アンドラーシュ・シフさんによるベートーベンのピアノ・ソナタ「第30番 ホ長調 作品109」の講義を訳してお届けしています。
講義の合間に演奏が入るので、実際の講義を聞きながら訳を読んでいく方法をお勧めします。
講義を聞くには、こちらのウェブサイトに行き…
Beethoven Lecture Recital Part 8 を探して…
1. Piano sonata in E major Op.109 をクリックします。
あるいは、YouTubeでも聞くことができます。
今日は、第2楽章のお話(22:52〜26:32)を訳します。
(演奏22:52)
(第1楽章から)休みなく、attaccaで切れ目なく、とてつもなくドラマティックな楽章が始まります。
調はイ短調で、(第1楽章と)同主調です。
テンポはPrestissimoで極めて早く、拍子は8分の6なので、これを聞かなければいけません。
(演奏23:17)これがテンポになります。
(2つの楽章の)コントラストがこれほど大きい例は他にあるでしょうか?
ベートーベンの時代の聴衆はこのコントラストにとても驚かされたに違いありません。
(第1楽章の)平和に満ちたホ長調から…(演奏23:41)
ゲーテの『ファウスト』の「ヴァルプルギスの夜」や、『神曲』の「地獄編」のように(変化します。)
パッサカリアのようなバスの動きを常に聞かなければなりません。(演奏24:19)
これがメインのモチーフになります。
これがどのように発展するのか後に見ることになります。
このPrestissimo の中間楽章はソナタ形式で書かれています。
最初の二つの楽章が両方ともソナタ形式で、両方とも短い、というのは異例のことです。
後期のソナタ群での割合(バランス)は、その前のソナタに比べて大分違ってきます。
「ヴァルトシュタイン・ソナタ」や「熱情」は第1楽章が長大で、最重要楽章でしたが、後期ソナタは違います。
最終楽章が次第に重要性を増してきます。
ベートーベンの最大の貢献の一つは、(ソナタの)最後まで非常に高い緊張感を持続し、最終楽章の重要性を上げた事だと思います。
彼の後の作曲家で彼のようにできた人はいないと思います。
シューベルトでさえ…
その他の誰も…
すみません、でも「ブラームスは素晴らしい!けど、最終楽章が残念」と何回言ったでしょうか?
ベートーベンに対してその様に言うことはないし、彼の先輩達であるモーツァルトやハイドンにも最終楽章が弱いという様な傾向はありません。
しかし、なぜか19世紀にはその問題がありました。
ベートーベンのせいかもしれませんね。
彼があまりにも完成度の高い例を残してしまったので、それを継承するのは難しかったのでしょう。
ではPrestissimo に戻ります。
次回は第2楽章の続きをお届けします。