いのちあるときに
あたしは何を残せるんだろう。生きてたって心に刻んでもらえるんだろうか。ただ、こうやって言葉で残しても、インターネットという不安定で混沌した世界に飲まれて消えてしまう気がする。だから、あたしは手にとれるもので残したい。今日は久しぶりに走った。いまだにやってる就活のために。何度も練り直してギリギリになってしまったエントリーシート。新宿で新特急便で頼もうとしたのに、間に合わなかった。あわててその企業の宛先に近い小石川へ走った。そういう日々がいつまで続くんだろう。こうしてあたしはめげても心が折れても、前に向かって道を探してるのに。家の中はあいかわらずだ。お父さんは眉間にシワの寄せたまま、うつむいている。お母さんも同じく眉間にシワを寄せながら、父をにらみつけている。いつ罵倒してやろうかと、いまかいまかと狙っているように。大人ってなんだ?子供ってなんだ?親ってなんだ?出て行こう。必死に働こう。だから頑張ろう。人は頑張らなきゃ生きていけない。「頑張らなくてもいいよ」そういう気休めは今は必要ない。血を吐いたって、死んだっていいや。死ぬ気で頑張ればいつか扉は開く。あたし、心のどこかで「あたしはきっと別の世界にいるんだ」と思ってた。ドラマのワンシーンのような世界に迷い込んでるだけだって。きっとあたしが二人の間にいれば、ドラマのように二人が分かち合えてハッピーエンドを迎えられると思ってた。でもそんなのやっぱドラマの中の虚構の世界。現実の世界は違うんだ。二人にはあたしが見えていない。だったらあたしが出てけばいい。そんな世界から飛び出せばいい。いのちあるときに、あたしは何回泣くんだろうか。いのちあるときに、あたしは何回笑うんだろうか。いのちあるときに、あたしは何回人を憎むんだろうか。いのちあるときに、あたしは何回人を愛するんだろうか。いのちあるときに、あたしは人を救えるんだろうか。いのちあるときに、あたしは生きてた証を残せるんだろうか。ただひたすら今は真っ暗のトンネルを前へ歩くしかない。ただそれだけ。