太郎山別荘地を横断する御影用水(みかげようすい)沿いの道。
そこで出会った真っ黒なワンちゃん。
みたこともない犬種である。
私が黙ってすれ違えるわけがない。
「素敵なワンちゃんですね~
何という犬種ですか?」
突然話しかけて警戒されるかと思ったが、飼い主の男性は直ちに答えてくださった。
「ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグっていうんですよ」
聞いたことのない犬種だった。あとで調べると、ポルトガルの海岸で漁業を助ける犬だったそうだ。漁師のために網を持ってきたり、魚を捕ったりする使役犬として活躍 していたという。
「へえ~」
感心して真っ黒なワンちゃんに興味を増している私。
飼い主さんが言う。
「もうすぐブリーダーさんのところで同じ犬種の子が生まれるんで、その子がうち来ることになっているんです」
ますます引き込まれた私は、おもわず名刺を差し出していた。メールアドレスをお伝えしておきたかったのだ。
***
4か月くらいたったころだった。
「覚えていらっしゃるでしょうか?先日、太郎山の道でお会いした者です。
ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグの子犬が来ましたのでご連絡しました。」
きゃー 会いた~い!!!
***
先輩犬のフクと、生後2か月のマルが初めて私の山荘に挨拶にきてくれてから1年半余り。
フク23キロ。マル18キロ。今やマルも大人の犬になった。
私が現れると二匹の興奮は最高潮に達する。
ことにまだ子犬気分のマルは
容赦なく私にとびかかってくる。
遊んでくれという猛アタックだ。
散歩の途中で私の山荘の前を通ると、
二匹はさっさと門から敷地内へ入っていこうとするとのこと。
自分の知合いの家だとしっかり認知している模様。
飼い主のAさんご夫婦とは
フク・マルが縁で親しくお付き合いいただいている。
うちのデッキでときどき五人でお茶をする。
興奮もおさまった二匹はおとなしく床でねそべっている。
フクがときどき「わぉ~ん、わぉ~ん」としゃべりだす。
「このお家好きだよ~ん。このお家好きだよ~ん」
と言っているのだ。