『スパイダーマン：ノー・ウェイ・ホーム』の結末で世界から存在を忘れられたピーター・パーカーは、MCUにおいて新たなスタートを切る。『スパイダーマン：ブランド・ニュー・デイ』という第4作のタイトルは、この「ソフト・リブート」を象徴。2026年7月31日の米国公開が予定され、物語はアベンジャーズの一員としての過去から切り離され、ニューヨークの街角で戦う「ストリート・レベル」のヒーローという彼の原点に回帰する。
制作陣とアクションの刷新
監督には『シャン・チー／テン・リングスの伝説』で高い評価を得たデスティン・ダニエル・クレットンが就任。彼の作風は人間ドラマを深く掘り下げることに定評があり、孤独になったピーター・パーカーの内面を丁寧に描くことが期待される。
アクション面では、ジャッキー・チェンのスタントチームが参加することが大きな注目点だ。これにより、これまでのVFX主導の戦闘から、周囲の環境を活かした物理的で創造性に富んだ、より生々しいアクションへのシフトが見込まれる。『シャン・チー』で見せた革新的な戦闘スタイルが、本作でも展開されるだろう。
ニューヨークを脅かすヴィランたち
本作のヴィランは、物語の「ストリート・レベル」というテーマを反映している。
* スコーピオン: 『スパイダーマン：ホームカミング』で登場したマック・ガーガンが、満を持してメインヴィランとして再登場する可能性が高い。演じるマイケル・マンドもSNSで復帰を示唆し、さらに『ノー・ウェイ・ホーム』で残されたシンビオートと融合し、より強力な脅威となる可能性も考えられる。
* ミスター・ネガティブ: 映画のタイトルにもなった原作コミック「ブランニュー・デイ」期を象徴するヴィランであり、登場が有力視される。MCU内でも、メイおばさんが運営していた慈善団体「F.E.A.S.T.」を通じて、彼の登場を示唆する伏線がすでに張られている。
一方で、ファンが待望するキングピンの登場は、ソニーとマーベル間の複雑な権利問題により、現時点では実現が困難と見られている。
新たな共演者とMCUにおける役割
本作では、ジョン・バーンサルが演じるパニッシャーの登場がケヴィン・ファイギによって認められている。決して殺しをしないスパイダーマンと、犯罪者を処刑するパニッシャーとの倫理的な対立は、ピーター・パーカーのヒーローとしての成長を促す重要な要素となるだろう。
『ブランド・ニュー・デイ』は、単なる一作品に留まらず、MCUの「マルチバース・サーガ」において「ストリート・レベル」の物語を確立する重要な役割を担う。宇宙規模の脅威とは対照的に、地に足のついたヒーローの物語を展開することで、MCUの世界観に新たな深みを与える試金石となる。
結論：決定版スパイダーマンの誕生
『スパイダーマン：ブランド・ニュー・デイ』は、ピーター・パーカーから全てを奪い去り、彼をヒーローとしての核心に立ち返らせる物語である。人間ドラマに長けた監督の起用、革新的なアクションチーム、そしてテーマに沿ったヴィランの選定は、MCUがこれまでで最も原作コミックに忠実で、感情的に深みのあるスパイダーマン像の創造を目指していることの証明である。これは、新たな物語の始まりに他ならない。