不動産物件との出会いは突然の衝撃として訪れる。

 

そうは書いたが、出会いの時の直観をしっかりと心に取り込むにはもう一段階の手順が必要だ。

 

その物件と本当に縁があるのかを見極めるために、別の時間に別の方法でアプローチしてみるのだ。

 

千ヶ滝のその家を案内してもらった翌日、今度は一人で行ってみた。それまでも、軽井沢の物件探しでは、車で案内された日とは別の日に歩いてアクセスしてみるのが常だった。

 

物件概要では中軽井沢が最寄駅となっているが、私は軽井沢駅から二つ目の信濃追分駅から歩き始めた。ゆるい坂を辛抱強く上った先に<1000メートル林道>の浅間台交差点がある。そこを右折し、くねくね道をたどるとT字路にぶつかった。千ヶ滝別荘地の西の入り口だ。

 

地図を頼りに二つ目の角を左にまがって坂を下り坂を上る。電柱の影に隠れていた門柱が現れて昨日見た玄関アプローチに私は立っていた。

 

しんとした秋の空気の中、平屋のその家は次の持ち主が現れるのを待っているように思われた。

 

庭へまわって昨日立ったテラスに入ってもう一度木々たちを見る。

 

「私、前世はオランウータン(森の人間)だったのかもしれない」と常々言ってきた言葉が自分に返ってくる。

 

私の終活には樹木が必要だった。