わたしの父は、昔かたぎで頑固者

自分の言い分は、なかなか曲げない

よく言えば信念の通った人だが

この性格のせいで、これまでに何度もぶつかってきた


小さいころ

「食事中は正座しろ」と、叱られ(自分だってしないくせに!)


言葉遣いがちょっとでも悪いと

「何だ、その言い方は。お前の躾がなってない」と、母を怒鳴り


成人してからも

「女が夜10時に帰ってくるとは何を考えてるんだ!」

と、携帯を鳴らされたり、玄関前で待たれたり


足はくさいし

理屈っぽいし

お酒を飲むと絡むし

とにかく、父は、煙たい存在だった

その父も、もう61歳

最近じゃあ、白髪も増え、背中も小さくなり

酒を飲むと「お父さんが死んだら、後をよろしく」が口癖

私に対する厳しさは影を潜め

顔つきも性格も、だいぶ丸くなったような気がする

つい先日

「ワンワン」「いない、いない」「バーバー」

ぐらいしか言えない娘が

父に向かって「じーじ」と、叫んだ

「おや、じーじって言えるの?」と

孫の顔を覗き込む父の顔を見て

うれしいような、さびしいような、申し訳ないような

気がした

うれしさは、両親に孫の顔を見せてあげられたから

さびしさは、父が、すごく年を取ったように感じたから

申し訳なさは、父の厳しさに反発ばかりしてきた、自分の不甲斐なさ

親になって、親のありがたみを知る

本当に、そのとおり

父と母が、厳しく、愛情を込めて育ててくれた分

わたしも、厳しく、愛情を込めて娘を育てよう

それが、両親への、お礼だと、思うから