スチュワート・ゴードン先生による【ベートーベン・ピアノ・ソナタの読み方】のレクチャー、今日は以下の動画の1時間08分57秒から1時間12分24秒を訳します。
直訳の場合もあり、要約になる場合もあります。
譜例の演奏を聴けるタイミングを記しています。聴きながら説明を読むと、より理解して頂けると思います。
前回に引き続き《ペダルの読み方》です。
「テンペスト」第17番、作品31の2、第1楽章
143〜148小節(レチタティーヴォ)の長いペダル
(演奏@1:09:16)
多くの人達が、何世代かに渡る「言い伝え」に影響されて、この長いペダルを、途中で何回か踏み替える。
しかし、ベートーベンは、「アーチ型の天井の部屋の中で響いているような音色にするべき」と説明している。
そして、ワルトシュタインの最終楽章の非常に長いペダルを、無視することはできない。
「ワルトシュタイン」第21番、作品53、第3楽章
(演奏@1:10:17)
ルドルフ・ゼルキンが、ニューヨークのカーネギー・ホールで演奏した時、この指示通りのペダルを使ったところ、批評家達に「なぜ今までこのペダルに気づかなかったのか」と大絶賛された、という記事を読んだ事がある。
この長いペダリングは、長い間無視されていたのだ。
もちろん実際には、この箇所のペダルはとても気を付けて使わなければならない。
使用するピアノにも注意が必要で、印象派的な音を生み出せなければならない。
多くの人達は主和音と属和音を混ぜるのが好きではないが、ベートーベンはその2種類を混ぜることに抵抗はなく、たくさんの箇所に例を見る事ができる。
例えば、「ピアノ・コンチェルト2番」の2楽章の最後。
「エンペラー・コンチェルト」の第3楽章の展開部。
ベートーベンの長いペダルの目的は、それによって「独特の音色を作る」事だった。
ワルトシュタインのペダルの問題ですが、私は直接ゴードン先生に、「先生ならどうされますか?」と質問した事があります。
先生のお答えは「私なら、混ざり過ぎに聞こえてきたところで、少し軽くペダルを踏み直すようにします。現代のピアノは当時のピアノに比べてペダルを踏むと響き過ぎてしまいます。だから、そのような調節は必要でしょう。」でした。