松浦大悟参議院議員インタビュー【最終回】マスコミとオタクバッシングの地平 | マンガ論争勃発のサイト

松浦大悟参議院議員インタビュー【最終回】マスコミとオタクバッシングの地平

社の方針よりもクレームを気にするマスコミ

--ずっと放送畑にいらっしゃったということで、ご自身の経験とかマスコミ観というものをお伺いしたいのですが。


松浦さん:かなり会社側とは喧嘩をしたこともありました。アナウンサー時代には、会社の方針とは違うことを解説としてコメントしていたことが原因で、仕事をホサれたこともありましたね。


--そうした会社の方針と呼ばれるものも、社是があるわけでもなく、なんとなく決まっているのがメディアの問題点だと思うのですが?


松浦さん:社の主張というものはありません。視聴者からのクレームを受けるのが面倒、ただそれだけです。マスコミという看板を掲げている以上、それでは、ジャーナリストではない、サラリーマンなんだなと思っていましたが。


--例えば、大手マスコミの若い記者と、ある殺人事件におけるオタク趣味の影響について話をした時に「自分は、影響はないのはわかっているけどデスクがオタク嫌いで…」といいた言い方をされたことがあります。


松浦さん:かつての、大谷昭宏さんとかの世代の人たちはデスクと喧嘩しながら、書いていたのではないでしょうか。いまは、そういうマスコミ人はいなくなりましたね。


--大抵、「あと、20年待とうよ」という話になりますね。そこに期待するしかないんでしょうか?


松浦さん:「自分が、上になったら」というけど、実際上になったとき、あと何年現役なのよ?と思います。意識のあるマスコミ人には我慢して欲しくない。我慢すれば、自分が出世したときに、自分の力が発揮できるという言い方もありますが、それではもう手遅れになってしまうのではないでしょうか?


マスコミとオタクの不幸な関係は解消できるのか


--ネット上で「マスゴミ」という用語が使用されるように、マスコミとオタクの不幸な関係にあります。オタクをちゃかすような記事にオタクを自認する人々も敏感に反応しすぎなのではないでしょうか。そもそも、オタクバッシングは、あくまで個人の問題ではないかと思うのですが?


松浦さん:オタクバッシングの話は、フェミニズムと似ているような気がします。第二派フェミニズムと呼ばれる人々は、女性が抑圧を受けていることを主張していました。ところが、その後の第三派フェミニズムは、現代は、価値観が多様化し、女性の中にも抑圧があると感じている人もいればそうではない人もいる。女性であっても一枚岩ではない。この価値観の多様性を認めあえる社会こそ重要なのではないかと主張しました。で、まったく同じことが、『週刊金曜日』の「オカマ論争」です。

4939015408「オカマ」は差別か 『週刊金曜日』の「差別表現」事件―反差別論の再構築へ〈VOL.1〉 (反差別論の再構築へ (Vol.1))
伏見 憲明 野口 勝三 黒川 宣之
ポット出版 2002-03

by G-Tools

ここでは、東郷健さんの使った「オカマ」という言葉に対し、伊藤悟さんが「オカマは差別だ」と主張したのに対して、誇りを持って「オカマ」を自称する人たちから、一方的ではないかという批判が出ました。こうした事件は、すべてオタクバッシングの問題と同じように思えます。


--なるほど、20代前半以下のオタク層からはオタクゆえに差別されたという言説はあまり、聞こえてきません。


松浦さん:そうですね。若いオタク層は、すでに第三派フェミニズムと同じタームに入っていると思いますね。


--長い時間、ありがとうございました。


【了】


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(取材:永山薫/昼間たかし 構成:昼間たかし)