史上最長の奇襲
ウクライナ軍が、ドローン攻撃の歴史を塗り替える戦果を挙げた。その標的は、ウクライナ国境から1700km以上、一説には2000kmも離れたロシア北部の都市ウフタにある石油貯蔵施設である。
攻撃に使われたのは、長い主翼を持つグライダー型のU-2ドローン。このドローンは、ドローン対策用に張り巡らされたネットを巧みにすり抜け、燃料タンクに到達。タンクを損傷させ、原油を流出させることに成功した。特筆すべきは、この攻撃が昼間に行われたにもかかわらず、ロシア側が迎撃できなかった点だ。広大な国土を持つがゆえに、内陸部の防空網が極めて手薄になっている弱点を突かれた形となった。
新戦術「親子ドローン」
この前例のない長距離攻撃を可能にしたのが、「親子ドローン」とも呼べる新戦術である。航続距離の長い農業用プロペラ機(通称「ククルズニク」)がU-2ドローンを目標近くまで運び、そこから発進させるというものだ。これにより、ドローン単体では到達不可能な長距離攻撃が現実のものとなった。
経済的打撃と同時多発攻撃
ウクライナ軍の攻撃はウフタにとどまらない。ほぼ同時に、ロシアの主要な石油施設であるサラトフ製油所も攻撃を受け、原油の生成装置や貯蔵施設が破壊され、実質的な稼働停止に追い込まれた。一連の攻撃により、ロシア全体の製油能力の約14%が失われたと見られている。
ウクライナの防衛力と迎撃網
攻撃は最大の防御というが、ウクライナは防衛面でも大きな進展を見せている。国産の迎撃用ドローンの量産体制を確立し、ロシアから飛来する自爆ドローンを7割から8割という高い確率で撃ち落としているのだ。これにより、ロシアの飽和攻撃の効果を大幅に減殺している。
プーチン政権への圧力と戦争の新たな局面
この一連の軍事行動は、プーチン大統領とトランプ米大統領の会談が予定される直前に行われた。これは、ウクライナが軍事的な成功を背景に、交渉のテーブルで優位に立とうとする明確な意思表示と分析できる。ロシアが年間1500億ドルともいわれる巨額の戦費を投じながら、ウクライナの巧みな非対称戦術によってその効果を削がれている。戦争の様相は、新たな局面に入ったと言えるだろう。