継いだ子として芳しく成長していたのであった。
今日も今日とて、母親がF2層向けのテレビ番組を視ているのを横目に、友達と遊んでくる、と3DSを持ち元気に家を出て行ったのだが____、
「HEEEEYYYY。あアアァんまりだアアアア」
息子と遊んでいるはずのレイモンドが、豪快に泣き叫びながら八五郎の家に飛び込んできた。
「あら、レイモンドくん」
一頻り泣きわめいたレイモンドは、
「フーーー。スッとしたぜ」
涙と一緒に愛憎入り混じった心情も流したのか、スッキリとした面持ちでその場に立っていた。
「どうしたの? レイモンドくん」
「おばさん。
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
ちゃんと一緒にポケモンの対戦やってたんだけど、ボクが勝負に勝ちそうになったら無理矢理通信ケーブルを引き抜くんだ。そうしたらボクの3DSがバグっちゃって動かなくなっちゃったんだよ」
レイモンドはそう言って3DSを高々と掲げる。
「あら、本当に? うちの
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
がごめんなさいね。あなたー、あなたー。
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
が、レイモンドくんのピコピコを壊しちゃったらしいわよ」
こういう時に女親というものは、とんとゲームに疎いもの。こうなったらアメリカのドリームチームを召集して訴訟だ、などと奮然としているレイモンドを宥めながら、奥にいる八五郎を呼び出します。
「なんだって?
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
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ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
がレイモンドくんのピコピコ壊しちゃっただと。おお、レイモンドくん、そいつはすまなかったな。後で
ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
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ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!
にもきつくお灸をすえとくからな。どれ、おじさんにピコピコ見してみな…………………………おいおい、レイモンドくん、嘘言っちゃいけねえや。画面に何も映っちゃいないじゃないかい」
八五郎がレイモンドから手渡されたゲーム機を見ると、うんともすんともどころか画面に何も映っていない様子。こりゃゲームが壊れたと言って電池代をかすめ取る新手の詐欺か、といぶかしんでいたところ、
「うわぁぁぁぁぁん。あまりに名前が長いから、ゲーム機の充電が切れちゃったんだーい」
――――さらに時が流れて、一年後の春。
教師生活三年目の田尻は、この春から初めてクラスの担任を受け持つこととなり、緊張と不安であまり睡眠も取れないまま始業式を迎えることとなっていた。
先輩教師からも、今の子どもはキレたら何するかわからない、やら、モンスターペアレンツがすぐに怒鳴り込んでくる、やら、三秒間なら体罰にならない『三秒ルール』がある、やら……あることないこと吹聴されたことがさらに不安を募らせ、田尻を泣きゲロ吐いちゃうほどの心持ちにさせられていた。
そして、不安を抱えたまま教室の中に入っていく田尻。すると____、
「せんせー、おはよーございます」
誰に言われるまでもなく口々に挨拶をしてくる子ども達。その子ども達の顔を見てみると、どの子も希望に満ちて活き活きとした表情をしており、それが田尻の不安でいっぱいだった心の靄を軽く吹き飛ばしてくれたのであった。
「みんな、おはよう。僕がこのクラスの担任になる田尻智です。これから一年間宜しくお願いします」
田尻の言葉に子ども達は耳を傾け、はーい、と元気よく返事が返ってくる。
――――このクラスならやっていける。
田尻は先ほどまでと打って変わって心が晴れやかになり、子ども達がまっすぐに成長できるよう粉骨砕身して挑むことを心に決意したのであった。
「では、出席をとります。名前を呼ばれたら大きな声で『はい!』と答えてください。」
「ワイワイガヤガヤ」
さあここからだ、と田尻が出席簿を開いて名前を読み上げる。
「…………浅田美羽(みう)さん」
「はい」
「(呼びづらいな……)……安藤優由(ゆ、ゆ?)さん」
「はい」
「(……ゆゆで良いのか……)上野……ポチ男……くん?」
「はーい」
「……プッ……クク……近藤……──麗音菜愛梨亜(……読めん)……近藤さん!」
「はい」
「近藤さんのお名前はなんて読むのかな……?」
「れおなあめりあ」
「そうですか。ありがとうございます…………(読めねえよ)……佐藤……光中(こうちゅう)……くん?」
「ぴかちゅう」
「失礼しました……(十万ボルト……)佐々木メロディ愛(めろでぃあ)さん(今度こそ正しいだろ!)」
「メロディあい!」
「ごめんなさい……メロディあいね…………中野世歩玲(せふれ?)さん」
「はい」
「(セックスフレンド……略してセフレ……)……西田…………王子様……君」
「はーいはーい」
「(あだ名はプリンス)……浜田光宙(こうう?)くん」
「せんせー。俺、ピカチュウ!」
「ごめんごめん。ピカチュウね(二匹目ゲットだぜ)…………松田太郎くん(やっとマトモなのが来た)」
「?」
「あれ?松田君?松田太郎君?」
「ジョンです」
「ジョン!……(いいえ、それはトムです)…………山下愛子さ…………愛子エンジェルさん……」
「はーい」
「和田ピカチ……(三匹目! ここはピカチュウの群生地だな)ピカチュウく……
……ピ力チュウ/カイリュー/ヤドラン/ピジョンコダック/コラッタ/ズバット/ギャロップサンダース/メノクラゲパウワウ/カラカラ/タマタマ/ガラガラフシギダネ!
アーボ/イーブイ/ウツドン/エレブーカビゴン/カブ卜/サイドン/ジュゴンポリゴン/ディグダ/ドードリオ/ゲンガードガース/ルージュラ/ニャース/シャワーズクサイハナ!
コクーン/ゴースト/イワーク/ヒトカゲラッキー/ラッタ/オニドリル/コイル/レアコイルプクリン/ゼニガメ/ニョロゾ/トサキントファイヤー/ブースター/フーディン/ブーバーストライク!
キャタピー/ピクシー/シードラ/ライチュウヒトデマン/クラブ/ニドクイン/サンドパンアズマオウ/卜ランセルドードー/タッツー/ガーディ/マンキードククラゲ!
オニスズメ/サンド/パラセクトスリープ/ビードル/カイロス/ピジョットコ・イ・キ・ン・グ!
サイホーン/マタドガス/フシギソウ/カメックスシェルダー/サンダー/リザード/ナッシーべ・ト・べ・ト・ン!
ポッポ/ウツボット/プリン/ケーシィ/べ卜べターガルーラ/ギャラドス/ゴローニャ/ピッピイ・シ・ツ・ブ・テ!
ゴルダック/オムナイト/ゴルバット/アーボックニドラン(メス!)/ニドラン(オス!)ナ・ゾ・ノ・ク・サ!
ニョロボン/カモネギ/ラプラス/ラフレシア力ブトプス/ニドリーナ/バリヤード/マルマインフシギバナ/パラス/リザードンコンパン/ヤドン/メタモン/ゴースビリリダマ!
ユンゲラー/キングラー/サワムラー/エビワラーカイリキー/スリーパー/ゴーリキー/スターミーマダツボミ/プテラ/ニドリーノ/ぺルシアンハクリュー/ミュウツー/キュウコン/スピアーべロリンガ!
バタフリー/ダグ卜リオ/ニドキング/オムスターパルシェン/ニョロモ/ゴローン/ロコン/ケンタロスポニータ/モンジャラ/ミニリュウ/ワンリキーモルフォン/カメール/ウィンディ/フリーザーオ・コ・リ・ザ・ル!……くん?」
「はーい」
「(やっと終わった)……それでは、みなさん、授業をはじめましょう」
現代っ子の独特な名前を、ねーよorz、と悪戦苦闘しながら読み上げ、やっと授業が始められる、と田尻が顔を上げた瞬間____、
キーンコーンカーンコーン~♪
「せんせー。もう終わりの時間でーす」
____お後がよろしいようで。